清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

不況時の戦略キーワード “経費をかけずに変化を生み出す” その4味変&スパイシー

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2017年06月01日

不況時の戦略キーワード “経費をかけずに変化を生み出す” その4味変&スパイシー

 不況時の商品開発のキーワード、最後は「味変&スパイシー」です。

1食で2度おいしいお得感

 リーマンショックの翌年の2009年、ラーメン業界で流行ったのが、途中で味を変える「味変」です。カップ麺にも、味変商品が登場しました。1食で、 “トンコツ” と “カレー” の2種類のスープが楽しめるカップ麺で、まず豚骨スープで半分ほど食べた後、小袋に入った“特製スパイス”を混ぜるとカレー味に変わります。
 この年、コンビニのおでんにも味変が生まれました。デイリーヤマザキの「変身オデンジャー」は、途中で調味料を加えると、「キムチ鍋風おでん」または「とんこつスープおでん」が楽しめます。
 途中まで食べたら、調味料やソースを加えて味を変える―。1食で2度おいしいお得感が不景気のときの節約志向にぴったりハマります。

1食で2種類の味が楽しめるカップラーメン

味変調味料 “食べるラー油” 登場

 翌年の2010年、ついに味変調味料が料理に添えて使うものから、ご飯の上に盛って “食べる” 名脇役へと進化しました。その先駆けが桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」です。フライドガーリックやフライドオニオンがふんだんに入っているのが特徴で、餃子に数滴垂らすぐらいだったラー油を、さまざまな料理にかけて食べる “味変調味料” に進化させることに成功しました。料理にのせるだけという手軽さや、ご飯にかけるという斬新な食べ方がウケ、工場での生産が間に合わず、発売後、すぐに品切れ状態になりました。
 市場縮小に強い危機感を持っている調味料メーカーにとって、狙い目は、幅広い料理に活用でき、たっぷり使ってもらえて回転率が高く、新鮮なまま使い切れる調味料の開発です。そしてこの条件をすべて満たすのが、実は “食べる” 調味料なのです。特に、 “ご飯に盛って食べる” というスタイルは、消費量の増加が期待でき、大きなポイントになります。当時、卵かけご飯やねこまんまがブームになり、レシピサイト「クックパッド」で、調味料をアレンジしてご飯に盛って食べるレシピの投稿数が増えるなど、追い風となる要素がたくさんありました。

食べるラー油

スパイスでトレンド感とプレミアム感を付加

 そして昨年、不況時の食市場にはスパイスを使った商品やメニューが増えました。ちょっと前まで、「スパイシー」と言えば、 “ピリッと辛い味” を表現していました。もちろん今も、「スパイシーな辛さ」は健在ですが、最近はそれに加え、スパイス本来の味や香りへの関心が高まるとともに、スパイスの持つ美容や健康への効果も注目され、 “辛さだけじゃない” スパイスの魅力に目覚める生活者が増えています。そんなスパイスブームを背景に、①定番商品の味をスパイスで変える②流行りのスパイスでトレンド性を加える③スパイスの種類を増やしてリッチ感、大人感を演出してグレードを上げるなど、スパイスを上手に使った商品開発が目立ちました。
 スパイス料理の代表格と言えば「カレー」ですが、近年のスパイス人気によって、スパイス感をより際立たせる “本格スパイシー化” が加速していて、本格派を謳うカレー商品が続々発売されています。例えば、25種類ものスパイスを使ったカップカレーうどんや35種類のスパイスを使用したカレールウなど、スパイスの種類数を引き上げることで、プレミアム感を演出しています。
 甘・辛・苦・酸が一度に味わえる万能中華調味料、「怪味」が流行ると、定番の味に怪味をアレンジした商品が続々登場したり、パクチーが人気になるとパクチー風味のスナック菓子やパクチーソースなどが新味として話題になったりします。
 食の多様化に伴い、調味料や香辛料の消費量は確実に増加しています。またアメリカにおいても、 “スパイシー” は外食トレンドのひとつに挙がっていて、タイ生まれの甘辛ホットソース “シラチャーソース” は一時生産が追い付かなくなるほどのブームを巻き起こしました。

カレーのルーやスパイスの画像

外食市場にはスパイスバルも

 高価な食材を使わなくても、ほんの少量で料理の味わいを劇的に向上させ、ヘルシー感やおしゃれ感までプラスしてくれるスパイスは、まさに、魔法の調味料。節約時代にはぴったりの食品です。さらに、先行き不安な時代には、元気になりたい心理から、生活者が辛い料理や食品を求め、スパイシーな味が流行ります。
 因みに、外食市場においてもスパイスはブームで、お酒と共にスパイスを使った料理を楽しむ “スパイスバル” が増えています。いずれの店も、カレーはもちろん、すべての料理にスパイスを使用しているのが特徴。また、スパイスとジンの相性のよさに着目して30種類以上のクラフトジンを揃え、それらを使ったスパイスカクテルを提供する店や、黒糖梅酒にクローブやカルダモンを漬け込んだ “スパイス梅酒” を提供する店などもあります。

梅酒やカクテル

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食品・製品を開発します

清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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