清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

アメリカの朝食

食にかかわるアメリカの業界情報

吉田隆夫
JTCインターナショナル社長 吉田隆夫

2020年06月01日

アメリカの朝食

 アメリカではどのような朝食が食べられているのであろうか。実はこのような質問は非常に答えにくいものである。多民族国家であるアメリカは、朝食だけでなく、昼食、夕食も非常に幅広いものが食べられている。アメリカに移住してきた人達の多くは出目の国の食事が中心であり、それぞれの民族で異なる食習慣 を持っているからだ。しかし、2世代目、3世代目となると次第にいわゆるアメリカ的な食事をとる人も多い。今回は、このようなアメリカ的な朝食について、どのようなものが店頭に並んでいるかを書いてみる。

シリアルの誕生

 まず、一番多いのはシリアルである。中でもドライ・シリアルはポピュラーであり、日本でも販売されているKellogg社のコーンフレークが代表的である。Kellogg社の名前はこのシリアルを考え出した人の名前に由来する。セブンスデー・アドバンチストの医者であったJ.H Kellogg氏は24歳の時に、1866年にミシガン州バトルクリークにできた西部健康改善研究所の管理者に任命された。そこでベジタリアンであった氏はピーナッツバターとドライ・シリアルを製造して販売をはじめた。これは、小麦、オートミール、コーンミールを混ぜてビスケット状に焼いたものを砕いたドライ・シリアルで、当時はグラニューラと呼ばれた。しかしこの名前は別の人が使っており、訴えられたために現在使われているグラノーラと呼び方を変えている。

シリアルを広めたKellogg社

ケロッグコーンフロスティ
画像引用元:Kellogg公式サイト(https://www.kelloggs.com/en_US/home.html)

 1895年に小麦をフレーク状にしたシリアルを弟のW.K Kelloggと作り”Granose”という名前で販売、1898年には初めてコーンフレークのシリアルを”Samtas”のトレードマークで販売した。そして1906年、弟のW.K Kelloggが兄から株を買い取り、Kellogg Toasted Corn Flakes社を設立。これが現在の“Kellogg Corn Flakes”の始まりであり、これ以後、コーンフレークだけでなく、様々な穀類を使って非常に多くのドライ・シリアル製品が販売されている。今ではスーパーマーケットには50以上のブランドのドライ・シリアル製品が並び、主に子供が好んで食べている。

オートミールの登場

オートミール

 ドライ・シリアルに対して、穀類を砕いてミールとし、それに水または牛乳を加えて加熱して作るホット・シリアルは、大人を中心に食べられており、オートミール、ウイート・ミールなどが、このカテゴリーになる。最近では雑穀類などを混ぜたホット・シリアルも出されており、中でもBob’s Red Mills社の”10 grain Hot Cereal”はユニークで、全粒赤小麦、ライ麦、トリティカーレ、オーツ麦ふすま、オーツ麦、コーン、バーレイ麦、大豆、玄米、ミレー、粉砕したアマの種が使われている。

健康志向に寄り添い、進化する穀類を使用した朝食

 上にも書かれているKellogg氏が考え出したグラノーラもポピュラーになってきているが、これも主に大人が食べている。グラノーラの最近の傾向はCascadian Farm Organic社のグラノーラのような古代穀類、ナッツ類、種子類などを加えたものが多くなっている。グラノーラと似たもので、穀類、ナッツ、種子類、乾燥フルーツなどで作られたミューズリというものがあるが、違いは、グラノーラは甘味料や油を加えて少し塊のようになるように熱を加えて作ったものに対し、ミューズリは加熱していないものである。また、朝食を便利に食べられるように、シリアル、グラノーラなどを固めたバー製品、ビスケットのような形にした朝食ビスケット製品も増えていて、例えばGeneral Millsは”Nature Valley”ブランドで朝食用ビスケットを出している。

子供が食べる近年の朝食

ケロッグエゴワッフル
画像引用元:Kellogg公式サイト(https://www.kelloggs.com/en_US/home.html)

 子供はシリアル以外では、パンケーキ、ワッフル、トースター・スツデゥーデルなども食べており、これらには室温保存製品と冷凍製品がある。ワッフルの冷凍製品の例としては、Kellogg社が出している“Eggo”ブランドが最もよく売れているブランドで、グルテン・フリー製品も出している。また、パンケーキ(ワッフル)はミックスでも販売されているが、このコロナ禍で、家で食事をすることが多くなり、店では棚に並んでいないこともあるほどよく売れている。

大人が食べる近年の朝食

イングリッシュマフィン

 パン類は大人が食べていることが多く、その種類は食パン、ペイストリー、イングリッシュマフィン、べーグルなどが一般的である。また、これらの製品でも全粒穀類製品が非常に多くなっていて、主に米粉を使ったグルテン・フリー製品も増えている。

 朝食には上記の穀類製品と共に卵やハム、ソーセージ、ベーコンなどもよく食べられる。自分で調理することも多いが、時間がなければ調理済みの冷凍食品も販売されている。例えば、卵とソーセージとチーズを調理してフラットブレッドに挟んだTyson Food社の”Day Starts”など、色々な製品が冷凍庫に並んでいる。

最後に

アーモンドミルク

 かつて朝食には牛乳、オレンジジュースが飲まれることが多かったが、両方ともこの頃は消費が減少している。牛乳は豆乳やアーモンドミルクに押されており、オレンジジュースは糖分が多いことから敬遠されるようなことが多くなっているからだ。もちろん、こうした製品以外にもそれぞれの民族料理があり、アメリカでの朝食は非常に多岐に渡っていることがわかる。

この記事を書いた方

吉田隆夫

この記事を書いた方

JTCインターナショナル社長吉田隆夫

アメリカのフロリダ大学の分子進化研究所で2年間研究、さらにシラキュース大学で後にノーベル賞受賞された根岸英一先生の教室で2年間有機金属化学を研究し、IFF社の研究所で約11年間香料の研究。その後、カーリンフード社(後にブンゲ社)に5年勤務、独立して食品産業のコンサルタントを30年以上続けている。アメリカ食品産業研究会、e-食安全研究会、クリエイティブ食品開発技術者協会を設立し、その活動をしている。

http://www.e-syoku-anzen.com/

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