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清田ダイアリー KIYOTA DIARY

甘い味の話(その1)

甘い味がもたらす健康と不健康

飯沼宗和
岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授 飯沼宗和

2008年09月01日

甘い味の話(その1)

 人が味を感じる時、甘味は幸福感を覚えます。しかし、近年の甘味は不純物を取り除いたがゆえに健康面で多少問題が出ています。今回はそんな甘味について迫ります。

味と健康

 ヒトが感ずる味覚には五つの味があると言われています。酸、苦、甘、辛、そして轍(塩からい味)です。一般的に酸、苦、辛は身体にとって、嫌悪的な味、甘は魅力的な味のイメージで受け止めています。「辛酸をなめる」、「辛苦を共にする」、「蜜月(ハニームーンの)日本語訳)」などに表わされています。できれば避けたいような、酸味、苦味、辛味をヒトはどれも極く微量で感じ取ります。

 逆に、霊惑的な甘味には、かなり鈍感で、苦痛なく摂取できます。専門的には、閏値(いきち)が低い、高いと言います。レモン(アスコルビン酸)、漬物(乳酸)、酢(酢酸)などによる酸味自身の違いを識別することは難しく、総体として酸っぱさを感じています。

 苦味も酸味と同様ですが、辛味の違い(トウガラシ、ニンニク、サンショウ、ショウガ、ワサビなど)は多少なりとも区別できそうです。基本的には辛味をもつ化合物の構造によって、違いが判りそうです。化合物の安定性も異なり、ニンニク、ショウガ、ワサビなどの辛味は不安定ですが、サンショウ、トウガラシは安定です。

 従って、翌朝、食べ過ぎた思い出を語ってくれるのはトウガラシです。闇値が高いことは、許容範囲が広く、量的にも多く摂取できることを意味し、砂糖と塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取でみるように、生活習慣病発症の原因の一つとなります。

現在の甘味と塩味について

サトウキビ

 調理には欠くことのできない砂糖と塩(基本調味料)。黒色から褐色味がかった砂糖、置いておくとベトつく食塩を覚えておられる方も多いでしょう。今では白砂糖やグラニュー糖、サラサラとした塩が主流です。

 サトウキビやテンサイ(甜菜)を原料に、多くの工程を経て、不純物としての色素やミネラルを取り除いて、白砂糖ができます。粗塩に含まれる不純物としての塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどを除去して食塩が出来上がります。

 実験用試薬(薬品)としても通用しそうな高純度に精製されたショ糖や塩化ナトリウムです。しかし、白砂糖だけを餌に飼育した小動物はやがて死ぬそうですが、黒砂糖で飼うと生き永らえるそうです。生きる上で必要なミネラルなどを捨て、エネルギー源だけの糖にした結果です。

 ヒトも食物として、多くの食品と雑多な物質を混合物として摂取しています。医薬品と違って、食の領域では必要以上に精製されたものに、時として本来の機能が損なわれてしまう危険性があります。

健康にも考慮した新たな甘味と塩味

 幼い頃、タクアンやアイスボンボンを食べた後、いつまでも残る合成甘味料の妙な味に子供心にやるせなさを感じた記憶があります。今ではダイエットを目標に天然甘味料が使われています。ステビア(キク科)、カンゾウ(マメ科)、ラカンカ(ウリ科)など、少しでも砂糖の甘味に似たものが開発されつつあります。これらの成分には甘味に加えて、何れも別の生理活性作用も期待されています。

漢方薬

 漢方薬、色々な生薬が組み合わさって出来た処方です。一般漢方210処方中、実に150処方、72%の処方に含まれている生薬はカンゾウ(甘草)です。

甘草

カンゾウ

 甘味の本体はグリチルリチンであり、この化合物には抗炎症活性、抗アレルギー活性、テストステロン産生抑制、胃粘膜障害抑制作用など極めて多くの生理活性が知られています。ただグリチルリチンの構造上に一つの欠点があり、過剰に服用すると偽アルドステロン症(注)やミオパシー(原因不明の進行性筋代謝性疾患)の副作用が現れることがあり注意を要します。

ブラジルカンゾウ

ブラジルカンゾウ

 同じマメ科植物にブラジルカンゾウがあります。その根はカンゾウと同様、甘味を有しています。成分は古くから研究されていましたが、その甘味成分(ペリアンドリンⅠ〜Ⅴを分離し、生理活性について研究しました。グリチルリチンと構造は分類上近い範晴に属していますが、部分的には違った構造です。カンゾウを凌ぐ強い抗アレルギー活性が認められ、副作用も全く認められませんでした。

 カンゾウはほぼ100%野生品が用いられています。自然破壊を避けるため、最近では中国、オーストラリアで人工栽培の研究も進んでいます。カンゾウの流通でみた欠点を参考に、ブラジルカンゾウでは実用性が広まる前に人工栽培がブラジルで既に進行しています。

 北半球そして南半球に自生し、互いに進化し分化もした同じ甘味をもつマメ植物。それら植物の成分並びに成分の持つ機能性にはいつも不思議さを感じ、そして感動をおぼえます。

*偽アルドステロン症
血圧を上昇させるホルモンが過剰に分泌していないのに、高血圧やむくみなど、過剰分泌したような症状があらわれる。

この記事を書いた方

飯沼宗和

この記事を書いた方

岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授飯沼宗和

1947年松本市生まれ。薬学博士。1974年岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了。1980年薬学博士取得(岐阜薬科大学)。1974年岐阜薬科大学助手、2002年教授となり、39年間にわたり専門の生薬学を中心に教育研究に携わる。1998年から4年間岐阜県に出向し、保健環境研究所所長を歴任。研究分野は民族伝承薬物の科学的根拠に基づく医薬品、健康食品、化粧品の研究開発。