清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

甘い味の話(その2)

甘さの不思議

飯沼宗和
岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授 飯沼宗和

2008年10月01日

甘い味の話(その2)

 私たちが甘さを感じる食材はいくつかあります。今回は前回に引き続き甘味の原料となるものを紹介します。

甘さを感じた不思議な体験

 未だ解き明かすことの出来ない一つの記憶があります。小学校の頃、ハーモニカが好きで夢中で吹いていました。そして、喉が渇いて水を飲むと不思議とその水が甘く感じられるのです。ハーモニカの鍵盤に相当する金属部に口は直接接していませんから、ハーモニカの外側の金属にその様な作用があるのでしょうか。不思議です。

甘さを持つ化学成分

 無機化合物のホウ酸でうがいをした後の水は甘味を呈することや、薄いアルカリ(水酸化カリウム)にも甘味があることを最近知りました。以前、実験に使ったクロロフォルムは手に着 くと指と指の間の皮膚の弱い所が妙に痛かったですが、甘い匂いと味があったと記憶しています。その後、エチレングリコール(不凍液に利用)にも甘味があり、ブドウ酒の甘味を増すために不法に使われ健康被害が出たことも記憶しています。

お酢の甘味

リンゴ酢

 バランスがとれ満足できる味に三杯酢があります。酢、みりん、醤油を同量ずつ混ぜ合わせた調味料で、南蛮漬けや、もずくの味付けにします。料理に幅を与え、なくてはならない調味料で酢豚や冷やし中華の本命です。

酒の甘味

卵酒

 卵酒は熱欄に鶏卵とハチミツを加え、滋養強壮の目的で体力低下、風邪の引き始めに用います。卵酒には苦い苦い思い出があります。小学校高学年の冬、6歳年上の兄と共に揃って風邪を引いてしまいました。善意で作ってくれた卵酒を二口ほど飲んだのが大間違い。高校生の兄は抵抗性があったのかもしれませんが、私はその10分後には嘔吐。酒に酔ってしまったのです。

 その時の風邪はどうなったか忘れましたが、後遺症が残りました。未だにハチミツは口にしませんし、ケーキなどの匂いにも敏感です。生卵の匂いも鼻に残って仕方ありませんので、生卵ご飯は遠慮気味です。遠い半世紀前の経験ですが、抗原抗体反応と一緒で味覚が覚えています。事の良し悪しは判りませんが、卵酒の主要構成品である日本酒やアルコールに対しては不思議と嫌悪感は残りませんでした。

甘さをコントロールする食べ物

ここでは甘さを感じたり、無感覚になる食べ物を紹介します。

ミラクルフルーツ

ミラクルフルーツ

 三年ほど前、伊豆半島を研究室の学生と旅行しました。植物園を見学した折、売店でミラクルフルーツ(アカテツ科)が売られていました。その果実一個がコーヒー一杯の値段でしたが試すことにしました。ミラクルフルーツを口にした後、一緒に出されたレモンを口にします。普通は酸っぱい味のレモンを甘く感じることが出来ました。アフリカの現地人は、アルコール発効が調節できず、酢酸発酵が一部進んだすっぱいヤシ酒やビールを飲む前、或いはトウモロコシで作ったすっぱいパンを食べる前に、この植物の実を食べ、これのらのすっぱい飲み物や食物に甘味を与える習慣があるそうです。

 現在ではアミノ酸 191個からなるタンパク質、ミラクリンという物質であることが判っています。

ギムネマ

ギムネマ

 インド伝統医学アーユルヴェーダ(生命科学)の中にはガガイモ科植物のギムネマがあります。その葉を噛んでから、砂糖を口に入れても何ら甘みがなく、砂のような感じがします。ケーキなどを食べても美味しくありませんので、食欲減退効果があります。

 その本体はギムネマ酸であることが判り、糖分吸収抑制作用も知られています。肥満や糖尿病への応用が示唆されています。ナツメの葉を1〜2分噛んだ後、砂糖や砂糖を含む植物を食べても余り甘みを感じません。糖以外の甘味料ステビアやアスパルテームを口にしても同じことが言えます。ナツメの場合はジジフィンという化合物で、味蕾の甘味受容体を阻害しているためです。この様に味覚の受容体に選択的に結びつき、味覚を変化させる物質を総称して、「味覚修飾物質」と呼ばれています。

クルクリゴ

 マレーシアのクルクリゴ(キンバイザサ科)の実にも味覚修飾物質が含まれていて、すっぱいものを甘いと感じるだけではなく、水を飲んだだけでも甘味を感じるそうです。この化合物クルクリンはアミノ酸114個からなるタンパク質です。

まとめ

 過栄養状態が原因としか思えないメタボリックシンドロームや肥満が引き金となって、高脂血症、高血圧症、糖尿病が原因し、脳卒中や心臓病に起因する疾患が急激に増えています。一般的な危機感だけでは、自分自身に振り掛かる危険性を回避できません。摂取カロリーの供給 と需要のバランス、運動の必要性等を個人の問題として生活リズム改善の中で真剣に実行していきたいと思います。

 天然甘味物質や改良されつつある人工甘味料について次回に紹介します。

この記事を書いた方

飯沼宗和

この記事を書いた方

岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授飯沼宗和

1947年松本市生まれ。薬学博士。1974年岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了。1980年薬学博士取得(岐阜薬科大学)。1974年岐阜薬科大学助手、2002年教授となり、39年間にわたり専門の生薬学を中心に教育研究に携わる。1998年から4年間岐阜県に出向し、保健環境研究所所長を歴任。研究分野は民族伝承薬物の科学的根拠に基づく医薬品、健康食品、化粧品の研究開発。