清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

高まるサラダ人気。 “ゆるベジタリアン” も出現

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2018年06月01日

高まるサラダ人気。 “ゆるベジタリアン” も出現

 ここ2-3年で急激な高まりを見せてきたサラダ人気。そろそろ横ばいかと思いきや、その人気は、ますます高まっています。総務省の「家計調査」によると、2人以上の世帯のサラダに対する年間平均支出金額は年々増加。2008年の2,910円から16年には4,561円と、9年間で56.7%も伸びました。野菜の消費支出は、肉や魚など生鮮3品の中でも常に上位を維持していて、特にキャベツ、レタス、トマトといった生でも食べられる野菜の伸び率が高くなっています。加えて、ドレッシングやマヨネーズ・マヨネーズ風調味料といった、主にサラダ用途に使われる調味料の購入金額も並行して増えていることから、家庭で簡単に野菜が摂取できるサラダが支持を集めていることが分かります。

女性は ”作って” 、男性は ”買って” サラダを食べる

 単身世帯でも同様にサラダ需要は高まっているのですが、男女で比較すると違いがみられます。単身世帯の2016年のサラダに使った金額は、男女平均で4,643円。4年前に比べると38.3%増です。これを男性だけでみると5,862円で46.6%も増えていて、女性の3,571円、27.9%増を大きく引き離しています。一方、生鮮野菜の支出金額は、男性が1万7,255円なのに対し、女性は3万9,354円と、女性は2万円以上多く、ドレッシングやマヨネーズ・マヨネーズ風調味料の支出金額も同様に、女性平均が男性平均を上回っています。
 つまり、野菜を摂取する方法としてサラダが多い点は男女に共通していますが、男性は調理済みのサラダを「買って食べる」。一方、女性は家庭で生野菜と調味料で「作って食べる」傾向があるようです。
 ただ、サラダをよく食べている若い女性に限って、緑黄色野菜が足りていないという報告があります。サラダを食べることで、野菜は足りていると思い込んでしまっているようで、今後は、緑黄色野菜の摂取啓蒙が大切になると思われます。

ドレッシングのかかったサラダ
パックに入ったサラダ

サラダだけでランチを済ます男性も

 サラダ人気を受けて、ランチや週末など限られた時だけゆるくベジタリアンやビーガンを標榜する ”ゆるベジタリアン” ”ゆるビーガン” が増えています。特に、今まで余りサラダを食べてこなかった男性にこの傾向が強く、東京・六本木のサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」の場合、客層は女性が7割、男性も3割程度いて、ランチをサラダだけで済ます習慣は、男性にも確実に広がっています。
 さらには、 ”ゆるベジ” より厳格な ”ゆるビーガン” の店でも男性の姿を見掛けるようになっていますし、ベジタリアンやビーガン向けの情報サイトでは、直近の男性読者の割合が30%と、半年前に比べて9ポイントも上昇しました。有料のレシピサービスも、男性が2割を占めると言います。

ボウルに盛り付けされたサラダ

米国ではミレニアルズが消費の中心に

 話は変わりますが、今後、消費の中心はミレニアルズに移行すると言われています。ミレニアルズとは、アメリカ発の世代区分で、1980年頃から2000年代初めに生まれた世代を指し、日本においては、「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばれる世代と重なります。
 米国において、これまで最大消費者層だった「ベビーブーマー」世代は現在7,540万人。先頭は70歳を超え、高齢化に向かいつつあります。一方、8310万人と人口でベビーブーマーを抜き、消費総額でも上回る日が近いと見られているのが、ミレニアルズです。彼らの台頭により、いまアメリカでは、多くの大手小売企業の成長が鈍化し、変革を迫られています。例えば、国勢調査局によると、現在35歳以下の成人の持ち家比率は34.6%で、調査開始以来の低水準です。これまですべての世代のアメリカ人にとって、「家を持つこと」は人生計画の大きなテーマ、いわばアメリカンドリームだったのですが、ミレニアルズは、 ”不動産に夢を持つことに懐疑的な” 最初の世代だと言われています。アパート暮らしで十分と考え、人口が密集する都市圏に住む傾向が強く、そのため、彼らの来店を狙って、都市部で小型店舗の開発に取り組む小売企業が急増しています。さらには、ミレニアルズの ”健康意識の強さ” が食品販売に影響を及ぼし、 ”デジタル志向の強さ” がEコマースを後押しするなど、あらゆる分野に影響が表れ始め、既存の小売りにとっては変化への対応力が試される時が来ています。

パソコンを見つめる4人組み

サラダ人気はミレニアルズの影響

 振り返って日本のミレニアルズは、10代からスマホを持ち、インターネットに慣れ親しんだ最初の世代。思春期、経済は低成長時代で、上の世代とは消費行動が異なります。加えて、「所有する」よりも「利用する」意識が強く、シェアすることをいといません。また、米国同様、健康志向が強く、かつ社会意識が高く、労働問題や地球環境問題、LGBTなどに関心を持つ人が多いのも特徴です。
 ミレニアルズは、世界各国の同世代で共通する価値観、性質を持っていると分析されています。日本で成功した販売促進の手法は、他国でも通ずる可能性があるという意味では、世界的マスマーケットと言えるでしょう。サラダ人気が続くのも、ヘルシー志向が強いミレニアルズの台頭が大きく影響していると思います。

この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

当サイトでは、利便性向上を目的にCookie等によりアクセスデータを取得し利用しています。
詳しくは、プライバシーポリシーをご覧ください。