清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

清田産業株式会社の食品安全への取組みとその歩み(2)

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2024年06月21日

清田産業株式会社の食品安全への取組みとその歩み(2)

清田産業株式会社 品質保証室メンバーにより『Journal of Environmental Control Technique 環境管理技術』vol.42 no.1に「清田産業株式会社の食品安全への取組みとその歩み」と題する衛生管理に関する寄稿をしました。清田ダイアリーでは、その記事を2回に分けてご紹介します。

第2回ではHACCPと一般衛生管理の現状と課題を、具体的な改善点とともに紹介。清田産業としての食品衛生に関する今後の取り組みも示しています。

3.HACCPプランと一般衛生管理の記録

 HACCPに沿った衛生管理を導入している工場では、食品安全の証拠としてHACCPプランによるモニタリング記録や製造作業時の記録を残すことが必須です。CCPの管理記録、PRPの原材料受け入れチェック記録、従業員の衛生管理記録や冷凍冷蔵庫の温度記録などは、製造現場の運用を確認するために必要な項目です。

 それぞれの記録の帳票類には、数値などが記入されています。しかしながら、作業者がいつ記録し、どのタイミングで管理者が確認するのかが仕組み化されていない場合もあります。一方で管理者による確認は行っているが、管理基準が明確でなく、従業員は何を記録しているのか理解していないケースも見られます。記録する帳票類は管理基準を具体的に記載し記入時にも確認できるようにすることで、管理基準の逸脱にすぐに気付くことができます。また、HACCPプランそのものの見直しも課題の一つです。定期的な見直しを実施せず、マニュアルと現場の作業の相違に気づかない工場もありました。例えば、当初はHACCPプランに則って製造を行っていたが、原料や包材の変更等によりハザードが変更となっているにもかかわらずHACCPプランは更新されず、そのまま製造が行われ、リスク予防が出来ていないケースもありました。HACCPチームは、原料や包材の変更等があった場合には、必ず危害要因分析を行い見直さなければなりません。危害要因の変更や追加がある場合は、直ちにHACCPチームリーダーはトップマネジメントなどと情報共有し、HACCPプランの見直しをするべきです。

 製造現場で作業者が数値を記録しているだけで、管理基準を逸脱しても気が付かずにスルーしている状態では、何か大きな事故が起こっても迅速な対策が取れません。管理基準を明確化し、共有化されていないと、誰が見てもエラー(異常な状態)が起こっている状況でも気づかない。管理基準の逸脱を早く発見し対策するには、製造現場での作業者レベルまで管理基準やリカバリーの対応を共有することが必須です。また、記録の帳票類の記入抜け漏れ、数日分の記録をまとめて記入するなどの問題があった場合には、管理責任者は問題が起こった状況を確認することが第一優先事項です。記入忘れがあった場合、空白欄の数値データなどをあとから埋めるのではなく、斜線等の記入が改善のためには望ましいと思います。なぜ、作業者の記入忘れが起きたのかなど、課題を明確にすると、製造現場全体での対策が取り易くなります。

事例1

 ある工場では、記録は残っていますが、最終製品から原料までトレースをするために最終製品の出荷記録一覧表を印刷した保管記録の文字が小さすぎて誰にも読めなかったことがありました。それは、工場全体で記録する意義や必要性について目的が理解できていないからです。このように、記録の必要性を理解していないため「記録をした」ことで満足しています。記録忘れがあっても「あとでまとめて記入すればよい」という発想にもつながります。その対策としては、作業者を含めた教育訓練が必要です。

事例2

 当初は、HACCPプラン通りに製造していましたが、ライン変更や製造現場の使い勝手が良いように手順を変更した結果、当初のフローダイアグラムから変更になったにもかかわらずHACCPの見直しが行われていませんでした。結果として、当初のHACCPプランから製造工程が変わってしまい、CCP管理が全く機能していない工場もありました。製造現場の都合だけで、食品の安全を守るという意識が欠如していることが問題です。HACCPリーダーは製造現場の責任者との間で綿密なコミュニケーションを図ることも重要です。

事例3

 ある工場では小ロット多品種製造にもかかわらず、製品の金属異物除去である金属探知機の動作確認を、その日の製造開始時と製造終了時の二回だけとしていました。この場合の問題は、その日の製造終了後に金属探知機の動作確認でエラーが発生した場合、金属探知機が正常に作動していた時点まで遡るとなると、製造開始時ということになります。つまり、製品の安全を確保するには、その一日に製造したすべての製品を出荷停止にすることになります。ともすれば、すでに包装され発送された製品まで回収する作業が起こるかもしれません。小ロット多品種製造の場合、製品が切り替わるタイミングで金属探知機が正しく作動することを確認することが大切です。仮に、金属探知機にエラーが発生しても再検査する製品数も時間も短縮することができますので、大きなタイムロスにはなりません。金属探知機の動作確認の頻度を増やすことは、作業者にとっては面倒なことかもしれませんが、異物混入を早く気付くチャンスも増え、結果的にタイムロスも減らせることになります。

