清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

PB商品の販売拡大

アメリカにおける食品の傾向

吉田隆夫
JTCインターナショナル社長 吉田隆夫

2024年02月15日

PB商品の販売拡大

 コロナのパンデミックも収束し、食品市場は次第に回復の傾向を示している。しかしながら、パンデミックの後半から起こったインフレーションは回復しつつある食品市場に異なった圧力をかけており、消費者の行動も変わりつつある。
 今回はプライベートラベル商品(日本ではプライベートブランド商品と呼ばれることが多い。以下PB商品)の動向と、アメリカの主流なスーパーマーケットでのPB商品を紹介する。

消費者動向の変化とPB商品

 消費者はスーパーマーケットでの買い物をする際に、買う品数を減らしており、コスパのいい商品、スーパーが提供する個人に対するディスカウント、メンバーでのディスカウントの利用、セール商品の購入、PB商品の購入など、できるだけインフレーションの影響を少なくしようとする買い方をしている。

 また、経済的に裕福な家庭でもスペシャリティーショップから普通のスーパーマーケットでの買い物を増やしている。中でも各店舗のPB商品はナショナルブランドに比べて売り上げが伸びている。

 プライベートラベル製造者協会(PLMA)と調査会社Circana社(IRIとNPDが統合した新会社)によると、2023年は最初の6か月間でのPB商品の売上額は18%も伸びており、前年からの12か月間では8.2%伸びている。一方、ナショナルブランド商品は12か月間で5.1%しか伸びていない。特に飲料では19%の伸びで、一般食品では16%、冷蔵食品で16%の伸びである。

 売上額ではPB商品が伸びていることが分かるが、売上単位量でもナショナルブランドが3.4%落ち込んでいるのに対し、PB商品は0.5%しか落ち込んでいない。つまり、消費者はPB商品をインフレーションへの対応策として、ナショナルブランドより多く買っているのである。Circana社は、今後もインフレーションの継続、リセッションへの心配から個人の経済的状況などが改善しないとみられており、この傾向は続くとみている。

アメリカのスーパーの様子

 PB商品というと、10年以上前はナショナルブランド商品やプレミアムブランド商品に対して、安いがその品質は劣るというのが普通であった。ジェネリック商品あるいはホワイト商品とも呼ばれ、主に店名だけが入った簡素なデザインの包装ラベルで販売されていた。PB商品は、収入の少ない人達を中心に購入される商品であった。

 しかし、現在ではあらゆる商品にPB商品が販売され、最近ではすっかりPB商品のイメージが変わってきている。消費者の低価格で高品質な商品を求める声が高まったことや、経済的に全体の底が上がったこともあり、昔のような低価格で品質が少し落ちるようなものは消費者には受け入れられなくなって来たのである。

 また、それぞれのスーパーマーケットや量販店でのPB商品の戦略は異なっている。ここからは、どのようにアメリカのスーパーマーケットがPB商品の戦略をしているかを紹介する。

KrogerのPB商品

一般PB商品ブランドの”Kroger”

KrogerのPB製品
画像引用元:Kroger公式サイト(https://www.kroger.com/)

 スーパーマーケットの会社で最も大きなKroger社は、一般商品では”Kroger"ブランドとして低価格なPB商品を多く販売している。これらの商品はほとんどがナショナルブランドに競合できる商品かつ、低価格で提供している。

プレミアムPB商品ブランドの”Private Selection”

KrogerのPrivate Selectionブランド製品
画像引用元:Kroger公式サイト(https://www.kroger.com/)

 また、こうした低価格のPB商品に対し、ナショナルブランドに匹敵する品質のプレミアム商品として”Private Selection”のPB商品も出している。このPBブランドの商品の包装には茶色と黒色をベースにした包装デザインを使い、商品の品質の高さを示している。

有機・自然食品のPB商品ブランドの”Simple Truth Organic”と”Simple Truth”

