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清田ダイアリー KIYOTA DIARY

中国の味は八大菜系

中国を代表する八代菜系の紹介

太木光一
食品評論家 太木光一

2023年02月01日

中国の味は八大菜系

 国土の広い中国の味は八大菜系に集約される。四大菜系(山東・江蘇・広東・四川)の呼び名も見られるが十分とは言いにくい。
 この八大菜系は歴史的にも古く、魯菜・川菜・粤菜・閩菜・湘菜・徽菜・浙菜・蘇菜と呼ばれている。料理の種類も多く何れも佳肴・美選である。各地の代表と呼ぶにふさわしい。

①魯菜(山東料理)

 山東料理のことである。この地方は周時代に魯国と呼ばれていた。中国古代文化の発祥地で域内は産物も豊富で、有名な黄河が流れ、水産物にも恵まれている。

 中国北部地域の味(北食)の代表。北京・天津東北各地にも大きな影響を与えた。北京にみる宮廷菜の仿膳にも魯菜の特色がみられる。

 原料を吟味し、外観にも配慮し、料理のバラエティも豊富である。現在利用されている炒(いため)・炸(揚げる)・溜菜(あんかけ)・湯(スープ)ほかは済南の手法で、これらがベースとなって大発展をみせた。

②川菜(四川料理)

 四川省にみる味。四川の古称で天府の国とよばれた。山川錦綉・物産豊富・四季常春と称され、唐・宋時代には李白・杜甫なども長期生活し歌賛している。

 料理の種類も1000種を超え、この名声は世界的。明・清以降、川菜の名声は更に拡大した。また多くの農産物に恵まれ、麻婆豆腐・榨菜関係は全中国に普及した。

 名酒(瀘州老窖/ルージョウラオジャオ・五粮液ほか)・名菜(峨眉茶・文君茶ほか)・生薬(天麻・センキュウ・川貝母ほか)・産物(榨菜・豆鼓・花椒ほか)は全中国に普及し知名度は極めて高い。

③粤菜(広東料理)

 広東料理を指す。この起源は古く紀元前の西漢時代から始まる。広東は夏季が長く、冬季は暖かで平均気温が高い。このため人々は清淡な口味を好む。可食動物や植物なども非常に多い。

 粤人は蛇・猫・猿・狸を四大特産として好み上肴としたといわれる。そして明・清時代には大発展を続け、広東の沿岸地域は中国的餐館のほか、欧米レストランも多くなり、清時代末期には5000軒を越えた。満漢全席のメニューにも入れられている。

④閩菜(福建料理)

 閩とは福建省の別名である。福建料理は福州料理や厦門(アモイ)料理など福建省内の地方料理群を指す。福州料理は閩北・閩東・閩中一帯の味であり、アモイ料理は閩南地域の味である。

 この福建省は台湾海峡を経て台湾と接しているが、面積的にみても全台湾の約2倍と広い。そして海産品が多く、海鮮料理にすぐれている。

 特に福建小吃(簡単な食事)は有名で、安価・手軽・美味で知られている。数例をあげるとちまき・中華粥・煎餅(ジエンビン)ほかと多い。アモイも同様で麺粉類がうまい。台湾もこの影響が大である。

⑤湘菜(湖南料理)

 湘とは湖南省の略称で、中国のほぼ中央部にある。南は広東省と広西チワン族自治区に接し、北が湖北省、東に江西省。長沙が首都である。

 地勢は比較的低く、気温はやや高い。このため省民は辣椒(唐辛子)が大好物。「麻辣」といわれる花椒の痺れる辛さが特徴の四川料理に対し、発酵食品を多く使った酸っぱ辛い「酸辣」と青唐辛子を使った爽やかな「鮮辣」の辛さが特徴的。

 中国の淡水湖としては2番目に大きい洞庭湖があり、中国中央部の大動脈となっている。産物として、米・綿・茶・生系・そして蓮根が名産。米粉(ビーフン)や蓮の実を使った料理がみられる。

 農産物として名茶がよくとれ、君山銀針茶・古丈毛尖茶・碣滩茶・高橋銀峰茶などが有名。北岸の岳陽市は景勝地として知られている。

⑥徽菜(安徽料理)

 名菜の多い州として有名。南京を有する江蘇省、洛陽を有する河南省に接する内陸部の省で省都は合肥。徽州菜として桃花桂・徽州円子・菊花冬箏ほか。沿江菜として汁錦虾球・風胎魚翅ほか。沿淮菜として四季豆腐・叉烤鴨ほか。

 更に名点・名小吃が多く、紅毛水餃・蟹黃湯包ほか20種を超える。また名酒も多く古井貢酒・太白酒・桃花潬酒など日本でも楽しむ事が出来る。

 安徽省は肥沃な地として知られ、果物では石榴(ザクロ)・桜桃・枇杷・雪梨・金柑などが豊産。漢方薬剤の天麻・茯苓・白芍・貢菊ほかの主産地として有名。

⑦浙菜(浙江料理)

浙江省は東シナ海に面し、北に上海市、西に安徽省、南に福建省と接する。省都は杭州。地理的条件に恵まれ、上質で新鮮な山海の食材が手に入りやすく、素材を活かした多彩な調理法と鮮やかな盛り付けが特徴。浙江省の代表的な都市の名を冠する4つの料理(杭州菜、寧波菜、紹興菜、温州菜)の総称。

 西湖酢魚(魚の甘酢あんかけ)、東坡肉(豚の角煮。トンポーロー)、龍井蝦仁(エビの龍井茶炒め)などが有名。

⑧蘇菜(江蘇料理)

 江蘇料理は淮揚菜、金陵菜、徐海菜、蘇州料理を含む蘇錫菜の4つの地方料理によって構成される。長江(揚子江)南岸の江南地方は「魚米の郷」とされ、川源肥美・湖河密布で遊楽の地とされている。「上有天堂、下有蘇杭」の言葉にみる如く、中国の文化地域で、風光明媚、美味佳肴に恵まれている。 

特に蘇州は清朝の乾隆帝が南巡し料理を賞味したのは有名で、乾隆帝もその味を絶賛したという。松鼠桂魚は丸揚げした魚に甘酢あんかけをかけた有名菜。隣接する杭州も浙菜(浙江料理)として名品が非常に多く、現在でも訪問者に高い人気となる。

まとめ

 以上の八大菜系は歴史的に由緒があり世界に冠たるものであるが、続く北京菜(宮廷菜)・素菜(精進菜)も高人気料理とよぶ事が出来よう。

この記事を書いた方

太木光一

この記事を書いた方

食品評論家太木光一

1947年早稲田大学商学部卒業。同年昭和産業に入社し、一貫して調査業務に携わる。調査部長を経て1979年に退社するが、在社当時から食品と食品産業について新聞・雑誌に健筆をふるい、食品産業評論家として活躍する。通産省中小企業振興事業団の需要動向委員のほか多くの政府委員を歴任するとともに食品メーカー、問屋、高級食料・食品店の顧問にも就いていた。海外視察は280回以上に上る。主な著書は「日本の食品工業」(共著)、「新・一般食品入門」、「惣菜食品の強化技術」、「食材の基礎知識」など多数。

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