清田ダイアリー KIYOTA DIARY
短所もウリに。多様化する嗜好に応える “ない系” フード
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2016年04月01日
激辛カレーにバリ硬麺、強炭酸飲料など、歯応えや刺激のあるものを偏愛する人がいる一方で、じわじわと増えつつあるのが、「辛くない」「硬くない」といった “ない系” を好む人々です。
増えるピータータンと “ない系” フード
背景にあるのは、若者の “ピータータン” 化。子どものまま大人にならないピーターパンのような舌(タン)のことで、幼少期から味覚が変わらないまま大人になる若者が増えているのです。日本能率協会総合研究所の調べでは、 “嫌い・苦手な味” に “苦い味” と答える20代男女の割合は年々増えています。また、果物の消費量が減っているのは、 “酸味” が苦手な人が多くなっていることも原因のひとつと言われています。苦味や酸味に対する苦手意識は、大人になれば薄れ、却って好きになるものと考えられていましたが、近年は、苦手意識を克服しないまま成長してしまった若者が多いのが実情です。
博報堂生活総合研究所の調査では、 “最も好きな酒” の問いに、若年層ほど “ビール系飲料” の回答率が低く、 “カクテル” が高くなります。若者の間で “とりあえずビール” というカルチャーがみられなくなったといわれる一因には、 “苦味嫌い” があると考えられます。
ちなみに、ピータータンが増えた理由は2つあります。
ひとつは、 “親や先輩が優しいから” です。親が子どもに嫌いなものを無理に食べさせたり、先輩が後輩にビールを強要したりすることが少なくなり、苦味や酸味に対する苦手意識を経験によって克服できないまま成長する人が増えているから。ふたつめの理由は、 “大人への憧れの喪失” です。昔なら、渋い大人の俳優や会社の先輩などに憧れ、苦いコーヒーやビールを我慢して飲むといったことがありました。しかし、ソーシャルメディアで繋がり、同世代の目だけを意識して生活している今の若者は、 “大人のまねごと” などする必要はなく、したいとも思っていないから、進んで苦みにチャレンジする機会もないというのが現状のようです。

短所もウリに変える商品開発力を
商品の特長である部分が、ある人にとっては “短所” となることもあります。また短所を克服すれば、生活者の興味を惹いて、試してみたいと思わせることも可能です。現代人の多様化し続ける嗜好に応えるには、短所もウリに変える商品開発力が求められます。そんな “ない” 系フードをご紹介します。
甘くない
本来甘いものの甘みを抑えることで、ヘルシー感、素材感やナチュラル感、高質感をアピールする商品が増えています。飲料や菓子など、子どもから若者がターゲットの中心だった食品において、甘さを抑えた商品を開発することで、ヘルシー感を求める女性や、質の高いものを求める大人を、新たなターゲットとして獲得する例が増えています。
商品例/サントリー食品インターナショナル「オランジーナ」、ロッテ「アンドダーク シャルドネ」「同 ストロベリー」/伊藤園「TEAS' TEA Light STYLE ミルクティー」

酸っぱくない
イマドキの日本人は酸味が苦手です。食卓に酢の物が登場する機会も減少していますし、かんきつ類もいちごも、糖度を上げて酸味を弱くする改良が加えられています。酸っぱいことが短所の食品も、酸っぱくなくすれば、そこに特性が生まれ、それが商品の魅力になります。
商品例/カゴメ「あまいトマト」、ヤクルト本社「白い黒酢」

辛くない
本来、「辛さ」が味の特徴だったものの「辛さ」を抑えて、「辛さ」に弱い、イマドキの生活者が食べやすい味に仕上げた商品や料理が出ています。これも、大人の舌が幼稚化しているからで、商品だけでなく、辛くない麻婆豆腐やエビチリなどの料理をウリにしている外食店もあります。
商品例/江崎グリコの「ZEPPIN 大人のための甘口」、秋本食品「10種の野菜ミックスキムチ」

刺激が少ない
強い刺激が苦手な若者が増えています。ミントの爽快感が痛かったり、強い炭酸が辛かったり。そんな若者向けに刺激の少ない商品が開発されています。ミント味や炭酸などの刺激物は、以前は圧倒的に若者に支持されたものでした。草食系という言葉に代表されるように、今は、若者だからといって、ひとくくりにはできない市場になっています。
商品例/アサヒフードアンドヘルスケア「ミンティア・ブリーズ」、ダイドードリンコ「かりんとはちみつの優しい炭酸」

苦くない
苦みは、大人にならないと分からない味のひとつです。ただ、先ほどから申し上げているように、大人になっても苦手なピータンタンの人は多いのです。ビールは苦みがおいしいと思うのですが、それも苦手、ピーマンも苦くて食べられない。そんな大人が増えています。
商品例/キリンビバレッジ「カフェインゼロ生茶」、タキイ種苗「こどもピーマン ピー太郎」、キリンビール「フレビア レモン&ホップ」

その他、若者や子供に向けた “塩分が少ない” カップ麺やスナック菓子、噛むのが面倒、噛むのが得意じゃない若者に向けた “硬くない” ガムや米菓、 “クセのない” オリーブオイルやナチュラルチーズ、 “においの少ない” 牛乳などが “ない” 市場を賑わせています。
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この記事を書いた方
この記事を書いた方
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/