清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

成分減少食品

食にかかわるアメリカの業界情報

吉田隆夫
JTCインターナショナル社長 吉田隆夫

2023年01月18日

成分減少食品

 日本、アメリカ、ヨーロッパ等先進諸国を中心に世界の食品市場は機能性食品が大きなシェアを占めるようになってきている。
 健康志向は一般消費者の大きな関心で、食品が健康の維持と疾病の予防に重要な役割を占めていることが認識されるようになった機能性食品の中でも、生活習慣病の予防のために、成分を削減した食品が多く出されている。

食品成分と健康の関係

 どのような食品あるいは食品成分でも、偏って多量に摂取すると身体に悪いのは当然である。脂肪、炭水化物、プロテイン、塩分、砂糖などのマクロ栄養素は、身体が必要とする栄養素であるが、摂取しすぎると身体に悪い影響を与え、脂肪や塩分の摂取過剰は心臓病の原因と言われている。砂糖も摂りすぎると肥満、糖尿病、うつ病、アルツハイマー、動脈硬化、腎臓病、肝障害、骨そしょう症などの原因にもなると言われている。

 こうした栄養素はバランスがとれた量と種類を摂取することで健康を保つことができる。2型糖尿病や高血圧、その他の症状を持っている人は症状を悪くするような食品成分の摂取は少なくしなければならない。また、アレルゲンやグルテンに非耐性の人は避けなければならい。

 食品業界が発達し、多くの加工食品が提供されるようになってくると、偏った成分の量が入った食品や、アレルゲンなどの入った食品などが販売されるようになったので、消費者はラベル表示をよく見て買わないといけなくなっている。

アメリカの食品市場における成分減少食品の表示

  アメリカの食品市場には、食品で成分の含有量を減らした製品が多くある。特に、脂肪、塩、砂糖を減らした食品、あるいは最近流行っている低炭水化物ダイエット用の低炭水化物食品、さらにグルテンフリー、ラクトースフリーの製品、アレルゲンフリー製品などが販売されている。

 こうした製品には、”Less ……”, ”Reduced ……”, ”Low ……”, ”Free ……”, ”No ……”などの種々な表示がされているが、こうした表示にも規則がある。今回はこうした表示規則とその例を商品で示してみることにした。

食品成分表示の規則

 現在のFDAの規則では、カロリー、総脂肪量、飽和脂肪、コレステロール、ナトリウム、砂糖、グルテン、アレルゲンについての表示用語についての規制がされている。

 まず最初に、一般的な規則であるが、表1にあるように、上記に書いた以外での表現についてそれぞれ使ってもいい表現が示されている。

  なお注にある、「食品が定義にあっていること」とは、アメリカでは食品のそれぞれのカテゴリーで、食品についての定義が規則としてある。例えば、ヨーグルトと商品に表示する場合は、FDAの規則では、その製品は量の多いフレーバー成分(例えば、ストロベリーシロップ)を加える前で、3.25%以上の乳脂肪と8.25%以上の乳固形分が含まれ、滴定可能な酸性物質として、乳酸として0.7%以上含まれているか、あるいはpHが4.6以下でなければならないとされている。

 しかしながら、最近はヨーグルト製品も低脂肪や無脂肪あるいは、天然甘味料などを加えたものなど非常に種類が多くなり、FDAは2021年6月に新しい定義に関する規則を健康への影響などを考え大幅に変えている。それまでの規則では定義に合わなかった低脂肪、無脂肪ヨーグルトなどもヨーグルトと表示できるようにしている。

 従って、食品のラベル表示をするときには、定義の規則を再確認しておく必要がある。ここで、参照量とはサービングサイズとも呼ばれ、1回に普通に食べられる、あるいは使用される量で、参照食品とは普通に作られる食品である。

カロリー

 食品のカロリーは1日に摂取する食品で得られる熱量であるが、これも過剰になると健康を害することがある。大体、大人の男性では1日2000キロカロリーの摂取で十分であると考えられているが、体重を減らそうとする人などは、カロリーをできるだけ少なくしたい人もいる。カロリーでの無、低減製品の表示規則は表2に示してある。

  カロリーを減らした製品で表示をしている製品は最近では少ない。それは脂肪や砂糖を減らすことでカロリーをカットするので、むしろ低脂肪あるいは低砂糖などと表示する方が消費者にはわかりやすいからである。

画像引用元:Hellman公式サイト(https://www.hellmanns.com/us/en/home.html)

