清田ダイアリー KIYOTA DIARY
2025年食市場のトレンド予測「HITキーワードBest10」
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2025年02月01日
能登半島地震で幕を開けた2024年。円安と気候変動による食料品の値上げが続き、生活水準の二極化もより鮮明に。世界的な政情不安が日本の経済にも大きな影響を及ぼす可能性を否定できない25年。生活者が食に求めるものは、“身体と心の健康”と“無理をしない楽しさ”に大きくシフトしています。
目次

1位「ウェルパ志向」
「タイパ(=タイムパフォーマンス)」「マネパ(=マネーパフォーマンス)」「スペパ(=スペースパフォーマンス)」「カロパ(=カロリーパフォーマンス)」などなど、「〇〇パ」という造語が次々に生まれる昨今。25年は「ウェルパ(=ウェルビーイングパフォーマンス)」が求められます。
「ウェルビーイング(well-being)」は、身体的・精神的・社会的、そのすべてが満たされた状態にあることを意味します。昨年は、“食とウェルビーイングの関係性”について食企業が積極的に調査に乗り出し、エビデンスを公表。ウェルビーイングをテーマに展開される商品や販促、サービスが、25年はますます増えるものと予想され、そんな動きに呼応するように、生活者のウェルビーイングを求めるニーズは強くなると思います。中でも、個々人がどう感じているかが問われる「主観的ウェルビーイング」が重要で、消費した時間や金銭に対してどの程度の身体的・精神的ウェルビーイングが自覚できるのか。納得できるパフォーマンス(=成果)が求められます。

2位「プロパ志向」
「プロパ(=プロセスパフォーマンス)」。時間対効果の良しあしは、消費した時間の充足感に大きく左右されます。時短を求めることと、じっくり時間をかけたいことの二極化が鮮明になっていて、中でもプロセスを楽しみたいという欲求は大きくなっています。プロセスを満足感のあるパフォーマンスに昇華できるか否かが、プロパの価値を決めます。
この流れは、22年から。「0.5手間」というキーワードを挙げました。コロナ禍も2年が過ぎ、頑張らない手作り感が求められ、生活者が “ちょっとした手間“を掛けて完成させる商品が増えるだろうと予想しました。求められるのは、最後の“ひと手間”とも言えないような「0.5手間」です。そして23年は、「0.7手間」を提案しました。生活者が面倒と感じるほどの作業はなしに、でも“自分が作った”“おいしさや健康は犠牲にしてはいない”という達成感や満足感が得られる。そのプロセスは省略したくないというニーズが、「プロパ志向」です。
例えば、セブンイレブンが発売した「セブンプレミアム クックイック」シリーズは手作り感と時短を両立させた冷凍食品で、“自分が作った料理”と納得できるところがセールスポイントですし、敢えてひと手間かけて炭酸水などと合わせ、自分好みの濃さに仕上げる濃縮タイプの飲料など、飲む前のプロセスを楽しめる商品も売れています。

3位「五感消費」
景況感悪化、実感なき景気回復など、生活者に先行き不安感が広がり、消費が低迷するときに挙がるキーワードのひとつが、「五感消費」です。食感やASMR、香りや色など、五感にアピールする要素をウリにした食品が増えます。節約志向でも体験型コンテンツにはお金をかける生活者をターゲットに、商品にちょっとした驚きや楽しさを付加することで魅力度をアップさせ、ウリに結び付ける戦略です。
例えば、モスフードサービスは、モスチキンを食べたときのASMR、“サクッ”音を使ってメロディを奏でる音楽ゲームを“モスチキン ネット特別予約注文”の開始に合わせてホームページ上で公開。サントリーは、まったく新しいおいしさを追い求め、お茶の香りにこだわって11年かけて作り上げたティーパウダー「いちりんか」のポップアップイベントを開催しました。今までにない新食感を楽しめるグミや、“ザクザク”“ふあふあ”“ぷにぷに”の食感をウリにしたさまざまな商品、色ではモノクロや黒一色の世界を演出したメニューなどが登場しています。

