清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

今年のヘルシー志向。キーワードは「エビデンス重視」

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2019年04月01日

今年のヘルシー志向。キーワードは「エビデンス重視」

 紅茶キノコ、尿療法、にがり、酢大豆など、これまでさまざまな食品や食事法が、確たる証拠もなく健康にいいとしてブームになってきましたが、最近は健康にいいと言われるものに対して、それが ”科学的に証明されているか” ”信頼に足る研究が行われたか” など、「エビデンス(証拠)」を重視する傾向がみられるようになっています。

健康訴求食品に求められるエビデンス

 食の世界では、注目の健康成分を訴求することは販促に繋がります。が、大半の場合、生活者の熱はやがて冷め、また新たな注目の成分へと関心が移っていきます。でも、生活者の関心が持続し、定着するものもあります。例えば、カカオポリフェノールが豊富に含まれる高カカオチョコレートや、白米よりも栄養価が高い、スーパー大麦や金芽米、DHA・EPAが多く含まれるサバ缶などがあります。これらには共通点があります。それは、注目されている成分が持つ健康効果のエビデンスが確立していることです。エビデンスがないものは、一時的に脚光を浴びても、やがて信憑性に疑問符が付き、生活者の関心は薄れていきます。

サバ缶・白米・スーパー大麦

高カカオチョコレートは低GI食品

 高カカオチョコレートと言えば、今年1月、明治が、高カカオチョコレートが低GI食品であるとの研究結果を発表しました。明治の「チョコレート効果カカオ72%」のGI値は29、「チョコレート効果カカオ86%」のGI値は18で、GI値55以下の ”低GI食品” でした。GI値とは、血糖値の上昇率を表す指標で、ぶどう糖を摂った後の血糖値上昇率を100として示されます。高カカオチョコレートには、脂質や食物繊維が多く含まれるため、胃の運動が緩やかになってゆっくり消化吸収されることに加え、糖の代謝に必要なインスリンが膵臓から分泌されるためGI値が低いと考えられます。インターネット上ではチョコレートのGI値を91とする情報が多く、ある論文では40と記載されるなど、情報が混在していることから今回の試験を実施したそうです。ネット上には、エビデンスのない健康情報が氾濫しているという事例でもあると思います。

高カカオチョコレート

日本人に適する食事は「地中海食」

 生活者が ”エビデンス” を重視するようになってきたきっかけは、「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」や「医者が教える食事術」「データ栄養学のすすめ」といった、医師が著した科学的根拠に基づく食事術本の登場です。
 医師たちは、 ”現時点で最も科学的に正しいと考えられる食事を選ぶこと” が大切だと主張しています。
 例えば、日本人にとって健康にいい食事として、地中海食を推奨しています。地中海食に多用されるオリーブオイル、魚、ナッツは、日本人の死因の上位である脳卒中やがんのリスクを下げる効果があることが研究で証明されているからです。
 その他、油では太らない、シニア世代がプロテイン剤を飲むと腎臓に負担をかけるリスクが高い、カロリーゼロの人工甘味料はかえって糖尿病や肥満のリスクを上げるなど、エビデンスに基づき、これまでの常識を覆すような指摘をしています。

オリーブオイル・魚・ナッツ

栄養士が認めるダイエット法とは

 また、雑誌「アエラ1/21号」は、栄養士207人を対象にアンケートを実施。「栄養学のプロが認める最新ダイエット法」のランキングを作成しています。いずれも正しい栄養学の知識を基に選ばれた、エビデンスのあるダイエット法です。
 1位に選ばれたのは「30日スクワットチャレンジ」。2位は、豆、ごま、わかめ、野菜、魚、しいたけ、芋を食事に摂り入れる「 ”まごわやさしい” 和食ダイエット」、3位は「スロージョギングダイエット」。4位以下は、すべて食事系のダイエット法で、4位には鶏のササミやキャベツなどカサ増し野菜を使い、糖質を制限した惣菜を中心に食べる「つくりおき糖質制限ダイエット」、5位にはトマト、しょうが、セロリなど体重を減らしやすい野菜のスープを食事代わりにする「脂肪燃焼スープダイエット」がランクイン。6位は主菜の代わりにプロテインを飲む「プロテインダイエット」、7位は鶏ムネ肉とサラダを主体にする「サラダチキンダイエット」、8位は1食をみそ汁のみにする「味噌汁ダイエット」、9位はナッツを毎食食べる「ナッツダイエット」、10位は生野菜やサプリで酵素を摂取する「酵素ダイエット」でした。

スクワット
豆・ごま・わかめ・野菜・魚・しいたけ・芋

各社、付加価値を求めて研究開発

 近年、さまざまな食品メーカーが、自社商品に ”ヘルシー” という付加価値を付けるため、独自に健康系の成分と効用について研究開発をしています。明治はカカオポリフェノール、カゴメはトマト、タカノフーズは納豆、森永乳業はヨーグルト、ハナマルキは塩こうじ、三井農林は紅茶ポリフェノールについて、エビデンスを確保するための研究を続けています。
 その健康成分の効力がほかに比べるモノがないほど圧倒的で、しかも信じるに足る明確なエビデンスがあることを、メーカーだけでなく、生活者も期待しています。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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