KrogerのSimple Truth Organicブランド製品
画像引用元:Kroger公式サイト(https://www.kroger.com/)

 有機食品には”Simple Truth Organic”ブランド商品(写真:上)、自然食品には”Simple Truth”のPB商品(写真:下)をナショナルブランドよりも安く提供している。このブランドでは最近増えている植物ベースの商品も販売している。

KrogerのEmergeブランド製品
画像引用元:Kroger公式サイト(https://www.kroger.com/)

 中でも植物性肉代替商品には”Emerge”のブランド名をつけダブルブランドで販売している。

ミールのPB商品ブランドの”Home Chef”

KrogerのHome Chefブランド製品
画像引用元:Kroger公式サイト(https://www.kroger.com/)

 ミール商品には、以前ミールキット商品をホームデリバリーしていたHome Chef社を買収し、”Home Chef”のブランドでミールキット商品や、調理済みで加熱して食べるミール商品、エントリー商品などを販売している。

ベーカリーPB商品ブランドの”Bakery Fresh Goodness”

KrogerのBakery Fresh Goodnessブランド製品
画像引用元:Kroger公式サイト(https://www.kroger.com/)

 ベーカリー商品では”Bakery Fresh Goodness”のブランド名で出している。

Kroger傘下のスーパーマーケットのそのほかの商品

 チーズ商品やデリ商品ではニューヨークにあったチーズのブランド”Murry’s”を買収し、このブランド商品に付価値をつけている。

 KrogerのこうしたPB商品のほとんどは、Krogerの自社工場で生産され、Krogerのチェインだけでなく、傘下のQFC、Fred Meyer、Ralphs、King Soopersなどの2,700店以上のスーパーマーケットのチェインで販売されている。

AlbertsonsのPB商品

 Albertsonsは現在2番目に大きな会社で、数年前Safewayを買収し、Safewayが自社工場で製造している。PB商品もAlbertsons、Safeway、および合併後の傘下の2,200店以上のスーパーマーケットの店頭に並べている。合併したこともあり、最近ではSafeway店名の”Safeway”ブランド商品は非常に少なく、低価格商品としては、多くはないが”Value Corner”のブランドも出している。

AlbertsonsのSignature Selectブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

 プレミアム商品で、PB商品として、”Signature Select”、”Signature Farms”、”Signature Cafe”のブランドを持っている。”Signature Select”は一般商品のPB商品で、ほとんどのカテゴリーの商品で棚に並んでいる。

調理済み食品のPB商品ブランドの”Signature Cafe”

AlbertsonsのSignature Cafeブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

 持ち帰ってすぐに食べられる調理済み商品を提供するコーナーを”Signature Cafe”のブランドとし、スープ商品、ロースト・チキン、フライド・チキンなどを販売している。

生鮮食品類のPB商品ブランドの”Signature Farm”

AlbertsonsのSignature Farmブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

 ”Signature Farm”は生鮮野菜、サラダキット、生鮮果物、生鮮肉など生鮮食品と関連食品でのPB商品である。

乳製品類のPB商品ブランドの”Lucerne”

AlbertsonsのLucerneブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

 牛乳、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品では、Lucerneという別の乳業会社を作り、その”Lucerne”ブランドで出している。

自然・有機食品のPB商品の”Open Nature”と”O Organics”

AlbertsonsのOpen Natureブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

 自然食品は”Open Nature”(写真:上)、有機食品では”O Organics”(写真:下)のPB商品を販売している。

AlbertsonsのO Organicsブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

そのほかのPB商品ブランド

 さらに、シーフードとその調理食品では”Waterfront Bistro”(写真:上)、プレミアム・デリ商品では”Primo Taglio”(写真:中)、ソーダ商品では”Soleil”(写真:下)のPB商品がある。ミール商品では”Ready Meals”のブランドコーナーを設けて、そのまま食べられるRTE(レディトゥイート)ミール商品、加熱して食べるミール商品、自分で調理するミール商品など多くの便利なミール商品を出している。

