清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

今、生活者の心を揺さぶるキーワードは“地元愛”

「食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気」

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2018年02月01日

今、生活者の心を揺さぶるキーワードは“地元愛”

 イギリスがEUからの離脱を選択したり、米国では、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領が誕生したり。昨今、世界的に右傾化が拡がっています。そんな中、食市場では“地元愛”がトレンドキーワードとして浮上。商品開発のテーマになったり、地域経済活性の原動力になるなど、注目を集めています。

47都道府県の味を表現したビールとポテトチップス

 キリンビールが発売した「47都道府県の一番搾り」。開発キーワードは、ずばり”地元愛”です。発売以来、予想以上の売れ行きで、販売目標を数度上方修正しているほどです。開発においては、各都道府県の地元の声を取り入れているとか。例えば広島の場合、広島カープを意識した赤みを帯びた色味など、比べて飲まないと分からないトリビアも用意されていて、そこに地元愛をくすぐる魅力があるのだと思います。
 カルビーも昨年9月から、愛知「てばさき味」、福島「いかにんじん味」など全国47都道府県のご当地の味を再現したポテトチップスを順次発売しています。今までポテトチップスを購入しなかった高齢者までも顧客として獲得。売れています。商品化にあたっては、地元ならではの味を開発する「❤JPN(ラブ ジャパン)」企画を発足。各県の自治体や地元企業などの地元を愛する人たちと連携し、ワークショップや試食会を行っているそうです。カルビーはこの商品を通して、地域の名産品や知る人ぞ知る味などを全国に紹介し、地域の食文化の発展に貢献したいと考えています。伊藤社長はヒットの要因を、「社会的価値」と分析。自分の故郷に関心を持ち、地元を盛り上げてくれているという感覚が評判に繋がったと言います。加えて、“ご当地ポテチ”でポテトチップスに新たな価値を生み出すことで、「じゃが芋の産地の人が『もっと加工用を作ろう』という気持ちになってもらえたらいい」と原料確保への波及効果も期待しています。

キリンビール「47都道府県の一番搾り」
画像引用元:PR TIMES キリンビール「47都道府県の一番搾り」

地域経済活性のポイントは「クールローカル」

 外食市場においても「地元愛」が注目されていて「クールローカル」=「かっこいい地元」が重要なキーワードになっています。地域社会が結びついて独自の魅力ある商品を育て上げ、地域の経済を活性化する活動のことを「クールローカル」と言います。
 例えば、イタリア料理の消費量が日本一のさいたま市では、さいたま産のイタリア野菜を作ろうと、地元のシェフ、種苗メーカー、若手農業者が集まって「ヨーロッパ野菜研究会」を結成。行政からのバックアップを得て2013年から活動を開始しました。取り組みの結果、良質のヨーロッパ野菜が増産されるようになり、地元の物流業者も活動に加わることで、15年には「ヨーロッパ野菜研究会」の野菜を使用する県内の飲食店が1000店を超え、16年には年間出荷額が3000万円を超えるまでに成長。埼玉県内のイオンの一部店舗でも販売されるようになりました。

彩り鮮やかなイタリア野菜

 食ではありませんが、最近、郊外を中心に、駅の商業施設が増えています。背景には、働く女性やシニアの増加による、「地元」で手軽に買い物をしたいというニーズの高まりがあります。買い物や映画を見るために、電車に乗って都心部に行く生活者が減り、地元の駅の商業施設を利用する人が増えていて、駅ビル・駅ナカの開業ラッシュを追い風に、生活者の地元志向はますます強くなっています。

多くの人で賑わう駅内の商業施設

“地元愛”はアジアでも消費のキーワードに

 因みに、アジアでも地元志向が強まっています。背景にはナショナリズムの高まりや技術の進歩があります。
 国際ブランドが市場を長年支配してきた消費財や食品、飲料、スキンケア商品、さらにはスマートフォンを含む耐久消費財の分野でも、アジアの地元ブランドが急速に成長しています。多国籍企業の多くがこの傾向を認識し始めていて、例えばインドでは、ヨガの指導者が始めた日用品を扱う会社が急成長。P&Gを脅かす存在になっています。
 調査会社のニールセンが今年4月に発表した「グローバル・ブランド原産国調査」では、回答者の約75%がブランドの原産国は、価格や品質以上に重要な評価基準になると回答しています。また東南アジアでは52%が、世界的な大手ブランドよりも「地元ブランドの商品を買いたい」と答えています。
 ニールセンによると、生活者が地元ブランドを選ぶ主な理由は、コストパフォーマンスの良さ、国家のプライド、購入体験の良さなどで、中でも回答者の6割近くが、“地元企業を支えるため”を理由として挙げているといいます。

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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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