清田ダイアリー KIYOTA DIARY
睡眠難民が求める機能性表示食品。飲料の次は”睡眠スイーツ”
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2024年12月01日
ここ数年、よりよい眠りを誘う食品や飲料が市場をにぎわせています。大きなうねりを作ったのは、「Yakult1000」。そのヒットに続けと、“飲むだけで睡眠の質の改善が期待できる飲料”がたくさん登場しました。
睡眠飲料市場がある種の飽和状態とも言える中、2024年は“睡眠スイーツ”が注目されています。心地よいリラックスタイムから質のいい眠りにいざなう心と身体にうれしい“睡眠スイーツ”。因みに欧米では、寝る前にチョコレートを食べて気持ちを落ち着かせる「ナイトチョコレート」という習慣が以前からあります。
日本は世界有数の睡眠負債大国
自身の睡眠に不満を感じる人が増えています。スリープテック事業を展開するニューロスペースが23年1~12月、同社睡眠サービス「パーソナルスリープチェック『My Sleep』」を利用した人のうち、10~60代男女の日勤およびシフト勤務の就業者6123人から取得した睡眠レポートの結果によると、睡眠に満足していない人の割合は73.4%に上り、22年実績(65%)より8.4ポイント悪化しました。平日の睡眠時間の平均は6.3時間、休日は7.5時間。一番解決したい睡眠課題は、「途中で目が覚める」が31.8%で最も多く、「寝ても疲れがとれない」(25.6%)や「朝起きるのがつらい」(17.7%)といった回答が続きます。
「今の仕事で眠りに影響を与えていると自覚するほどの強いストレスを感じている」と答えた人は21.1%。要因を3つまでの複数回答で聞いたところ、「仕事の質」(54.6%)や「対人関係」(51.8%)、「仕事の量」(44.7%)が上位に上がりました。

睡眠改善市場は拡大傾向
そんな睡眠難民を救うスリープテックは市場拡大が見込まれていて、NTT東日本はグループ会社とともに22年、睡眠をテーマにした企業コミュニティ「ZAKONE(ザコネ)」を設立。企業同士のノウハウの共有や協業による睡眠市場の拡大に繋げるほか、企業から睡眠データ分析や市場参入コンサルなど案件獲得を目指していて、参画企業数は100社を超えています。
睡眠をサポートする機能性表示食品も、売り上げは好調です。インテージの全国消費者パネル調査データによると、睡眠関連の機能性表示食品の100人あたりの23年平均購入金額は8391円と、22年の4524円に比べて85%も増えました。生活者の財布の紐が固くなる中でも、10~70代のすべての年代で前年を上回っています。
若者はいくら眠っても足りない、朝起きるのが辛いといい、高齢者は眠れない、夜中に目が覚めてしまうのが辛いという。世代ごとに理由は異なれど、すべての世代がターゲットになり得る市場です。
米国の睡眠スイーツ市場。まずはホテルと航空機内
米国では、就寝前におやつを食べたい人向けの“睡眠系スイーツ・スナック”が注目されています。Nightfood Holdings(ナイトフードホールディングス)は、睡眠をサポートする成分を含むサプリメントはあるものの、そうした機能を持つスイーツやスナックはないと考え、睡眠の専門家の協力を得て、ヘルシーで良質な眠りを促すことができる夜のアイスクリームとクッキーを開発しました。
いずれも一般的なアイスクリームやクッキーより糖や脂肪を抑え、睡眠の質を向上させるといわれるタンパク質やビタミンB6、マグネシウム、亜鉛など睡眠に関与する成分が配合されています。
販売戦略が興味深い。アイスクリームは当初、スーパーでの販売にチャレンジしましたが、大手に押されて一時撤退。そこで目を付けたのがホテル。夜に小腹が減った宿泊客の需要を狙いました。夜のアイスクリームは、“よい睡眠の提供”を重視するホテルのニーズに合致。大手ホテルチェーンを含め、販路は急拡大し、米国内約1000軒超のホテルで展開が始まっています。クッキーはネスレと組み、航空機内での試食を開始。機内で“よい眠り”を誘います。

広がりを見せる日本の睡眠スイーツ商品
日本でも、“睡眠スイーツ“がぞくぞく登場しています。
プレイポンプ(東京・渋谷)は、睡眠の質をサポートするクッキー「Munchies Cookie SLEEP(マンチーズクッキースリープ)」を発売しました。砂糖・小麦粉・動物性食品を使わない商品で、リラックス成分のひとつ、CBD(カンナビジオール)を配合。さらに睡眠ホルモン“メラトニン”の材料となるアミノ酸トリプトファンとビタミンB6が含まれているヘンプシード、安定した眠りをもたらすアーモンド、心も身体も温まるシナモンを加えています。リラックス効果があるとされるテオブロミン、虫歯の進行を抑えるというカカオポリフェノールが摂れ、夜に食べても安心な有機チョコチップ入り。100%プラントベースで、うるち米を用いたグルテンフリーの生地を低温でじっくり焼き上げ、しっとり食感に仕上げた、すっきりした目覚めのための“体感型”睡眠サポートクッキーと謳います。

プレシア(神奈川・厚木)が4月に発売したのは、“睡眠の質(眠りの深さ)を高める”とアピールする機能性表示食品「カスタードホイップシュー」「とろけるカスタードプリン」です。それぞれに、睡眠の質を高める機能があるGABAを1個あたり100mg配合されています。GABAの機能とスイーツに期待される“心の癒し効果”の相性の良さに着目して開発。1日1個、普段の間食と置き換えることを勧めています。

日清シスコは「チョコフレーク」から、女性に人気のカクテル“カシスオレンジ”の味わいをイメージした「まどろみカシス&オレンジ」を期間限定で発売しました。粉末のカシス果汁とオレンジ果汁、酒を加えたチョコレートでコーンフレークをコーティングした、フルーティな香りと果実感が特徴。1日の終わりのリラックスタイムにぴったりな、アルコール使用量0.05%の“大人のためのチョコフレーク”は、まどろむような癒しの夜のひと時に最適なスイーツです。

癒し成分CBDを配合したグミを発売したのが東京・港区のNextPage(ネクストページ)。“1週間で睡眠を整える”をコンセプトに、厳しい基準をクリアした純度99%以上の高品質なスイス製CBDを1粒(4g)に50mgも配合した「CBDグミ ゆず味 7粒入り」です。

メロディアンが発売したのは、睡眠と疲労感をサポートする機能性表示食品のポーション容器から直接食べる、GABA配合の機能性表示食品の「GABA Shot(ギャバショット)」です。“おやすみ前の快眠ショット”とピーアール。水などに溶かす手間がなく、粒タイプのサプリメントが苦手な人にもおすすめで、1個4.5mlのため水分を摂り過ぎる心配もありません。

“おやすみ前に食べる新習慣”と謳う機能性表示食品のアイスクリームも商品化されています。静岡県のkobachi(コバチ)の「スリープアイス」は、良質な睡眠をサポートする効果が報告されている緑茶のうま味成分“テアニン”を配合。農家と共同開発したカフェインの少ない冬摘み緑茶を用い、砂糖ではなく就寝前でも安心なキシリトールを使っています。“おやすみ前でも罪悪感がなく、おいしくて、食べた後は幸せな気持ちでベッドで休める”という大人の願いを叶えるご褒美アイスに仕上げています。

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この記事を書いた方
この記事を書いた方
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/