AlbertsonsのWaterfront Bistroブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)
AlbertsonsのPrimo Taglioブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)
AlbertsonsのSoleilブランド製品
画像引用元:Albertsons公式サイト(https://www.albertsons.com/)

 KrogerとAlbertsonsの傘下の店舗では、上で紹介したようなPB商品をすべて置いているわけはなく、それぞれの店舗がナショナルブランドや地方ブランド商品とのバランスを考えて、選択をして店に並べている。この2つのチェインは、他の中小のスーパーマーケットに比べて、非常に多くのPB商品を持っており、店内では一般の消費者にはどれがPB商品かわからないくらいである。また品質も非常によくなっており、ナショナルブランドに十分競合している。

PublixのPB商品

PublixのPublix GreenWiseブランド製品
画像引用元:Publix公式サイト(https://www.publix.com/)

 一方、アメリカ東部で約1,370店舗を経営する全国で10位以内に入っているスーパーマーケットのチェインPublixは、自社工場を持っているが、店名の”Publix”ブランドとプレミアム商品に”Publix Premium”、それに有機食品のPB商品”Publix GreenWise”のブランド商品を出している。KrogerやAlbertsonsとは違い、すべてのPB商品のブランド名に店名を入れている。

 他の小さなチェインのスーパーマーケットでは、PB商品専門に製造する会社がいくつもあり、そこに注文をして自社ブランド商品を作ってもらっている。

Trader Joe’sのPB商品

”Trader Joe’s”のPB製品
画像引用元:Trader Joe’s公式サイト(https://www.traderjoes.com/home)

 PB商品でユニークなのはTrader Joe’sのチェインである。このスーパーマーケットは店の面積は大手のスーパーマーケットの半分以下で、ストリップモールと呼ばれる、道に面したあまり大きくないショッピングセンタ―に店を開き、店内には1つの商品には自社ブランド”Trader Joe’s”と他の地方ブランドあるいは外国ブランドが1つだけである。いわゆるナショナルブランドの商品は販売していない。半分以上が”Trader Joe’s”のブランド商品が棚に並んでいる。

 この会社は、”Trader Joe’s”ブランドの商品をそれぞれどこかの会社に作らせて販売している。価格と品質にはかなり厳しいそうである。他のスーパーマーケットには置いていないようなユニークな商品もある。そのために日本の人達もアメリカに行くと、Trader Joe’sの店に寄ってこの店の商品をお土産に買って帰る人が多い。

WalmartとCostocoのPB商品

 世界最大の量販店のWalmartはグロッサリーでは”Great Value”のPB商品を出している。また、メンバーシップ制のCostcoは”Kirkland”あるいは”Kirkland Signature”のブランドを出している。KirklandはCostco社の第1号店がある町の名前である。

 CostcoはPB商品をPB商品専門のOEM会社ではなく、ナショナルブランドを製造している会社に作らせている商品が多く、そのために品質は非常にいいものが多い。

まとめ

 このように各スーパーマーケットはPB商品を販売して利益を上げようとしている。同時に消費者はインフレーションに対応しようとPB商品で食費を出来るだけ抑えようとしている。

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この記事を書いた方

吉田隆夫

この記事を書いた方

JTCインターナショナル社長吉田隆夫

アメリカのフロリダ大学の分子進化研究所で2年間研究、さらにシラキュース大学で後にノーベル賞受賞された根岸英一先生の教室で2年間有機金属化学を研究し、IFF社の研究所で約11年間香料の研究。その後、カーリンフード社(後にブンゲ社)に5年勤務、独立して食品産業のコンサルタントを30年以上続けている。アメリカ食品産業研究会、e-食安全研究会、クリエイティブ食品開発技術者協会を設立し、その活動をしている。

http://www.e-syoku-anzen.com/

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