清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

人手不足で省人化、無人化を模索する食市場

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2018年10月01日

人手不足で省人化、無人化を模索する食市場

 人手不足や人件費の高騰は、食市場共通の課題です。今回は、その対応策として、省人化、無人化が進むスーパーやコンビニ、外食市場についてご紹介しましょう。

セルフレジ化が進むコンビニ

 無人化の代表的な例として、コンビニやスーパーが検討しているセルフレジの導入が挙げられます。ローソンは今春、東京都内の3店舗でスマホアプリを活用したセルフ決済サービス「ローソンスマホペイ」の実験をしました。セルフ決済をすることで人手が要らなくなるばかりか、レジの混雑が緩和され、ピーク時の客数が増加。売り上げが7~8%アップしたといいます。またファミリーマートも経済産業省の要請を受け、お客様が自分で会計する無人レジの実証実験を省内の店舗で実施しました。価格情報などを搭載したICタグを貼り付けた商品を陳列。お客様は、カゴごと機械にかざすだけで会計を終えることができ、販売情報は即時にメーカーや物流業者にも共有されます。実験結果を踏まえ、経済産業省は、2025年までに大手コンビニ全店舗での導入を目指します。ただ、ICタグの生産コストが1枚当たり10円超で、数十円の商品も扱うコンビニでの普及の壁になっています。経済産業省は、技術開発に向けた補助金などを実施し、1円程度にコストを下げたい考えです。ミニストップも同様に、セミセルフレジを本格導入する計画を発表しました。お客様が精算する間に店員が袋詰めをするため、お客様1人のレジ作業にかかる時間を2~3割削減できるといいます。これには、ミニストップの強みであるレジ回りのファストフード、ホットスナックやデザートなどの店内調理に、店員が関われる時間を確保する狙いがあります。
 コンビニの無人化に活用されているのは、レジだけに限りません。最近は、ロボットの活躍も目立ちます。天井に取り付けたカメラで陳列棚の状況を把握し、完売や売り切れ間近の商品が見つかれば、ロボットがバックヤードから陳列棚まで自動走行で商品を届けるシステムを採用している店舗もあります。

セルフレジ

コーヒーをサービスする人型ロボット

 ロボットと言えば、ペッパーのような人型ロボットが思い浮かびます。それを利用しているのが、ショッピングセンターです。ロボットが館内の案内をしたり、インバウンド向けに外国語で説明をしたり、さらには、来店者の属性や過去の購買情報を基に、おすすめ商品を表示する機能までも備えていて、販売促進にも一役買っています。
 サンフランシスコにはコーヒーを淹れるロボットが登場していますし、ロサンゼルスではハンバーガーのパティを裏返すロボットが働いています。焼き具合を判断して裏返し、チーズを載せてバンズの上に盛るところまでできるので、人間はレタスとトマトを載せるだけです。特に夏場は鉄板が熱く、ツライ仕事ですが、ロボット化することで業務がラクになります。
 日本にも、ロボットがコーヒーを入れてくれるカフェが期間限定でオーブンしました。ネスレ日本が東京の原宿と浅草にオープンさせた無人カフェでは、ヒト型ロボット ”ペッパー” のタブレットを操作して注文すると、IoTに対応したコーヒーマシンがコーヒーを抽出。双腕ロボットがコーヒーカップを移動させ、 ”キットカット” と一緒に差し出してくれます。人手不足が深刻化する中、ネスレ日本はこうした無人カフェを今後も広めたいと言います。

ロボットがコーヒーを運んでいる様子

外食店で活躍する配膳ロボット

 おもてなしを大切にする外食店の場合、すべてをロボット化、機械化するのは難しいのですが、意外なところでロボットが活躍しています。配膳ロボットです。ロイヤルホールディングスは、先ごろオープンした「東京ミッドタウン日比谷」内に開いた店舗に、厨房から客席まで料理を自動で届ける配膳ロボットを導入しました。搭載したタッチパネルで指示を出すと、厨房から客席まで時速1.2kmで動き、店員が料理を配膳したら厨房に自動で戻ります。また和食店「がんこ」では今年3月、厨房から客席まで料理を届ける配膳ロボットを導入しました。一度に10人分ほどの料理を運ぶことができ、個室やテーブル脇まで時速1.8kmで動きます。こちらも、店員が料理を配膳すると、厨房に自動で帰ります。今後、宴会が多い大型店を中心に導入する予定だそうです。ロボット本体は1台250万円程度。20年間ほど使えば、人件費よりも割安だと言います。

配膳ロボット

海外では外食店も無人化

 一方米国では、外食店でも無人化が進んでいます。サンフランシスコには、完全自動化ファストフード「eatsa(イーツァ)」がオープンしています。店内のiPadで注文し、クレジットカードで決済。料理は注文を受けてから調理されてガラスケースに運ばれ、お客様はそれをピックアップします。注文から提供まで通常で2〜3分。1時間で最大300〜400食を売り上げたこともあるそうです。お客様の過去の注文を分析し、好みのメニューを提案する機能も付いています。一方中国でも、アリババなどネット通販会社が中心となって、外食店の無人化が進んでいて、中華料理のファストフード、ベーカリー、デザート店や火鍋屋でも無人化が計画されています。

クレジットカード決済をしている様子

この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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