清田ダイアリー KIYOTA DIARY
酔わないけど飲んだ気分になれる?「オルタナティブアルコール」
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2019年06月01日
冷たい飲み物がおいしくなる季節。特にお酒好きには、冷えたビールやハイボール、シャンパーニュといった泡のお酒がたまりません。一方、若者を中心にお酒を敬遠する傾向も顕著です。そんなノンアル派に今年流行りそうなのが、「オルタナティブアルコール」です。
ヘルシー志向を追い風に世界的トレンドに
「オルタナティブ」とは、英語の「二者択一」という意味から転じ、 ”現在あるものの代わりに選び得る新しい選択肢、代替案のこと(日本大百科全集)” です。これまで、お酒が飲めない時に代わりに飲むものと思われてきたノンアルコール飲料。それが最近、「オルタナティブアルコール」と呼ばれるノンアル飲料が登場し、そのイメージを塗り替えようとしています。
ビールの消費量が多いドイツやベトナム、酒好きの印象が強いロシアでも、ヘルシー志向を追い風に、オルタナティブアルコール市場が活気づいていて、この流れは世界的トレンドと言えます。
”シラフなのにアガる” が魅力
オルタナティブアルコールは、従来のノンアル飲料と比べ、より酒に近いパンチのある味が特徴です。健康のために禁酒しようという動きが強まる海外で人気に火が付き、最新のトレンドとして日本に紹介されると、 ”新しくてかっこいい飲み物” と受け取られて注目されるようになりました。
近年増えている ”お酒は苦手だが皆で盛り上がるのは好き” という若者向けに、カフェインやマカを配合した ”シラフなのにアガる” と謳うノンアルパーティドリンクなども発売され、話題を集めています。因みに米国では、「カンナビジオール(CBD)」が外食業界で注目されています。CBDは大麻や麻に含まれる成分ですが、陶酔性はなく、免疫調整や感情抑制といった身体機能を活性化させる働きがあるとされています。リラックス効果があるため、CBDを入れたノンアルコールカクテルを提供する店が人気になっています。
本物のお酒に近い味を実現
オルタナティブアルコール人気の盛り上がりを受け、メーカー各社は、ビールのようなのど越しと香ばしい風味が楽しめるスパークリングティーや、ワインを思わせる渋味が残るのが特徴のデザートワイン風飲料など、さまざまな商品を開発。アルコールは飲めないがジュースでは場にそぐわない、食事に合わないなどの悩みを抱えていた生活者にも歓迎されています。
飲食店で導入が進む「モクテル」
飲食店では、オルタナティブアルコールとして、ノンアルコールカクテル「モクテル」を扱う店が目立つようになっています。「モクテル」とは、似せた、真似たという意味の「mock(モック)」と「cocktail(カクテル)」を組み合わせた造語です。
カフェレストラン・サイゼリヤは、ドリンクバーでモクテルを提案しています。ソフトドリンクをトニックウオーターや炭酸水で割って備え付けのレモンシロップを加えるなど、自分好みにアレンジする楽しみ方をメニューに掲載。運転をしなくてはいけないお客様にも好評だそうです。
モクテルを、飲食店に積極的に紹介しているのは、コカ・コーラボトラーズジャパンです。昨春から、自社商品を混ぜて作るモクテルを飲食店に提案していて、昨年10月末時点で約2万店の導入に成功しています。飲食店からは ”新しくメニューを増やすのはコストがかかって大変。既に仕入れているソフトドリンクで簡単にできるのはうれしい” と歓迎されているといいます。加えて、人件費などの運営コストが膨らむ中、飲食店にとってモクテルは、1杯当たりの利益率を高められるというメリットがあり、かつ、アルコールを飲まない人の集客にも繋がっています。
ノンアルビール飲料の樽詰めも登場
一方、サントリービールは、6/25、国内大手ビールメーカーで初めて樽詰めのノンアルコールビールテイスト飲料 ”オールフリー樽詰” を、飲食店限定で発売する計画です。これに先立ち、3/28にオープンした「串カツ田中」の次世代型ロードサイドモデル店「前橋三俣店」で、既に提供を始めています。ロードサイドで展開していくにあたり、アルコールを飲むことができない人にも‟酒場”の楽しさや雰囲気を味わってもらいたいという串カツ田中の要望で、先行販売が決まったそうです。
時代の変化に合わせ、味わいや見た目は進化しているものの、オルタナティブアルコールもモクテルも、昔からあるノンアル飲料やノンアルカクテルの一種であることに違いはありません。マシュマロとギモーブと呼び、ジャムとコンフィチュールと呼ぶことで、同じものなのにおしゃれ感が出てブームになるのと似ています。新たなネーミングによってイメージが刷新され、新たな需要が創出された好例と言えそうです。
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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。
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この記事を書いた方
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株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/