清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

記憶に残る植物(6)

カキノキ

飯沼宗和
岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授 飯沼宗和

2009年10月01日

記憶に残る植物(6)

 「パーシモン」と英名で言うと何を想像されるでしょうか。秋の果物、柿の英語と思い出す人、ゴルフクラブ(ウッド)のヘッドを思い出す人、全然イメージのわかない人、色々な方がおられるでしょう。今回はそんなカキについてお話しします。

日本のカキと世界のカキ

2種類の並べられた柿

 東海地方の山を歩くと、思わぬ所で野生のカキに出会います。秋深く落葉が進む山中でカキの実がなっている光景に出会うとなぜか侘しさが募ります。中国と共に日本はカキの原生分布地域です。ヨーロッパ、アメリカ、ブラジルと世界各国に種や苗木が持ち出され、果物として食されています。ヨーロッパでは正真正銘、“kaki”としてマーケットや青空市場で売られていました。日本で食べるカキとは違い、多少鮮度は落ちていて、品種改良も遅れたものが売られていましたが、他の果物とは明らかに異なる上等の味でした。

カキの葉の使用方法

器に盛られた柿の葉

 新葉は茶材として利用されています。葉は「お盆」の時には、仏様に捧げる供物の食器代わりとなります。虫食いのない葉を取ってきて、布巾できれいに拭いて埃を落として使います。

カキの品種と渋みの正体

 甘柿、渋柿、色々な品種がカキにあります。正式な名称は知りませんが、盆柿(ぼんがき)と称して、早い時期(9月の初旬)に既に食べられる甘柿があります。小粒で商品価値はありませんが、子供の頃、他所からいただいた貴重な柿だったと記憶しています。渋柿の渋を抜く方法は知られていますが、かまどの灰の中にしばらく放置する方法もあります。サツマイモを焼く要領です。左程甘みはありませんが、渋味がぬけたジューシーな焼き柿ができます。

柿の木に柿が実っている様子

 渋柿の渋味はタンニンで、以前は「鞣質(じゅうしつ)」とも表記しました。皮を鞣(なめ)す作用があるからです。鞣皮以外にも、外用収斂(しゅうれん)剤や止瀉(ししゃ)剤にタンニンは用いられています。何も知らない子供の頃に、干し柿用に集められたカキの中から、甘がきを探しました。かじり続け探していると渋が口のタンパク質と結合してしまい、感覚がなくなりました。無茶なことをしたものです。驚くことが翌朝起こりました。止瀉剤として使われるタンニンは正常な子供の腸に作用して、収斂性を示し大腸の蠕動(ぜんどう)運動を拒んだのでした。排便の気持ちはありますが、まさに糞詰りの状態です。泣きながら前日の無茶を悔やみました。

カキの蔕(ヘタ)に含まれる美容成分

柿のヘタ部分を写した画像

 カキの蔕(ヘタ)、柿蔕(シテイ)の成分研究をしたことがあります。吃逆(しゃっくり)止めの妙薬として用いられている柿蔕の活性成分を追求しようとしました。数多くの化合物を単離しましたが、横隔膜の痙攣を止めるような物質までの特定は完成できませんでした。

 岐阜県の特産に富有柿、堂上蜂屋柿があります。これら特産品の付加価値を高める目的の研究チームに参加しました。富有柿の果皮が研究対象です。大方の人は皮をむいて食べますが、不用となった部分です。柿ようかんを作る場合も、果皮は不用部だそうです。

 美白を指標に成分を追跡していきますと、フラボノール配糖体が確認できました。柿蔕の成分と同一です。シミ、ソバカスの原因となるメラニンの生成抑制が認められました。果肉に対して50倍の含量が果皮では観察されます。新しい美白剤がカキの皮から開発されつつあります。

 その昔、干し柿を作る際に出た果皮は乾燥して保存し、タクアンなどの漬物を作るときに利用してきました。残留農薬等を懸念し、果皮を口にすることを遠慮される意見がありますが、十分洗えば心配ないように生産管理をしていると農業改良専門家は自信を持っています。

世界の架け橋となるカキ

柿が実った柿の木を写した風景

 南半球とは季節が逆となる日本です。盛夏の頃、冷やしたカキが食べられればと勝手な想像をします。ブラジルに最初の移民が始まってから、2008年は記念すべき100周年の年でした。皇太子殿下や政治家をはじめとする著名な方々のご訪伯もあり、将来に向けての新たな誓いもなされたと聞いています。

 そのブラジルの地で栽培されているカキは富有柿系で、本家の富有柿より一回り大きく、味も極めて優れています。100周年を記念して、ブラジルのカキがヨーロッパ、アメリカや日本に最盛期に出荷できれば、冷やして食べるカキが実現されると期待できます。

 しかし、カキは秋〜初冬の果物です。硬い渋柿に藁を敷いて、熟柿にする光景に風情があります。食べ頃の熟柿が完成しますとエタノールの匂いがその部屋に広がります。その頃は、歳の瀬も近づき、新しい年が始まろうとする一年の終わりです。

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この記事を書いた方

飯沼宗和

この記事を書いた方

岐阜薬科大学名誉教授岐阜医療科学大学客員教授飯沼宗和

1947年松本市生まれ。薬学博士。1974年岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了。1980年薬学博士取得(岐阜薬科大学)。1974年岐阜薬科大学助手、2002年教授となり、39年間にわたり専門の生薬学を中心に教育研究に携わる。1998年から4年間岐阜県に出向し、保健環境研究所所長を歴任。研究分野は民族伝承薬物の科学的根拠に基づく医薬品、健康食品、化粧品の研究開発。

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