清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

食品中に含まれる化学物質の意義とその誤解4

コロナと免疫

長村洋一
一般社団法人日本食品安全協会理事長 長村洋一

2021年01月01日

食品中に含まれる化学物質の意義とその誤解4

 本年の年初には想像もつかないような騒ぎを起こしたコロナ禍は第3波という不気味な様相を呈している中早くも師走を迎えこの騒動は明らかに来年に持ち越されて行く。太古から細菌、ウイルス等による大量な死者を出す疫病は何回も流行しておりその度に人類を恐怖の底に落としてきた。コロナが世界中を大変な状況に追い込んでいる最も大きな原因は確実に効果のある治療薬がないからである。
 今回はコロナの治療薬から見える、人の免疫力を解説する。

コロナの治療薬

薬と注射とカルテ

 抗生物質が出現して結核を始め多くの難治性の感染症が制圧されたが、抗生物質の効果は細菌に対してであって、ウイルスに対しては全く効果がない。その理由は、ウイルスが細菌より単純で生物より無生物に近く、化学的な攻撃ポイントを掴みにくいためにウイルスのみに作用する薬剤の開発が非常に困難であるからである。

 いずれにしてもウイルスに対しては抗生物質のように劇的に効果のある薬剤がないので雁患すると体力のない人は簡単にやられてしまうことになる。

 この特効薬がない、ということが人類を恐怖に陥れ、欧米各国では感染防御のためロックダウンという強烈な手段をとっている。日本でも自粛が経済をどん底にしている。ところがウイルスで発症し、多くの死者を出し、治っても大きな後遺症を残す痘療や小児麻庫は、予防注射という手段によってほぼ完全に防ぐことができる。この予防注射は我々の免疫力を利用したものである。

免疫力とは

 免疫力とは文字通り「疫から免れる」ことで、種々の感染性疾患から逃れる力である。世界が大きな期待を寄せているコロナのワクチンは、小児麻庫や痘療のように免疫力によってコロナに感染しなくする医薬品である。

 ここではこの免疫の機構についての詳細は避けるが、簡単に言えば体内に侵入してきたウイルスや細菌を攻撃して体を守るシステムである。細菌やウイルスは手を変え、品を変えて我々の体を攻撃してくるので、免疫システムも非常に複雑な機構でその防御に当たっている。言ってみれば我々の体の外敵からの防衛軍隊である。

免疫は暴走が怖い

病院のベッド

 20世紀の初頭にも1918年から約3年にわたりスペイン風邪という名称のインフルエンザが世界に蔓延し、非常に多くの感染者と死者を出した。日本でも当時の人口5500万人に対し約2380万人(人口比:約43%)が感染、約39万人が死亡したと報告されている。ところが今回のコロナによる死者の年齢層は、スペイン風邪の死者の年齢層と大きく異なっているのが特徴的である。アメリカの記録によれば、1918年から1919年までのスペイン風邪による死者数の99%は65歳未満で、ほぼ半数が20歳から40歳の間である。65歳未満の死亡率は65歳以上の6倍で、1920年になると65歳未満の死亡率は65歳以上の半分まで減少したが、それでも死者数の92%が65歳未満であった。日本の記録でも同様の傾向が見られた。

(Wikipediaより)

 コロナでは高齢者および基礎疾患のある方の多くが犠牲者となっているが、その原因はいわゆる体力がない、という言葉で納得できる。では同じようなインフルエンザであるスペイン風邪では高齢者より体力のある若年者が何故多く死んだのだろうか。この原因が免疫のシステムの暴走である。

 免疫は我々の体を守る軍隊であるが、軍が暴走すると我々の体を守るどころか、その破壊者となる。いわゆるアレルギー反応も免疫の暴走であるが、スペイン風邪の際に若年者が多く死んだのは、若年者が高齢者に比較して免疫システムが非常に強いので、その強さが裏目に出て、その暴走により自身の体をひどく攻撃したからであった。