 マヨネーズではUnilever社が”Hellman”ブランドのマヨネーズで、表2の中にあるLightの表示を使った”Light Mayonaise”を出している。このマヨネーズは脂肪が普通のマヨネーズの半分以下である。

脂肪

画像引用元:Sargento公式サイト(https://www.sargento.com/)

 脂肪の高い食品は多くの人が避けている。そのため低脂肪製品は非常に多く出されており、例としては、”Sargent Reduced Fat Sliced Natural Cheddar Cheese”は普通の天然のチェダーチーズ製品よりも一枚あたり約40%脂肪が少ない。

 これは他の成分を加えた加工チーズではなく天然のチーズから脂肪だけを減らしたものである。低脂肪、無脂肪などの表示についての規則は、表3に総脂肪量と飽和脂肪の量での規則がまとめられている。

コレステロール

 コレステロールは一時、摂取量を減らすことが大事であると言われていたが、最近はあまり話題にされない。コレステロールの多い卵は1日1個以下などと言われていたのが、最近では卵は1日に2個食べても問題がないと言われている。

 また、コレステロールは体内でも作られるので、食品から摂取したコレステロールは余り血中コレステロールに関係しないと言われている。コレステロールを減らしたと表示している製品も最近では少なくなっている。

ナトリウム

 表5にはナトリウム(塩分)を減らした製品の表示規則が示されている。アメリカ人は塩分(ナトリウム)を摂取しすぎているので、政府は食品業界に自主的に食品に使用している塩分を減らすように指導している。

 最近、こうした動きから塩分を減らした製品が増えてきている。Campbell Soup社はそのスープ製品に塩分が多いものが多く、最近は塩分を減らした製品を増やしてきている。

画像引用元:Campbells公式サイト(https://www.campbells.com/)

 その例としては”Campbell’s”ブランドの”Condensed Chicken Noodle”の25%塩分を少なくした製品などがある。

砂糖

 砂糖はアメリカで最近特に摂取するのを減らそうとする人が増えている。アメリカ人は甘いものが好きで、ケーキやアイスクリームなどをよく食べる。肥満が多い原因の1つである。砂糖の代わりに最近ではステビアやモンクフルーツなどのカロリーのない天然甘味料の使用も増えている。

 砂糖については1日推奨摂取量が設定されていないので、Lowという表示はないが、普通の製品に比べて砂糖を少なく使った製品にはReduced SugarあるいはLess Sugarという表示はできる。

画像引用元:Kellogg's公式サイト(https://www.kelloggsawayfromhome.com/en_US/home.html)

 例えば、Kellogg社の”Frosted Flakes”のシリアルで”Reduced Sugar”の製品を出しており、”No Sugar”製品も出している。

アレルゲン

 アメリカではアレルゲンとして表示しなければならない食品は、牛乳、卵、大豆、ツリーナッツ、ピーナッツ、小麦、魚、甲殻類で、2023年1月からはゴマも表示義務が施行される。こうした食品を摂取するとアレルギーを起こす人は、それを避けなければならない。

 多くの食品にはこれらのアレルゲンが入っている、あるいは入っている可能性を表示してある。最近ではアレルゲン・フリー製品も増えている。

画像引用元:Enjoy Life Foods公式サイト(https://enjoylifefoods.com/)

 Enjoy Life Foods社は14種類のアレルゲンが入っていないベーカリー製品を”Allergy Friendly”としてアレルギーのある人が安心して食べられる製品を多く出している。

グルテン

 小麦に含まれるグルテンはパンを作るには重要な成分であるが、グルテンに非耐性でセリアック病を起こす人がアメリカでは人口の0.8%いると言われている。さらにグルテンに反応をする人や小麦アレルギーの人もおり、グルテン・フリー製品が非常に多くなっている。これについては以前にこのコラムで紹介している。

この記事を書いた方

吉田隆夫

この記事を書いた方

JTCインターナショナル社長吉田隆夫

アメリカのフロリダ大学の分子進化研究所で2年間研究、さらにシラキュース大学で後にノーベル賞受賞された根岸英一先生の教室で2年間有機金属化学を研究し、IFF社の研究所で約11年間香料の研究。その後、カーリンフード社(後にブンゲ社)に5年勤務、独立して食品産業のコンサルタントを30年以上続けている。アメリカ食品産業研究会、e-食安全研究会、クリエイティブ食品開発技術者協会を設立し、その活動をしている。

http://www.e-syoku-anzen.com/

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