清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

コロナ禍で加速した食市場のキーワード

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2020年08月01日

コロナ禍で加速した食市場のキーワード

 新型コロナウイルスによって一変したかのように思われる食市場ですが、実は、コロナ発生前に、既に食市場に生まれていたトレンドが、コロナによってものすごいスピードで展開したという捉え方の方が正しいと私は思っています。今回は、コロナによって加速した食市場のキーワードの中からいくつかをご紹介します。

外食の中食化

  消費税増税と軽減税率導入によって、飲食店が取り組み始めたテイクアウトとデリバリー。新型コロナウイルスによってさらに多くの飲食店が中食市場に参入。ウィズコロナが続くと思われる今、店内飲食と同等、またはそれ以上の収益源と捉える飲食店が増え、他店との差別化を図るため、さまざまな工夫を凝らした商品やサービスの開発を急いでいます。大阪のイタリアンはシェフによる移動式レストランを展開し、話題を呼んでいます。大阪全域を対象に希望する場所までキッチンカーで出向き、その家の駐車場で手際よく店の味を再現。食器を借りて盛り付け、自宅に配膳します。

画像引用元:Prdesse カラビナフードワークス「Chefs-Caravan YOKOZUKE」

業態変更 

 新型コロナウイルス発生前から不振だった居酒屋業態ですが、ここにきて、ますます苦しい立場になっています。そんな中、 ”脱” 居酒屋の流れが加速しています。エー・ピーカンパニーは食堂業態「つかだ食堂」を、ワタミはテイクアウト専門の唐揚げとたまご焼きの店「から揚げの天才」の出店を始めています。一方、コロワイドは閉店予定の居酒屋を「コロワイド食堂」に業態変更。期間限定で、経済的に困難な状況にある学生などに無料で食事を提供します。さらにワタミは、焼肉食べ放題の新業態「上村牧場」の出店を急いでいます。ウィズコロナに向けて、飲み会から食事へと変化する外食の利用機会を見据えての判断です。

画像引用元:PR TIMES エー・ピーカンパニー「つかだ食堂」

ゴーストレストラン

 店舗を持たないゴーストレストランが、新型コロナウイルスによってさらに注目されています。また、商品のみをライセンス契約するバーチャル加盟店など、コロナを機に新しいビジネスモデルも登場しています。トリドールH.D.は新たな市場になるとみて、「ゴーストレストラン研究所」への出資を決定しました。セブン&アイ・フードシステムズは5月、宅配に特化した厨房を東京都内に設けました。一方、タピオカドリンク店「OWL TEA」を展開する「バーチャルレストラン」は、飲食店向け新サービス「バーチャル加盟店」を始動しました。既存の飲食店が、デリバリー専門のゴーストタピオカ店として「OWL TEA」を営業できるというもので、客が店舗に来店しないため、加盟店の初期費用負担が少なく、しかも飲食店のアイドルタイム14~17時がタピオカ店のピーク時間で、作業の負担も少なくて済みます。

画像引用元:PR TIMES バーチャルレストラン「バーチャル加盟店」

セルフサービス

 客がスマホでオーダーしたり、自分でドリンクを注いだりする ”セルフ飲み” 。もともとは、人件費削減や人手不足解消への取り組みとして登場しました。それが新型コロナウイルス禍の中、人との接触をなるべく避けつつ外飲みできるスタイルとして注目され、エンタメ的要素も付加されて人気になっています。

無人化

 店員と接触しなくて済む無人化が進んでいます。最近、東京都内に野菜の無人販売所やロッカー式無人販売機が登場していて、 ”3密” を避けて新鮮な野菜が買えるとあってとても人気になっています。米国アマゾンが、天井に張り巡らされたカメラやセンサーで人と商品の動きを把握することで、店舗の無人化を可能にするシステム「ジャスト・ウォークアウト・テクノロジー」を、ライセンス販売すると発表しています。これにより、無人化は一気に広がるものと思います。

ドライブスルー

 店員と接触しないで商品を受け取る手段として、ドライブスルーを採用する小売店が増えています。スーパーのバローやイオンは一部店舗で、ネットで注文した商品をドライブスルーで受け取れるサービスを開始。高島屋新宿店では、事前に電話で予約した弁当やサンドイッチを、指定した日時に特設の渡し場で車に乗ったまま受け取れます。くら寿司も、ドライブスルー方式のテイクアウトを始めています。

画像引用元:PR TIMES イオン「ドライブピックアップ!」

食でドネーション

 ドネーションとは、寄付のこと。飲料や酒、食品を購入したり、メニューをオーダーしたりすると寄付ができる仕組みを構築する会社やショップが増えています。食べたり飲んだりするだけで簡単に寄付ができるため、社会貢献意識が高いミレニアル世代から下の若者たちに受け入れられています。新型コロナウイルス発生後は、デリバリーをしたり、商品を買ったりすることで、苦境に立たされた飲食店や生産地、コロナ関連支援団体に寄付ができたり、食品・飲料会社が製品を直接子ども食堂や医療機関に寄付したり。さまざまなプラットフォームができたおかげで、新型コロナウイルスで困っている人たちへの寄付がしやすくなり、寄付活動が積極的に行われています。

画像引用元:PR TIMES 街CafeファームGROUP「社会貢献居酒屋 鶏の美術館」

この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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