清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

買い物難民に寄り添うサービスが充実。ますます激化する小売りの顧客囲い込み

「食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気」

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2017年12月01日

買い物難民に寄り添うサービスが充実。ますます激化する小売りの顧客囲い込み

 近年、高齢化や過疎化、共働き世帯の増加などにより、食品の買い物に“行きたくても行けない”という生活者が増えています。そんな買い物難民に向けた便利なサービスが、充実してきています。

送迎サービス

 スーパー34店を展開するトーホーストアは、山陽タクシーと連携。5000円以上買い物をすると500円分のタクシー補助券を進呈する「お買い物らくらくタクシー便」を、神戸市垂水区の6店舗で始めています。この地域は坂道が多いことから導入したサービスで、顧客からは好評だといいます。一方、生活協同組合コープこうべは一部店舗で、65歳以上の高齢者や妊婦などを対象に、店舗まで無料で送迎する車「買いもん行こカー」の運行実験を実施しています。

買い物を支援する送迎サービスの車

移動販売と宅配サービス

 こうした送迎とは逆に、店舗が顧客の近くに来てくれるサービスも増えています。
 代表的なのは、食品や日用品を満載した車で過疎地や高齢者の多い地域を巡回する移動販売車。全国のスーパー約80社と契約している最大手の「とくし丸」のほか、コンビニ各社やコープなどの小売り大手も自前の移動販売車を走らせています。各社、顧客と密接な関係を築いて売り上げに繋げるため、ただ食品を売るだけでなく、顧客の好みを聞いて衣料品などを揃えたり、高齢世帯の人たちに声をかけて安否を確認する「地域見守りサービス」を行ったり。さらには、デビットカードで決済すると、離れて暮らす家族に安否メールを届けるサービスまで展開しています。
 また北海道のコープさっぽろは、宅配の小型拠点を道内各地に増やしています。商品の鮮度を守るだけでなく、配送時間を短縮することによって利用者とのコミュニケーションをより密にするためです。過疎化が進み独居老人が急増する中、生協の宅配は重要な社会インフラになっていて、配達員との会話を楽しみにしている高齢者の利用も多いといいます。このような活動が奏功し、食品や生活用品だけでなく、共済のような金融商品の販売にも成果を上げています。
 コンビニではセブンイレブンが、高齢化が進行した郊外の団地内において店舗の開設を進めています。居住者に対しては、セブンミールを通じて商品の宅配を行うほか、電球交換や粗大ごみの搬出、水道トラブルへの対処など、困り事を解決するサービスを提供。高齢者の生活を支えています。
 一方、宅配に早くから取り組んでいるネットスーパー各社は、商品の受け取り場所を多様化することで利便性を高めています。東急ストアは、注文した商品をバスターミナルや学童保育施設といったグループの施設内に設置した冷蔵ロッカーで受け取れるサービスを開始。セブンイレブンのセブンミールは、自宅のほか職場や店舗での商品受け取りが可能です。

食料品を販売する移動販売車

買い物代行サービス

 顧客の代わりに買い物をする代行サービスに取り組む企業もあります。
 ダイエーは、顧客の代わりに買い物をしてお宅への配送を専門に担当する”コンシェルジュ”を配置する新サービス「お買物らくらく便」の試験運用を始めました。利用対象者を60歳以上に限定。高齢者に配慮し、カタログによる受注はネットではなく、電話かFAXで受け付けます。受注から梱包、配送までを同じ担当者が行うことで、利用者との個人的な関係を構築し、顧客の囲い込みに繋げるのが狙いです。因みに、配達料は税込み324円で、2000円以上の買い物で無料になり、それとは別に、買い物代行手数料が1回につき216円かかります。
 買い物代行でユニークなシステムとして注目なのが、シンガポール発のベンチャー企業オネストビーが展開しているサービスです。スマホを使ってスーパーや専門店の商品を注文すると、生鮮食品の選び方などの研修を受けた買い物専門の“コンシェルジュ”が直接店舗に足を運び、商品を吟味。それを配達員が最短で1時間以内に届けてくれます。仕事や子育てで忙しい生活者や買い物に出かけるのが困難な高齢者などを利用者として想定していて、全国展開を視野に入れながら、対象地域を徐々に広げる計画です。ネットスーパーと異なり、商品はあくまでも提携しているスーパーや一般の商店から選択しますから、小売店と競合することはありません。

利用者に代行して買い物をする女性

 これらネットスーパーをはじめとする食品宅配サービスは、今後も需要の増加が見込まれることもあり、小売業以外からの参入が相次いでいます。米卸大手の神明が食材宅配会社のショクブンと資本業務提携して参入したほか、ネット通販最大手のアマゾンも生鮮食品の宅配をスタート。さらに、アスクルの個人向けネット通販サービス「ロハコ」もセブン&アイ・ホールディングスと組んで11月から生鮮食品の販売を始めます。業態の垣根を超え、買い物難民を取り込もうとする動きは、今後ますます激化しそうです。

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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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