 しかしこのような暴走がなければ免疫力は、我々の体に病原菌に対する抵抗力を与えてくれる非常に有用な能力である。病気に擢患し極端に体力が衰弱してくると、我々の免疫力も低下してしまう。そんな状態になると、健常人には何でもないような菌によって重篤な肺炎などを起こし死に至ることも多い。

免疫力を高める最も重要な要素の一つは食事である

健康的な和食

 医学の祖とされるヒポクラテスは「治療の原理は本来人間に備わっている自然力の働きを助けることであり、特に食事に注意すること」と述べ、さらに「汝の食事を薬とせよ、また汝の薬は食事とせよ」と言っている。

 ここで「本来人間に備わっている自然力の働き」というのはまさに免疫力のことである。すなわち免疫力を食事によって付けなさい、というのがヒポクラテスの提言であるが、この言葉は現代においても全くその通りである。

 栄養による病気治療のチーム医療NSTを日本で最初に立ち上げた東口先生は「がん患者はがんで死んでいない、栄養状態が悪くて死んでいる」と言い切って緩和ケアにおいて画期的な成果を上げている。医師ですらあまりにも当たり前と考えているため「栄養の大切さ」を知っていても実行に移さない。

 がん患者のがんを薬で叩こうとしても体力がなければ結局はそのがんを叩く薬によって患者がダメになることを東口先生は強く主張している。日本人の平均寿命は世界の超トップクラスであるが、この長寿を支えている大きな因子の一つが日本中の人々がまともな食事を日々摂取できる豊かな食生活である。

 前述のように免疫は非常に複雑なシステムがバランスよく働いて初めて機能する。したがってこの免疫の暴走は複雑な仕組みのバランスが破壊されることから発生するので、免疫に関与する一つの成分が増加または減少することがそのまま免疫力に直結しない。食事によって得られる多くの栄養素が多種多様な形で免疫機能に関与しているのでバランスの良い食生活は必須である。

免疫力を高めることが明らかになりつつある食品中の素材

様々な食材

 適切な食生活が正常な免疫機能の維持に必要であることは明らかであるが、それに関与する栄養素の研究が近年非常に多くのデータを出してきている。「風邪にはビタミンC」はノーベル賞学者のライナスポーリングが言い出したことであるが、世界的に権威あるコクランレビューがこの説を支持している。

 そのレビューの中には「極度の肉体的ストレスを短期間受けた人(マラソン走者、スキーヤーを含む)598人が参加した5つの試験では、ビタミンCによって風邪のリスクが半分に低下した。」という記述もある。

 ビタミンCに限らず栄養素としてはビタミンA、D、B6そして亜鉛、セレン、鉄、銅などにかなりしっかりした論文が非常に多く存在する。中でも最近特に文献が多いのがビタミンDである。このビタミンは免疫担当細胞マクロファージの増殖やカテリシジンとデイフェンシンなどの抗菌ペプチドを増加させ、怖い免疫の暴走サイトカインストームを抑制すると報告されている。

 そして免疫機能の大半を担っている臓器は腸管であるので、この腸管の免疫機能を正しくするためにお腹の調子を整えることは、そのまま免疫機能の活性化につながる。その機能を整える因子として乳酸菌が最近非常に有望視され、プラズマサイトイド樹状細胞を増殖するプラズマ乳酸菌が免疫機能を高める、という表示で機能性表示食品として登録された。

まとめ

 免疫機能を高めるこうした食品中の成分や菌株が多く報告されているが、免疫機能を十分発揮させるためには免疫反応にあずかる細胞を始め、多くの因子を生成しなければならない。その素材はまさに正しい食事に由来するので、まずはしっかりした食生活の中にこうした機能性の因子を取りいれて行くことが重要である。

この記事を書いた方

長村洋一

この記事を書いた方

一般社団法人日本食品安全協会理事長長村洋一

藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)において臨床検査技師教育を平成17年まで行い、その後鈴鹿医療科学大学の副学長を令和3年まで務めた。その間に食の健康に関する様々な問題に取り組み、正しい食の安全・安心情報が伝わる社会の実現を目指し日本食品安全協会を立ち上げ健康食品管理士/食の安全管理士の育成を行っている。

http://www.ffcci.jp/