清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

不況時の戦略キーワード “経費をかけずに変化を生み出す” 【その1 定番アレンジ】

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2016年12月01日

不況時の戦略キーワード “経費をかけずに変化を生み出す” 【その1 定番アレンジ】

 不況時に登場する、加工食品のキーワードがあります。
 食品会社が、できるだけ経費をかけずに商品に変化を生み出し、新しい販売力を身に付ける商品開発の手法、「定番+α」。つまりマイナーチェンジです。一方、先行き不安で節約志向の生活者の消費スタイルは、保守的になります。買い物に失敗したくない心理は強くなり、生活者は、よく知らない新しい商品ではなく、いつも買う商品、想像ができる商品に手を伸ばします。「定番+α」は、そんな両者のニーズが一致した商品開発の手法です。
 不況時の商品開発のキーワード「定番+α」を、「定番アレンジ」「用途開発」「容量戦略」「味変&スパイス」の4つのテーマごとに、過去の事例も含め、4回に分けて紹介します。

ロングセラー商品の力を借りる

 今年、ブルボンはクッキー菓子“ルマンド”を使った“ルマンドアイス”を開発。アイスクリーム事業に新規参入しました。また日清シスコはコーンフレーク”シスコーン”をスナック菓子に応用した”フレークス”を発売。グラノーラの台頭で苦戦が続く朝食市場とは違う土俵で勝負をかけます。他にも、不二家は“カントリーマアム”や“ホームパイ”といった同社の定番商品をアレンジした“ベイクドスナック”シリーズを、森永製菓は主力のソフトキャンディ“ハイチュウ”をアイスバーにした“ハイチュウアイスバー”を発売しています。他社商品の知名度を借りて商品開発をする例もあります。日本マクドナルドは森永製菓とコラボ。“マックシェイク 森永ミルクキャラメル”を開発、販売しました。三井農林は、チロルチョコとコラボした個包装タイプの粉末飲料“チロルチョコ×日東紅茶 ミルクココア”“同 カフェモカ”を開発。パッケージはチロルチョコの“ミルク”“コーヒーヌガー”のデザインをそのまま採用しているため、店頭での視認性は抜群だといいます。
 生活者の財布の紐が固くなる不況時、新商品の上市はリスクがあります。今まで商品を出していないカテゴリーに挑戦する場合は、なおのことです。生活者はその商品をまったく知らないし、認知させるためには販促費が必要となります。当たり前のことですが、経費をかけたからといって、売れるとは限らず、リスク回避のため、自ずとロングセラー商品の力を借りる戦略「定番活用」が活発になります。

様々なお菓子

震災後にも同様の戦略が

 同様の戦略が、東日本大震災の翌年、先行き不安感が強くなった2012年にもありました。東ハトは、定番の焼き菓子“オールレーズン”を砕いてセミスイートチョコレートと混ぜ合わせた“オールレーズンチョコレート”を発売しました。自社の人気定番商品を利用することで、「チョコがけスナック市場」においては、後発の新規参入リスクを回避したのです。またロッテは、ロングセラー菓子“コアラのマーチ”ブランドから、“コアラのマーチケーキ”を発売。飲料では、不二家が、ロングセラーキャンディ“ミルキー”のPETボトル入り炭酸飲料“ミルキークリームソーダ いちご”を上市しています。

災害とお菓子

ブランド資産を貸し借り

 商品だけではありません。ブランドの立ち上げに関しても、知名度の高い既存のブランドを利用する手法が注目されました。
 この年、日清食品ホールディングスは、商品開発において、手持ちの有力ブランドを多重活用する2つの制度を導入。既存のブランド資産を生かし切る戦略に活路を見出しました。グループ間でブランドの貸し借りをする「ブランドファイト」と、温度帯が異なる商品を扱うグループ会社間で貸し借りする「ブランドクロス」です。この制度を利用して開発されたのが、”カップヌードルごはん”とその冷凍食品版。どちらも、“カップヌードル味のご飯”という、既知と未知が混同した新規性がウケ、大ヒットしました。
 因みに2010年、日清食品は、定番カップ麺「カップヌードル」ブランドの商品を相次いで大幅に刷新しました。リニューアルの大きな特徴は、カップヌードルの味わいに慣れ親しんだ生活者の反発を避けるため、麺やスープではなく「具材」に手を付けたことです。まったく新しい商品を投入するのではなく、人気のある商品を対象に、慣れ親しんだファンを失望させることなく、でも新しいニーズに応える付加価値を付け足す手法です。この戦略が功を奏し、この年、「カップヌードル」ブランドの商品は、前年を上回る売れ行きを回復しました。

カップラーメン

B級グルメをアレンジ

 外食市場でも、定番をアレンジしたメニューが人気です。
 代表的なのは、餃子や焼きそばなど、B級グルメと言われるものを、ちょっとおしゃれにしたり、ヘルシー感を持たせたりするアレンジです。餃子の具にハーブを入れたり、トリュフ塩で食べさせたり、シャンパンと合わせたり。女性をターゲットにした専門店が増えています。また焼きそばも新しいスタイルが登場。白金にオープンした「無添加焼きそば BARチェローナ」は、無添加の特性ソースで仕上げた焼きそばが、ヘルシー志向のシロガネーゼに支持されていますし、スタイリッシュな焼きそばカフェ、創作焼きそばの専門店なども人気です。その他、ハムカツ、から揚げ、トンカツなどの揚げ物も、家庭で作らなくなったこともあり、今、アレンジが盛んに行なわれている外食メニューです。

B級グルメ

付加価値の高い
食品・製品を開発します

清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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    全国屈指の取扱原材料
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    掛け算のアイデアと
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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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