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中国の薬食材

漢方薬になる主な植物

太木光一
食品評論家 太木光一

2022年07月27日

中国の薬食材

 漢方薬という言葉を聞いたことがあるでしょう。薬効のある植物や動物、鉱物などから作られた生薬(しょうやく)のことで、その種類は200を超えます。今回は中国の代表的な漢方薬になる優れた食材を紹介します。

中国の薬文化

 中国には薬補不如食補(ヤオブーフルチョンチー)という言葉がある。薬は良い食事には及ばないの意味で、より良い食養生をすすめている。中国の医学も病より防病に特徴があるといえよう。

 中国では日本人のように薬は飲まない。食養食医にかなった食事を楽しくとるのを第一としている。薬より食養生をすすめている。この目的とするのは有病治病、無病強身、延年益寿にあり、長寿と結びつけるのがねらい。

主な漢方薬剤

 広い中国でとれる漢方薬材は三千種強。産地を重要視し、産地によって薬効が異なる。薬膳料理に使用される食材は多いが、容易に入手、価格も安く薬効の高いものを紹介する。

何首鳥(カシュウ・つるどくだみ)

 産地は河南湖北貴州四川など。長寿を全うした何首鳥の名前がつけられている。タデ科のソル性多年草。

 江戸享保年間に薬草として伝来。朝鮮人参より薬効が高いと言われ珍重されていた。長寿回春薬として知られ、強壮・疲労回復、老人性退化の若返り、造血、常習便秘などに効果が期待される。中薬大辞典にみる薬効は下記のようなものがある。

1 降血脂作用
2 血糖上昇の抑制
3 抗菌作用
4 腸管の蠕動の促進 など

  利用法として何首烏何首鳥湯(スープ)、何首烏酒など。特に酒は東洋の秘酒の貫禄充分。数多い本草酒の中でトップクラスである。

当帰(トウキ)

 産地は四川、雲南、陕西、貴州など。セリ科の多年草で女性にとっては貴重な妙薬。産後血の道の病にかかっても当帰を服用すると血が帰って病気が治るので名付けられた。

 根は生薬として重要、果実・茎葉も利用。茎葉は俗湯剤に、また当帰酒としてストレスやカクテルに向く。薬膳用として当帰粥、当帰煮鶏卵、当帰焼羊肉、当帰生姜羊肉湯、当帰烏鶏湯ほかに。

 薬効は女性のみでなく老人にとっても効果的。身体を温め血行をよくし鎮静・便秘肩こりなどに。また赤痢菌などの細菌にも強く、効用大である。

冬虫夏草(トウチュウカソウ)

 四川、雲南、貴州省などの特産品。昆虫や菌タンパク質に寄生するキノコの一種である。高級食材として不老長寿の秘薬とも言われる。益精気、止咳、痰、虚喀血、酸痛などに効果大。特に冬虫夏草酒は不老長寿、強精、貧血、腰痛の痛み止めによく効く。盃一杯金一杯と言われるほどの名酒である。

 食膳食法として虫草老鴨虫草蒸鴨、虫草鶏虫草嫩猪などで四川料理の名菜とよばれている。

淫羊(インヨウカク)

 メギ科の多年草イカリソウの全草を指す。浙江安徽江西湖北四川福建広東などが主産地。薬効として記憶力低下・精力減退・益精頻尿防止などに効く。特に血圧を下げ利尿促進の効果大である。若葉および花を食用とし山菜として利用。辛子和え・ゴマ和えを始め油炒めにも向く。天ぷらの場合、生のまま葉の片面に衣をつけて低温でゆっくり揚げる。花の二杯酢もうまい。漢方薬として5〜6月に採取して陰干しに。薬膳利用として淫羊酒などに。常用すれば強精効果も期待される。

枸杞(クコ)

 中国で広く産出されるが、薬効の高いのは寧夏(ネイカ)産のみで漢方薬剤として取り扱われる。枸杞はすべての部位が利用され、葉と茎はおひたしや和え物に。また梅杞ご飯や天ぷらにもされる。根は地骨皮(シコンビ)とよび、血圧降下・血糖降下や解熱に効く。枸杞の実は薬膳料理の人気者で枸杞肉系、枸杞蒸鶏、枸杞粥、枸杞酒と多彩である。常用すると腎臓を強め、増血作用がある。糖尿病にも良い。

 長期愛用すると、抗癌保肝、養血明目、治虚安心、延年益寿の効が期待される。遅効性で、ある期間愛用し始めて効果が期待される。

山楂(サンザシ)

 ハラ科の落葉低木で、花も実も美しい。江蘇、湖南、河南、四川、貴州、福建産などのものが良品。山麓は貴重な漢方薬であり同時に家庭薬でもある。甘酸っぱくてしかも温性。食欲を増進させ、肉食の消化をよくする。特に消化不良や高血圧、二日酔いには効果的である。

 山楂の酸はクエン酸で梅の酸の薬効によく似ている。漢方では腰痛、消化助剤、産後の腹痛によく効く。また食品利用にも活躍。酸梅湯は山楂のジュースであり、山楂醤はジャムである。菓子やゼリーにも利用されている。

槐(エンジュ)

 マメ科の落葉高木で、河北、山東、河南、江蘇産が高品質で、蕾に多くのルチンが含まれている。ルチンは血圧降下作用があり、血管を強くし動脈硬化を予防する。また健胃整腸や疲労回復にも効果的。成分としてルチン、ロビニンが多く鎮静、補血、利尿、美容によく、抗炎作用、抗潰瘍作用、血脂質作用などもみられる。

杜仲(トチュウ)

 産地は四川、陝西、湖北、河南、雲南省産が良質。漢方にみる杜仲は樹皮のみを指し、葉は重要視しない。樹皮は樹齢15〜20年以上のものを使用。清明節(4月5月)〜夏至(6月下旬)の間のものから剥ぎ取り乾燥、味は甘く、温性、薬効は降圧作用利尿作用・鎮静・鎮痛などに効果大。味がよく飲み易い。

この記事を書いた方

太木光一

この記事を書いた方

食品評論家太木光一

1947年早稲田大学商学部卒業。同年昭和産業に入社し、一貫して調査業務に携わる。調査部長を経て1979年に退社するが、在社当時から食品と食品産業について新聞・雑誌に健筆をふるい、食品産業評論家として活躍する。通産省中小企業振興事業団の需要動向委員のほか多くの政府委員を歴任するとともに食品メーカー、問屋、高級食料・食品店の顧問にも就いていた。海外視察は280回以上に上る。主な著書は「日本の食品工業」(共著)、「新・一般食品入門」、「惣菜食品の強化技術」、「食材の基礎知識」など多数。