清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

甘い味の話(その3)

甘味成分の加工用途

飯沼宗和
岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授 飯沼宗和

2008年11月01日

甘い味の話(その3)

 私たちの身近なところにも甘味成分は使用されており、決して甘さだけを求めているわけではありません。今回は甘味成分の加工について話します。

ソルビトール

 以前、ウシの水晶体由来のアルドース還元酵素を用い、これを阻害する活性をフラボノイドに求めて研究したことがあります。この酵素はブドウ糖からソルビトール(糖アルコール)を合成し、水晶体、網膜、末梢神経、腎臓などに蓄積し、浸透圧の上昇や水分貯留を招き細胞障害を来たします。

 糖尿病が原因の失明、神経障害、腎症、血管疾患などの合併症はブトウ糖からソルビトールとなる反応の結果起こるのです。活性が期待できるフラボノイドを特定しましたが、その後研究は中断しています。

 その時、ソルビトールに何か悪い印象を受けました。その後、ブトウ糖のアルデヒド基を還元して得られる糖、グルシトールの名称があることや別名ソルビットと呼ばれ、ナナカマドの赤い実(学名:ソルブス・アウキュパリア)から初めて単離され、ナナカマドの学名に因んで命名されたことを知りました。砂糖の約60%の甘味度があり、口中では溶ける時に吸熱反応により爽やかな冷感があります。日本薬局方の収載品です。

フジリンゴ

 リンゴ「富士」の芯の回りの半透明部分(俗に蜜)はソルビトールが多く含まれています。富士の成熟の度合いを示すものにもなっていますが、年を越して1月になると、蜜は消失し味も低下してしまいます。

キシリトール

キシリトール入りガムのイメージ

 カバノキからも得られる木材由来の糖、キシロース(キシロは木材の意味、例えばキシロフオーンは木琴)の糖アルコールがキシリトールです。冷涼感があり、後味の切れが早い甘味があります。ショ糖と同程度の甘みがあり、カロリーがおおよそ75%と低く、加熱による甘みの変化はありません。

 非う蝕性甘味料として、チューインガム、デンタルサポートに広く使われています。糖尿病及び糖尿病状態時の水・エネルギー補給の目的で静脈内注射や点滴静注するのに用いられる局方品でもあります。

 ブドウ糖、果糖などとエネルギー源となる他、核酸など体成分の生合成や体内解毒機構に関与する生理的な重要な代謝物です。

トレハロース

トレハロースの化粧品イメージ

 ブトウ糖は注射液の等張化や錠剤等の賦形剤として用いられたり、糖質の補給剤としても使われています。ブトウ糖が2分子結合した二糖類には、結合場所や結合様式の違いにより、セロビオース、ソホロース、ゲンチオビオース、マルトース(麦芽糖)が知られていますが、トレハロースも同じ範蒔に入ります。但し、1,1-グルコシド結合といわれる結合様式や結合場所に特徴があります。ショ糖の約45%の甘味とさっぱりとした上品な甘さがあり、食品や化粧品にも使用されています。

トレハロースの力で蘇るイワヒバ

イワヒバ

 以前シダ植物イワヒバ(別名イワマツ)に興味があり集めたことがありました。春先の新緑は実に鮮やかですが、茎に斑入りのあるものや枝分かれに特徴のある品種があり、古典園芸植物とも言われています。

 知り合いはイワヒバに熱をあげ遠く足を伸ばし、岩場に自生するものを集め、持ち帰りかなりの品種を収集したと聞いています。畑に柵を張り、大切に育てていましたが、突然亡くなってしまいました。その畑もやがて売られて、今では駐車場になってしまいましたが、精出して集められたイワヒバの運命を気にしている所です。

 夏になって十分に水をもらえない日中や真冬で極端に寒い朝、イワヒバは容易に枯れかけた様相を呈します。乾眠(クリプトビオーシス)という現象だそうです。復活草の名前があるくらいですから、再び水が与えられたり、寒さがやわらぎますと元の姿に戻ります。乾眠する場合、イワヒバはブトウ糖をトレハロースに変えているそうです。

この記事を書いた方

飯沼宗和

この記事を書いた方

岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授飯沼宗和

1947年松本市生まれ。薬学博士。1974年岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了。1980年薬学博士取得(岐阜薬科大学)。1974年岐阜薬科大学助手、2002年教授となり、39年間にわたり専門の生薬学を中心に教育研究に携わる。1998年から4年間岐阜県に出向し、保健環境研究所所長を歴任。研究分野は民族伝承薬物の科学的根拠に基づく医薬品、健康食品、化粧品の研究開発。