清田ダイアリー KIYOTA DIARY
官民一体で動き出した「フードロス」対策
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2019年02月01日
ずっと問題視されているにも関わらず、なかなか解決に乗り出せず、やっと最近になって人々の関心が集まり、少しずつ改善の方向に歩み始めたもののひとつに、「フードロス」対策があります。
目次
日本のフードロスは国際的食糧援助量の2倍
世界で作られている食べ物のうち、なんと1/3が捨てられていると言います。日本では、年間1700万トンが廃棄され、この内まだ食べられるのに廃棄されている「フードロス」は、年間で800万トン近くあります。この量を分かりやすく例えると、全国民が毎日、お茶碗1杯分のご飯を棄てている量と同じになります。また世界では約8億人もの人たちが栄養不足状態にあり、国際的な食料援助量は年間約400万トンです。つまり、その2倍近くの食べられる食品が、毎年、我が国では捨てられている計算になります。
このような実態を伝えるニュースがきっかけとなり、フードロスの問題に関心を持つ生活者が増え、官民一体でさまざまな取り組みが始まっています。
若者の消費トレンドにマッチ! ”フードシェアリング”
外食店が余った食事や食材などをお得に提供する ”フードシェアリング” など、余りものの活用に注目が集まっています。理由のひとつは、最近の若者の消費トレンドにマッチしているからです。
例えば古着ブーム。若い世代は古着への抵抗が少なく、個性を求めて古着を愛用するこだわり派が増えています。フリマアプリ「メルカリ」を利用して中古の服を売り買いして楽しんだり、新品の服より個性があると中古品を愛用したり。食についても同様で、余り物でも気にしないし、シェアリングという考え方にも共感しています。さらに、コストパフォーマンスがいいとなれば、大歓迎です。加えて今の若者たちは、何かしらの社会貢献を無理せずにしたいという気持ちも強く、フードシェアリング的発想のサービスがぴたりとはまっているのです。
定額制も登場。フードシェアリングサービス
手軽にフードシェアリングに参加できるサービスが続々登場しています。
そのひとつ「TABETE(タベテ)」は、フードロス削減を目指す日本初のフードシェアリングサービス。このサービスに加盟しているレストランが、急な予約のキャンセルなどで発生した余った料理や食品を随時登録。それを見たTABETEユーザーが店舗に行くと、 ”処分価格” で食べられるというシステムです。食材のロスが発生するのは閉店が近い夜になる場合がほとんどですが、お得に食事ができ、しかも無理せずにフードロス削減に繋がるのは画期的で、都内200店以上のレストランや小売店、大手惣菜チェーンが参加しています。
月額制のサービスもあります。
「Reduce Go(リデュース・ゴー)」は、飲食店や小売店の余った食品をシェアする点は「TABETE」と同じですが、月額1,980円で1日2回まで利用可能な点が特徴です。利用方法は、アプリで、店側が登録した料理や食品を注文。お店に取りに行くだけです。
余りものを持ち寄る ”サルベージパーティ”
自宅の冷蔵庫や棚に眠っている食材を持ち寄り、みんなでメニューを考えて調理する ”サルベージパーティ(=サルパ)” も、若者を中心に人気です。
一般社団法人「フードサルベージ」が、フードロスの削減を目的に推進する活動で、ウェブサイトでは、これまでに作ってきた料理のレシピが掲載されています。
またサルパは、ジャマイカ料理店のシェフが主催したり、子どもの夏休みの自由研究向けだったりとテーマや内容もさまざま。外国人旅行者を集めたサルパでは、みんなでスーパーに行き、傷みかけた野菜などを各1品ずつ自由に購入して料理を作ります。楽しみながら食文化の違いを学べ、友人も増やせると好評です。
ダイエーは「フードドライブ」に積極的に参加
小売店で「フードロス」対策に積極的に取り組んでいるのが、スーパーのダイエーです。賞味期限が近い食品を社会福祉に役立てる「フードドライブ」の実施店舗を増やしています。
フードドライブとは、小売店や家庭で余った食品を持ち寄り、生活困窮者のための施設など、それを必要とする人々にフードバンクなどを通じて寄付する活動。ダイエーは、店で定めている販売許容期間は過ぎているものの、賞味期限内の加工食品や定番カット商品を提供。また各店に専用の回収ボックスを設置して家庭で利用しない未開封の加工食品も回収しています。
行政が実験を始めた「eco buy」
行政もやっと「フードロス」対策に乗り出しました。「eco buy」です。
昨年1月、東京都はNTTドコモと組み、99イチバの協力を得て、スーパー「miniピアゴ入船1丁目店」で、 ”フードロス” を減らす実験を始めました。ドコモが開発したスマホ向けアプリを活用。賞味期限や消費期限が迫る商品を購入し、レシートと商品の賞味期限・消費期限を撮影して申請すると、価格の約20%分の「dポイント」が付与されるというシステムです。
生鮮食品や乳製品など約30品目が対象で、売れ残りそうな食品の購入を促し、食品ロスの削減に繋げます。ドコモは実験結果を踏まえ、今後、他の小売店への導入を検討する予定です。
他にも、食品メーカーでは、キユーピーや味の素といった企業が、賞味期限を延長したうえで、表示を「年月日」から「年月」に段階的に切り替えて、食品ロスの削減を目指しています。またカルビーは、「じゃがポックル」の製造工程で出る規格外の小さなポテトを使って商品化を進めたり、セブン-イレブンは、サンドイッチの賞味期限を3割伸ばして廃棄ロスを少なくしたり、ロック・フィールドは、惣菜の風味や食感を長持ちさせる調理方法を研究するなど、フードロス対策の一助となる食品の ”ロングライフ化” に取り組む企業も増えています。
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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。
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この記事を書いた方
この記事を書いた方
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/