4.一般衛生管理の不備

 HACCPの運用は、製造環境や作業者などを管理する一般衛生管理の上に成り立ちます。どれだけ立派なHACCPプランが作成されていても、一般衛生管理が十分に機能しないとHACCPはたちまち機能しなくなります。多くの食中毒は一般衛生管理の不備によることが多いということを再認識することが重要です。

事例1

 工場のレイアウトは、汚染区、準清潔区、清潔区は分けられて、清潔さがレベルアップしています。作業者は、入室手順に従って汚染区から準清潔区、そして清潔区へ入室し、それぞれの作業を担当します。汚染区から清潔レベルが上がるゾーンへの移動は、不衛生なものを清潔区に持ち込まないように注意しなければなりません。 監査では工場内で使い勝手の良い段ボールを清潔区に持ち込んでいるのをよく発見します。外部から工場に持ち込まれた段ボールは、汚染源の一つであると考えるべきです。段ボールに潜むゴキブリ等の害虫も清潔な製造区域に持ち込むことになります。また、清潔区に放置された段ボールが害虫の巣にもなる可能性もあります。清潔区に段ボールを持ち込まないルールを徹底できるように従業員の教育が必要です。

事例2

 手洗い後に手指汚染の可能性が起こるケースがありました。作業員が手洗い後に手を拭いたペーパータオルのゴミを捨てるためにゴミ箱の蓋に触ってごみを捨てていました。蓋つきのごみ箱だったためにせっかくきれいに洗った手が再度汚染されてしまい手洗いの意味がありません。蓋を手で開ける必要のないペダル式のゴミ箱にするように改善指導を行いましたが、マグネットでゴミ袋を壁に取り付ければゴミ箱も必要無くなります。

5.まとめ

 2023年5月より、新型コロナウイルス感染症が5類になりました。弊社でも、それまで控えていた取引先への工場訪問が増えています。訪問した工場では、経営層と製造社員や品質管理部門との温度差が見受けられるケースも見られました。例えば、経営層は弊社からの指摘事項に対して何でもやりますという姿勢ですが、製造責任者に確認すると、指摘事項の対応は現実的には難しいという答えが返ってくることもあります。逆に経営層の意識は衛生管理をそれほど重要と考えておらず、目先の売り上げの方が大切であり、衛生管理に対してコストをかける必要はないという認識の場合もありました。対して製造現場は、衛生管理への危機感から食品の安全への意識を高く持っていました。後者の場合、経営層が衛生管理に目を向けず、食品の安全への意識が不足していることが本質的な課題です。企業は売上げによって利益を上げて、人を雇用して製造しています。企業の食品安全は、利益の中から経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を投入し成り立っています。顧客へ安心安全な商品をお届けするために衛生管理は必須です。弊社としても、原材料や製品の安全性に不安がある商品には顧客に対して良い価値を見出せないと思います。

 衛生管理は、組織づくりであり、人づくりです。経営層の方々にはまず、食品安全が第一であることを理解していただき「食べた人すべてを笑顔にする」安全な製品づくりをサポートしてまいりたいと思います。今、品質保証の担当者として、HACCPや一般衛生管理を現場の作業者レベルで実践できるように、NPO法人食品安全ネットワークが提唱する「食品衛生7S」に興味を持っています。食品衛生7Sは、「整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌・躾・清潔の7つのS」を食品工場の製造現場で実践する活動です。普通の5S活動では効率が目的となっていますが、食品衛生7Sの目的は、「清潔」であり食中毒の発生を予防する「微生物レベルの清潔さを目的」としています。食品衛生7Sの実践活動は、一般衛生管理を構築・運営する土台となり、HACCPシステムの運用を効果的に進めることができます。3) 弊社としても製造現場での「食品衛生7S」が運用できる仕組みをお伝えできるように取り組みしています。ご期待ください。

謝辞

 本原稿に際して、ご指導を頂きました名城大学農学部応用生物化学科食品機能学研究室 教授 林利哉氏、株式会社食の安全戦略研究所 代表取締役 奥田貢司氏、大阪公立大学大学院工学研究科 客員教授 米虫節夫氏に感謝申しあげます。

参考資料
3)㈱食の安全戦略研究所 代表取締役 奥田貢司:講演資料 食品製造現場を清潔にする基本的な一般衛生管理 

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この記事を書いた方

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清田産業は、「食」の総合プロデューサーとして、「食」の可能性を広げ、人々の生活を豊かにする提案を続けていきます。
ひとり一人が持つ個性や魅力を原点に、世の中にいかに笑顔を増やしていくかを働く仲間やお取引先と一緒に考え、「おいしい」をプロデュースしてまいります。

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