清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

働き方改革でニーズ高まる「サードプレイス」

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2018年03月01日

働き方改革でニーズ高まる「サードプレイス」

 家や職場以外で心地よく過ごせる第3の場所、「サードプレイス」に注目が集まっています。働き方改革の名の下、退勤時間を早める企業やオフィス外勤務を認める企業が増加するのに伴い、時間をつぶせる場所や帰宅前に心の切り替えをする場所、集中して仕事ができる場所が求められています。

職場と家の間の時間を街で潰す「フラリーマン」

 せっかく退社時間が早くなっても、家に真っ直ぐ帰らない男性が増えています。仕事を終えた後、ひとり公園で酒を飲んだり、映画館やコンビニ、書店で長い時間を潰したりしてから帰宅する。彼らは「フラリーマン」と呼ばれ、NHKの情報番組で特集されるまでになっています。
 大阪のある会社員は、水曜か木曜には飲み屋を3、4軒はしごしてから帰宅します。「単調な毎日から抜け出せる『フラリ』がないと精神的にきつい」といいます。またある独身の男性会社員は、「家に帰っても寝るしかない」と、最近は退社後の時間を公園やカフェで過ごしているといいます。ほかにも、「家族と仲が悪いわけじゃないが、早く帰ると面倒もあるので帰宅は家族が寝静まった頃」と話す男性も。
 残業が減っても給料は増えず、積極的な消費には繋がりにくいようで、早帰りの日は同僚とセブンイレブンのイートイン席でハイボールを作って飲むという人や、居酒屋に行くにしても、つまみを頼み過ぎないよう、飲みに行く前に吉野家で牛丼を食べるという人もいます。また退社後、家電量販店や百貨店に立ち寄って時間を潰す会社員も増えています。
 フラリーマンたちは共通して「帰らないのは妻が嫌いだからではない」と話します。妻や子どものことは愛しているが、夫婦円満のためには帰らない方がいい。多くのフラリーマンはそう信じて街で時間を潰しているようです。

玄関ドア

スナックや百貨店のイートインスペースも

 他人と話すことで癒されたいという人に人気なのが、隣の客と気軽に喋れる酒場やパブです。店のママや客同士で会話が楽しめる良さが見直され、昔ながらのスナックも復権。第三者になら仕事や家庭の愚痴も気兼ねなく話せ、リラックスできるのだといいます。
 また、自分を取り戻せる場所を求めて女性会社員たちが向かうのは、百貨店のイートインスペースです。買い物ついでに立ち寄れ、おしゃれなイメージなのに価格は高過ぎない。家に帰れば妻や母といった役割を担わなければならない女性たちにとって、このスペースがわずかでも自分時間を満喫できる貴重なサードプレイスとなっているようです。

お酒の入ったグラス

仕事場として存在感を高めるコーヒーチェーン

 そしてもうひとつのパターンは、オフィスに代わる仕事場を求めるビジネスパーソンが求めるサードプレイスです。
 オフィス外勤務を認める企業が増加するのに伴い、集中して仕事ができる場所として存在感が高まっているのが、単価が高めのコーヒーチェーンです。
 ドトール・日レスホールディングスが展開する、座り心地のよいイスなどを揃えた喫茶チェーン「星乃珈琲店」では、午後7時ごろ、1人でパソコンを広げるサラリーマンが多く見られるようになったといいます。コーヒーで頭をリフレッシュさせながら、書類などをゆっくり見て仕事をしたい人などの支持を集め経営も好調で、節約志向が強まる中、コーヒーだけは高単価でも売れる現象が起きています。
 100円のコンビニコーヒーもある中、星乃珈琲では1杯600円。それでも、20代の女性会社員は、「場所代としての対価を上乗せすれば妥当な価格」といいます。
  ”コーヒー” は外食で数少ない成長市場。逆風に苦しむ外食業界にとって、サードプレイス化する高価格コーヒー業態は、復活のヒントになるといえそうです。
 因みに、米国スターバックスが創立以来掲げている店舗コンセプトは、そのものずばり「サードプレイス」です。
 ホテル業界では、ヒルトン大阪が昨年3月、こうした層に向けてWi-Fiを整備した「マイプレイス カフェ&バー」をロビーフロアにオープンさせました。

コーヒーショップの看板
コーヒーカップ

 働き方改革が浸透するにつれ、サードプレイスの需要はさらに高まると思われます。どんな場所を ”サードプレイス” とするのかは生活者によってさまざま。新たな居場所として魅力的な提案ができれば、大きな商機に繋がりそうです。

この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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