清田ダイアリー KIYOTA DIARY
コロナ禍で注目の”新商品&新サービス” 〜注目の理由に、ヒットの可能性が?! (前編)〜
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2021年06月01日
先行き不安で節約志向が強まる今、商品展開のキーワードは“定番と汎用性”です。でも、そんな市場にあってなお、各社、知恵を絞り、売れる商品やサービス、ウケる販促を提案しています。それらを13の切り口で分け、今回と次号の2回に渡り、商品やサービス、販促の実例を紹介します。注目した理由に、売れる商品開発のヒントがあるかもしれません。
因みに、私は新商品、リニューアル商品が発売されると、興味を持ったものは必ず購入して使ってみます。使い勝手、味、商品のおもしろさなど、体験しなくては分からないからです。でも困ったことに、大々的に広告を展開するビールなどの飲料は別として、新商品、リニューアル商品はなかなか市場に出てきません。ですから、今から紹介する商品やサービスをすべて試したわけではありません。加えて、“発想がおもしろい”とか“コロナ禍の今だからいい”などの評価であり、“売れる”と判断しているわけではないことをご理解ください。
目次
1. カタチを変えて必然性と使用機会の創出を図る
味や性質は変わっていないのに、カタチや大きさを変えたことで使用機会が増える「オケージョンマーケティング」を生かした商品です。
例えば、新潟の津南醸造とFERMENT8が共同で発売したアウトドア向けパウチ入り日本酒シリーズ「GO POCKET」。キャンプ人気を受け、アウトドアに持って行きやすいよう、割れなくて軽い、ゴミも少ないパウチ入りにしました。容器ごと湯煎すれば熱燗も楽しめてキャンプはもちろん、ウィンタースポーツやスポーツ観戦でも楽しめます。景色をバックに写真を撮りたくなるパッケージデザインや、 ”郷” を掛けたというネーミングもアウトドア好きにはまります。ウイスキーには、アウトドアのかっこいいイメージがあるのですが、日本酒が外に出ると自動販売機のワンカップのイメージになってしまいます。それを払拭することに、見事に成功しています。

【その他の例】 たいまつ食品「辛味こつぶもち」「スライスもち」、ケンミン食品「小さな四角いライスペーパー」、日本ケンタッキー・フライド・チキン「ポップコーンチキン」 |
2. ターゲット設定を変更して間口を広げる
エーザイが女性をターゲットに開発した滋養強壮飲料「チョコラ BBローヤル2」が男性に売れたり、40〜50代をターゲットに開発した化粧品が20代に売れたり、新型コロナウィルス禍で、メーカーが想定していなかったターゲットに売れている商品があります。生活が変われば必要なものも変わってきます。ターゲットを洗い直すと新しい販路が見つかるかもしれません。

【例えば】 大鵬薬品工業「ピタスのどトローチ(オレンジ風味)」、江崎グリコや明治の「大人の」アイス、コカ・コーラシステム「ファンタプレミアグレープ」 |
3. ターゲットやシーンを絞り込んで展開を図る
ターゲットや利用シーンを絞り込み、そのメッセージを商品に載せることで、説得力が増し、利用することに必然性が生まれます。
例えば、日本酒「千福」を醸造する広島の三宅本店が2月に発売した、20〜30代の女性向け料理酒「料理用清酒ふくぱっく」。料理酒は以前からありますが、調味料の簡便化が進む昨今、料理に日本酒を使う人が減っています。料理経験が浅い若い女性は特にそうでしょう。洋風料理を作るとき、 ”ワイン” と材料表にあれば買ってでも入れるのでしょうが、日本酒は「まっいいか」となりがちです。加えて、日本酒を使う和食を作る回数自体も減っています。 ”料理の時間が楽しくなる” ことをコンセプトに掲げ、パッケージデザインは、女性デザイナーが担当。使いやすいよう、圧が強すぎないよう、注意したとのことです。和食だけでなく、洋食や中華、スイーツなどさまざまなメニューに利用できる汎用性をアピールしています。

【その他の例】 ハウス食品「やさしく夜遅カレー」、小島屋「年代別ミックスナッツ」、Italian Kitchen VANSAN「シーンで選べるコースメニュー」 |
4. オケージョンを提案することで必然性と使用機会の創出を図る
利用機会(=オケージョン)を提案することで、その商品を使用する必然性が生まれます。分かりやすい例を挙げれば、牛乳には安眠効果があることを生活者に認知させることができれば、「夜ミルク」という販促ができます。また、GABAなどのリラックス成分を添加したり、脱脂粉乳を使って低カロリーにしたりなど商品開発も可能です。要は、牛乳に「夜も飲む」という必然性が生まれれば、使用機会が倍になり、販売量も倍になるということです。

【例えば】 明治「明治ミルクチョコレート・スティックパック/60秒のひとやすみ応援プロジェクト」、UHA味覚糖+コクヨ+Whatever「minute mint」、永谷園「お茶漬けの素/朝の新習慣 “めざまし茶づけ” 販促」 |
5. 呼び名が変われば必然性が生まれる
名前を付けたり、名前を変えたりすることで、商品イメージが刷新されることがよくあります。例えば、「ジャム」が「コンフィチュール」、「マシュマロ」が「ギモーヴ」と呼び名が変わっただけでブームになりました。前出の「夜ミルク」など、名前を付けたり、変えたりすることで、あるべき必然性が生まれ、ニーズが発生することがあります。
京・宇治 抹茶料理 辰巳屋は、「週末おせち」と名付けたお弁当の販売をECサイトで始めました。おせちは、 ”年末年始の祝いの膳” という認識と共に、 ”年末年始くらいひと休みして欲しい” という女性たちへの思いやりという側面もあります。この起源にヒントを得て ”週末にひと休みして愉しむ「想いやりとやさしさ」のおせち” をコンセプトに開発しました。土日のみのサービスで、1個税込6,480円となかなかの値段ですが、予約で完売しています。贅沢なお弁当は、普段ならなかなか手が出そうもないのですが、「自炊疲れで週末ぐらい料理から離れたい」「ゆっくり休ませてあげたい」「ウイークディ頑張った自分へのご褒美」などさまざまなプラスの言葉が、購入する ”必然性と正当性” を生みます。

【その他の例】 フレンチレストランsio(東京・代々木上原)「朝ディナー」 |
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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。
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この記事を書いた方
この記事を書いた方
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/