4位「Wシニア市場」
令和のシニア市場は、団塊シニアと新人類シニアの「Wシニア市場」が展開されます。“新人類”と呼ばれた1961~70年生まれの世代が、いよいよシニアの領域に入ってきました。バブル期を謳歌してきたこの世代は、消費に対して意欲的。定年後も働き続けたい人が多く、財源が確保されることから、活発な消費傾向は続く見込みです。また、団塊シニアと新人類シニアはこれまでのシニア世代とは異なり、SNSを駆使するなど情報収集に積極的で、いわゆる中高齢者意識がないのが特徴。ただ、気持ちが若く過去のシニア層に比べて元気とはいえ、身体の衰えを感じている年代であることは否めません。今後はそんな「Wシニア市場」に向けた新たな抗老化商品が注目されます。
森永製菓は、鉄分やコラーゲンペプチドを配合したサプリ感覚で食べられるアイス「サプリス」を発売しました。“サプリメントだけで摂りたい成分を摂るのは、なんだか味気ない”という声に応えて開発したといい、パッケージには、ターゲットの50~70代女性が自分のために手に取り、気分が上がるような華やかなデザインを施しています。

5位「調理休活」
“調理にも定年があっていいのでは”と、評論家の樋口恵子氏が数年前に提唱した「調理定年」。手作りはほどほどに、外食やテイクアウト、市販の惣菜などを上手に活用しながら必要な栄養を摂るという考え方で、女性たちを中心に支持を得ています。
弊社では「調理休活」というキーワードを付けました。調理をするのが精神的、肉体的につらくなったとき、しばし調理を休んで自由な時間を謳歌するのもいいのではという意味です。盛り付けが美しいワンプレート冷食や、ひと手間で憧れのレストランの味が楽しめるミールキットなど、“調理を休んでよかった”とポジティブにとらえることができる商品が求められます。

6位「美活腸育」
腸の調子を整えることは便通改善、脳の活性化、精神状態の安定といったさまざまな効果をもたらすことが明らかにされ、健康志向の高まりとともに腸活・腸育のニーズに応えた商品は依然として人気があります。近年はこうした健康効果だけでなく、さらに美容効果を加えた“健康と美容の両方に貢献する”商品が増えています。
森永乳業は、機能性関与成分“イヌリン”を配合することでビフィズス菌を増やして腸内環境を改善する機能と、肌の保湿力を高める機能が期待できる機能性表示食品「森永アロエヨーグルトW」を、明治は、CJ FOODS JAPANのビネガードリンク「美酢」とコラボ。おいしく身体の中から“もっときれいになりたい”想いをサポートする「美酢のむヨーグルト」を発売しました。男女を問わず美容を意識する生活者が増えていることもあり、今後も腸育がもたらす美への効用を謳う商品、美容効果を備えた腸育商品への需要は拡大する見通しです。

7位「冷食新時代」
新型コロナ禍の巣ごもり需要で注目された冷凍食品。新たに冷凍専用庫を備える家庭も増え、そのスペースを狙ってさまざまな施策が展開されています。
たとえば、ご飯を冷凍することで起こる白蝋化という欠点を解消。レンチンなどすることなく、自然解凍でおいしくいただける寿司やおにぎりが開発されたり、最もおいしい状態の完熟野菜や果物をペーストや果汁にし、その鮮度と味わいを最大限に活かした冷凍食品が登場したり。一方、“プロテイン補給やボディーメークのために”“咀嚼・嚥下がしやすい”“糖質量が適正にコントロールされている”など、機能性を付加した冷凍食品なども登場。冷凍食品は、確かな新時代を迎えています。

