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清田ダイアリー KIYOTA DIARY

日本の名産野菜

古くから残る日本特有の野菜8種

太木光一
食品評論家 太木光一

2022年07月01日

日本の名産野菜

 一言にトマトやじゃがいもといっても、その種類は世界中に多くある。品種改良などもされているが、日本特有の野菜も多く存在し、その味を守っている農家があることも事実である。今回は古くから残る日本の野菜を紹介する。

日本に残る名産野菜

 日本ではいま輸入野菜であふれている。輸入野菜なしでは日本の食生活が成り立たない。今後もこの傾向は拡大を続けよう。

 この一方で輸入野菜では代用できない名産野菜も数多くみられる。同じ野菜であっても地域によって全く異なる場合もある。土質・気温・雨量など風土の違いが数多くの名産野菜を産出している。多くの場合、産地名がついて出生を明らかにしている。特別の手厚い保護がなければ消えゆく運命の野菜もある。

 日本各地に残る名産野菜の特性をみる。

民田なす

民田なす

 江戸時代から伝わる伝統なすで産地は山形県鶴岡市民田。最も背丈が低く、最も早生のなす。北限のなすで6月下旬から収穫が始まる。ふっくらとして愛らしい姿で種子が少なく、皮が柔らかで肉質がしまっている。漬物には最適、噛みしめた時の歯触りが優れている。

 民田なすは小さく、一般家庭では20グラム以下の小ナスを利用するが、加工業者の場合はさらに小さな12グラム以下のものを使用。これが民田なすのカラシ漬けとなり、この地方の名物となっている。

温海赤カブ

温海赤カブ

 このカブのとれる温海地方は山形県にあり、新潟県に接した温泉地として有名。中でもカブ栽培の中心地の一霞地方は上流の山峡の小さな村である。

 温海カブは200グラム前後の偏球形で光が当たらない地中の部分が着色する。しかし着色部は外側だけで、二つに割ると中は純白で肉質はよくしまっている。現在では珍しい焼畑農法で栽培される。この焼畑農法は肥料も農薬も不要であるが連作はできない。しかもこの農耕法でないとよい製品はできないという。

 またこのカブは肉質が硬く煮物には不適で酢の物、サラダ、甘酢漬、なますなどに利用すると、しまった甘味のある味となる。

山形青菜

 アブラナ科で蔵主菜ともよばれる。明治後期に中国四川省から導入されたもの。高菜は耐雪性がないため多雪地帯の越冬菜として定着。成分に優れカロチン(ビタミンA効力)、B2、C、鉄分、カルシウム、食物繊維を多く含む。11月末になるとどの家庭でも青菜作りが始まり、長い冬に備える。色鮮やかで食べ頃は正月ごろ。歯触りがよく、東京の百貨店やスーパーなどでも高い人気をよぶ。

大浦ゴボウ

 最も歴史の古いゴホウで、10世紀ごろから栽培されている。大浦とは上総国大浦村で、現在の千葉県八日市場大輔をさす。

 大浦コボウは太く短い品種で、根はだいたい太さ30センチ、長さ1メートル、重さ2〜4キロで、別名お化けゴボウ。江戸時代から成田山新勝寺に納められ精進料理に用いられる。現在は契約栽培のみで市場には流通しない。大浦ゴホウは肉質がもろく繊維質が少ないため煮物にすると極めて美味とされ、成田山で大護摩をたくとこの精進料理の接待が受けられる。大浦ゴボウはこの保護がなければ消える運命の野菜と言えよう。

守口大根

守口大根

 日本で特に発達した野菜。品種が多く、東京の練馬・愛知の宮重・京都の聖護院神奈川の三浦・鹿児島の桜島大根などそれぞれに特徴があり、利用法も日本が世界一。

 中でも守口大根は長さ110〜170センチにもなる世界最長の大根であるが、直径は僅か2〜3センチにすぎない。江戸時代に河内の守口で多く作られたのでこの名がつけられた。現在は愛知県丹羽郡一帯が主産地。

 守口大根は水分が少なく肉質が緻密で辛味が強く、生食や煮物には向かないが漬物専用である。粕債にされるが、歯触りの良いのが特徴。江戸時代の伝統の味が楽しめる。

野沢菜

 アブラナ科に属するカブの一系統。長野県野沢温泉が発祥の地。天王寺カブを京都から持ち帰り、野沢地区で栽培したのが始まり。煮物用だったが、北信濃の野沢は寒さが強く根の部分が肥大せずに、葉だけが3尺(1メートル)以上にも成長した。この葉を漬け菜として利用したのが始まり。

 初冬のころ、寒くて手がかじかまないように葉を温泉で洗う。湯で虫が葉から離れ、葉がしんなりしてよく漬かるため一石三鳥の効果がある。

 野沢菜を大樽に漬けた後、味が良くなるのは翌年2〜3月で、ベッコウ色に変わったものは独特の風味がありファンが多い。

日野菜

日野菜

 滋賀県日野町を中心に栽培される。戦国時代から栽培されておりこの歴史は古い。やや辛味と酸味があり、爽やかな風味がある。塩漬・糖漬・酢煮などに向く。特に桜漬は名産である。ゴマや醤油をかけたり、茶漬などにも向く。彩りがよく、歯触りがよいため愛好者も多く高級漬物とされる。

着色カブ

 着色カブは赤カブともよばれ日野菜、緋のカ、飛騨ベニカブ、津田カブなど種類が多い。共通してカブの表皮に含まれているアントシアニンの作用により美しい色の赤カブとなり、用途は漬物が主力。

さいごに

 日本の名産野菜は味・色ともに抜群である。

この記事を書いた方

太木光一

この記事を書いた方

食品評論家太木光一

1947年早稲田大学商学部卒業。同年昭和産業に入社し、一貫して調査業務に携わる。調査部長を経て1979年に退社するが、在社当時から食品と食品産業について新聞・雑誌に健筆をふるい、食品産業評論家として活躍する。通産省中小企業振興事業団の需要動向委員のほか多くの政府委員を歴任するとともに食品メーカー、問屋、高級食料・食品店の顧問にも就いていた。海外視察は280回以上に上る。主な著書は「日本の食品工業」(共著)、「新・一般食品入門」、「惣菜食品の強化技術」、「食材の基礎知識」など多数。

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