清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

食品に確かな裏付け 味覚の可視化が変える “食の未来”

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2016年06月01日

食品に確かな裏付け 味覚の可視化が変える “食の未来”

  “見える化” という言葉が今、食業界において注目を集めるキーワードになっています。従来は人の五感で判断するしかなかった味、香り、食感や、おいしさに対する人体の反応を科学的に分析。数値化することで、求める味を作ったり、おいしさの裏付けをしたりすることが可能になっていて、 “見える化” は、食品のブランド化や商品開発、販売促進に、すでに活用されています。

数値を保証にブランド化

 米を、産地や品種ではなく、味でブランド化する取り組みが注目を集めています。
 農業ベンチャーのUPFARM(アップファーム 東京・港)は、 “米・食味分析鑑定コンクール国際大会” の点数で米の価格を決める “米風土(まいふうど)ブランドプロジェクト” を展開しています。価格設定の基準は、コンクールで審査対象となる “食味値” 。米の味の決め手となるタンパク質やアミロースを機械で計測し、数値化します。100点満点で80点以上を獲得した米だけをUPFARMが点数に応じた価格で農家から買い取り、 “米風土” の通販サイトや百貨店などで販売。小売価格は80点台が1.8kg2000円前後と、高級米の代表銘柄、新潟コシヒカリの2倍以上です。
 人間の舌の機能を忠実に再現した味覚センサーを作り、味を数値化しようという試みも広がっています。
 例えば、和牛肉の熟成効果を測定。肉を冷蔵庫で熟成すると数週間で味が深くなることは知られていましたが、熟成期間とともに徐々にうま味が増え、7週間で20%増になることが判明しました。数値によって、客観的に品質を保証することで、熟成和牛のブランドを確立することができ、高価格帯商品として販売することが可能です。

稲と米

数値を基準にスピーディかつ的確な商品開発

 商品開発に役立つ “見える化” も進んでいます。ターゲットがおいしいと思う味を数値化し、その値に合わせて味作りをすることが可能になっています。
 冷凍餃子のOEM供給を手掛ける信栄食品(長野・松本)は、食品の味を分析する最新装置を導入し、商品開発に生かしています。食品を40℃程度の温度下で、人の口で咀嚼したような状態にし、酸味、苦味、うま味、塩味などを検知する6つのセンサーを使って味を分析します。この装置を使えば、 “女性が好む味” といった漠然とした要望にも対応しやすくなり、商品開発にかかる時間が半分程度に短縮されるうえに、オーダーに対してより的確な商品が開発できると言います。
 味ではなく、人が感動するメカニズムを商品開発に活用する動きもあります。研究しているのは、金沢工業大学の感動デザイン工学研究所。
 ポッカサッポロフード&ビバレッジが昨年リニューアルした炭酸飲料「Ribbonシトロン」は、こことの共同研究で開発した商品です。コンセプトは、 “記憶に残る透明サイダー” 。20代の若者に協力してもらい、試飲後に酸味や甘みなどの感じる度合いを7段階で評価した結果、酸味が記憶に残りやすい要素であると判明。研究成果をもとに甘さの感じ方を抑えた味わいに仕上げ、 “飲んでから1週間経っても記憶に残る” ようにしました。
 一方、大関が開発したのは、1970年代生まれをメインターゲットに想定した日本酒「ワンカップ <オー>」。日本酒の愛飲者が高齢化していることから、ポッカ同様、感動デザイン工学研究所の人が感動するメカニズムを利用して、20~44歳の嗜好性を調査。対象者が、 “アルコール度数が低く、甘い” 酒を日本酒の特徴と見ていることが分かり、商品化に生かしました。

若い女性と炭酸飲料

数値を提示して説得力のある販売促進

 味の構成を数値化することにより、うま味成分が多いなど競合商品に対する優位性を販促に利用する動きもあります。
 明治は「明治北海道十勝スマートチーズ」の販売にあたり、他社製品も含めて味覚データを分析。うま味が他製品より強いことをセンサーで解析し、プロモーションに活用して売り上げを伸ばしました。あるワイン販売のサイトでは、ワインの味の違いをデータ化しチャートで示したところ、表示前の5倍売れたといいます。
 またUCC上島珈琲は今春、食事と相性のいいコーヒーを提案する営業を法人向けに始めました。味覚センサーを使って飲食店で提供するメニューの味を、苦味や渋味、うま味など6項目で数値化。自社の業務用コーヒーの中から最も相性がよい商品を提案し、購入を促します。提案するコーヒーは、メニューと同じような味覚にしたり、不足する部分を補ったり、メニューに応じて切り替えることも可能です。

コーヒーと共に提供された食事

 今後、ますます期待が高まる日本食の輸出に際しても、 “見える化” への期待は大きく、例えば、日本の食は “うま味” に特徴があるが、米国では “甘み” が好まれる傾向があるなど、国による味覚の好みをあらかじめ分析し、商品をカスタマイズして輸出することが可能になります。 “見える化” によって、未来の “食” が、まさに見え始めています。

付加価値の高い
食品・製品を開発します

清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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