8位「チューニングフード&ドリンク」
時と場合によって上手に自分を切り替えつつ、日々を過ごしているZ世代。こうした若者世代を中心に、自分らしくいられるように心身を調整してくれたり、場面に応じた“なりたい自分”になれるように気分の切り替えをサポートしてくれたりする「チューニングフード&ドリンク」が注目されています。
アサヒ飲料がサイバーエージェント及びZ世代と共創した「BE」は、“Z世代が自分らしくいられるドリンク”をテーマに開発された果汁入り微炭酸飲料。陽気な気分になりたい時向け、集中モードになりたい時向け、リラックスしたい時向けの3種類を用意し、それぞれにぴったりなフレーバーに仕上げています。一方、ファミリーマートが数量限定で発売した「サッポロ 21時のレモネードサワー」は、“夕食後にゆったりとした贅沢な気分になれるような味わい”を目指し、サッポロビールと共同で開発されています。また森下仁丹は、発売120周年を迎える口中清涼剤「仁丹」のリブランディングにおいて、テーマを「ごきげんのおまもり」に設定。“キリッとごきげんにいきましょう”と謳い、若年層の新規開拓を狙います。

9位「昭和100年レトロ」
25年(令和7年)は昭和元年から数えて100年。近代化と大東亜戦争、高度経済成長、バブル景気とその崩壊と、まさに目まぐるしい歴史を積み重ねた日々。良くも悪くもさまざまな恩恵を授かった一時代は、自由な文化が花開いたのも事実です。それを知らない世代には、元気な時代、夢を持てた時代と映ることでしょう。一方、その時代を生きた世代は、ノスタルジックな思いを馳せています。25年は、昭和と平成初期のさまざまな食文化が復活するでしょう。
京都センチュリーホテルは期間限定で、「昭和100年 ノスタルジック ビュッフェ in La Jyho」を開催。“レトロ喫茶と懐かしの洋食”をテーマに、1920年代後半から80年代までにカルチャーとして親しまれ、あの頃の思い出がよみがえる料理の数々を提供しますし、昭和レトロが体験できる「ホテルニューアカオ」「ハトヤホテル」といったかつて名を馳せた国内のホテルが“昭和レトロ”を訴求し、若者を中心に再び注目されています。商品では、サントリー食品インターナショナルが「POPメロンソーダ」シリーズの期間限定商品として「ミックスプリンアラモード」を、チェリオジャパンが80年以上前に誕生したと言われる“バナナオムレット”の味わいを再現した炭酸飲料「バナナオムレット風味ソーダ」を発売するなど、昭和テイストのスイーツが飲料になって登場しています。

10位「スープ食」
タイパ志向や節約志向、健康志向を背景に、栄養豊富で時間や食欲がない時でも食べやすく、一品で主食やおかずの代わりになるスープの人気が広がり、さまざまな「スープ食」が登場しています。
代表例が、スープをご飯にかけるだけで完成する“スープご飯”。カゴメは野菜たっぷりの濃厚なレトルトスープ「ごはんにかけるスープ」を、ヤマモリは「ごはんにかけるトムヤムスープ」を発売しました。「サムゲタン」などの「ごはんにかける」シリーズが人気の無印良品は、ワンパンで本格的なスープパスタが作れる「煮込んでつくるスープパスタの素」を新たに投入しています。さらにダイドードリンコは、液体の中でも米の食感が保たれる独自技術で特許を取得。米入り缶スープ飲料「かに鍋スープ 雑炊仕立て」「鯛茶漬け風スープ」を開発しました。駅のホームや工事現場といった寒さを感じやすい場所や、小腹満たしニーズをとらえるため、学校など人が長時間滞在する場所にある自販機で販売しています。一方、料理自体が“スープ化”する流れも。エースコックは、焼き魚の風味を再現したカップスープ「飲む焼き魚 濃厚魚介醤油スープ」を発売。“食べるスープ”がコンセプトの“スープ惣菜”に注力しているセブンイレブンは、麺なしで野菜たっぷりの「野菜タンメンスープ」などを展開しています。間食と食事の境界線が曖昧になり、分食化や乱食化が進む中、さまざまな料理がスープに変身する流れが加速しそうです。

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この記事を書いた方
この記事を書いた方
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/