PMS（月経前症候群）の悩みに寄り添う

　特に目立つのは、生理期間やPMS（月経前症候群）の悩みに寄り添う商品です。
　eminess（エミネス、東京・渋谷）は、毛髪検査キットまたはオンライン問診票の結果を基に、一人ひとりの女性に必要な栄養素が詰まったビーガンスイーツを、毎月、生理周期に合わせて届けるサービス「MOON TREATS」を提供しています。自分へのご褒美（TREATS）であるスイーツに、女性の心と身体が喜ぶ栄養素を付与することで、ほとんどの女性が悩んでいる ”月経前症候群” を緩和させ、生理前を ”憂鬱な期間” ではなく、 ”ご機嫌な期間” に変えて欲しいといいます。

　生理中の悩みのひとつである ”眠気” に着目して開発された商品もあります。Utress（ユトレス、東京・渋谷）が開発した、デカフェなのにカフェイン効果が期待できるコーヒー「Decaf Coffee」です。眠気覚ましにはカフェインというイメージがあるものの、カフェインは生理痛を促すと言われていて、妊婦や授乳中の女性もカフェインを摂らない方がよいとされています。そこでカフェインの代わりに、米国で特許を取得している新素材 ”マンゴー葉乾燥エキス” を配合してデカフェコーヒーを作りました。 ”マンゴー葉乾燥エキス” は、ノンカフェインながら、集中力向上などカフェインと同様の効果が確認されている素材です。

　眠気以外にも、生理前後に頭痛や腰痛、疲れ、肌荒れなどの悩みを訴える女性はたくさんいます。アサイーを輸入するフルッタフルッタ（東京・千代田）の調査では、それら不調の原因と考えられる貧血を自覚、対策している女性が少ないことが分かりました。そこで同社は、東京渋谷のJINNAN CAFÉとコラボ。期間限定で、「たべるフェムケアメニュー」を提供しました。最新研究により、アサイーには鉄分が含まれるだけでなく、造血ホルモンを増やす働きがあることが明らかになりつつあるといい、 ”貧血によい食材” としてアサイーに注目。鉄分が多く含まれる赤身肉や魚などと合わせた「アサイーメニュー」6品を用意しました。

　このほか、アサヒグループは徳島大学との共同研究で、乳酸菌の一種「ラクトバチルス・ガセリCP2305株」の摂取が、女性の月経前の憂うつな気分や不安感を改善させることを明らかに。女性の ”生活の質の改善” に貢献できる成果として、今後のさらなる研究が期待されています。

妊活・妊娠中、産前産後の身体と心を整える

　妊活・妊娠中、出産時期の女性にうれしい商品やサービスの展開も積極的に展開されています。
　リボン食品は、フードブランドMinotteから、冷凍パン「ブレッドKuromame Epi」を自社ECサイトで発売しました。妊活に影響するといわれる ”酸化ストレス” に着目し、ビタミンEやアントシアニンなどの抗酸化物質を含む丹波産の黒豆とオリーブオイルを配合。カルシウムやマグネシウムも加え、高タンパク質で食物繊維が豊富なパンに仕上げています。さらに、 ”気･血･水” のバランスが崩れると身体に不調を来たすという東洋医学の考えに基づき、 ”水” の漢方素材を使っています。低糖質なため、血糖を気にする必要がある出産後の女性にもぴったり。生地に混ぜ込んだきな粉の香ばしさと黒豆の甘み、しっとり軟らかな食感が楽しめます。

　妊婦向けには、鳳企業（東京・新宿）から、おいしくて手軽で、産前産後に必要な栄養素をしっかり補える冷凍食品「産前産後特化おにぎり」が発売されています。産前産後のママ40人に行ったアンケート調査により見えてきたのは、 ”時間” ”栄養” ”摂取制限” に対する悩み。それらを、 ”おにぎり” で解決することを目指しています。管理栄養士監修の下、妊娠中、授乳中に必要となる栄養素を補填できるよう設計。おにぎりの種類や冷凍の条件に合う素材を厳選し、添加物は最小限の使用に留め、料理人の手によって一つひとつ丁寧に握っています。電子レンジで温めるだけで食べられるので、つわりの症状がひどく、 ”ご飯を炊く匂い” がつらいときにも利用しやすい商品です。ラインアップは12種類。「6穀ブレンド」のほか、具材を混ぜ込んだ「鰤と大根」「サバトマチーズ」「鮭の韓国風」など、和風、洋風、韓国風の味を揃え、飽きないよう工夫しています。

　心の健康に注目している取り組みもあります。六甲バターは、期間限定の「ニンプバー by MOCKTERIA」をモクテルバー「MOCKTERIA」（兵庫･神戸）にオープンしました。「お酒を飲みたい！」「おいしい食べ物を食べ、気心の知れた仲間とおしゃべりを楽しむ時間や、『サードプレイス』がなくなるのが辛い」といった妊婦さんの声から生まれた、妊婦専用のバーです。旦那さんとの2人の時間や友人とのリフレッシュタイムにぴったりな、非日常的で特別なバー体験を演出。旬の食材を使ったオリジナルモクテルと ”QBB ベビーチーズ” を使ったおつまみセットを提供しました。

更年期障害の不調を改善する

　一方、中年以降、女性の生活の質に影響するのが「更年期障害」です。ほてりやめまい、気分の落ち込みといった不調を訴える女性は少なくありません。原因のひとつが、ホルモンバランスの崩れです。
　そこでピクシェル（東京･品川）は、おしゃれで手軽な薬膳ブランド「hug」を立ち上げ、第1弾商品として、花や果物など100種類以上の原料やブレンドを吟味。漢方のスペシャリストが本格的な健康茶に仕上げた薬膳茶「Herbal Frui-tea 花果茶」の販売を、公式サイトで始めました。東洋医学では ”未病” と定義される、ホルモンバランスの変化によって起こるさまざまな不調に悩む女性の健康を、漢方や薬膳の知恵で支えたいとの想いからスタート。体質や悩みに合わせた薬膳の提供を通じ、セルフケアをサポートします。同ブランドは今後、簡便な薬膳料理キットの販売、漢方理論に基づいた体質診断のほか、漢方や薬膳、セルフケアに関する情報の発信などを予定しているといいます。

　一方、明治は、あらゆる年代やライフステージにおける女性特有の健康課題に対し、 ”食事でサポートする” という新しい選択肢を提供する食品ブランド「明治 フェムニケアフード」を立ち上げました。毎日の生活に手軽に取り入れやすい商品や更年期の女性向け商品の展開に加え、最新フェムテック・フェムケア事情などの情報発信もしていく予定です。

　ヘルスケアブームも相まってフェムテック市場は拡大し、2027年には世界で8兆円規模になるとみられています。日本でもジェンダー平等やダイバーシティに対する意識の高まりから女性特有の悩みへの理解が進み、フェムテック&フェムケアフードは、今後ますます広がりそうです。