清田ダイアリー KIYOTA DIARY
ネクストシーフードは、世界が注目 ”seaweed”
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2023年07月01日
【SDGs=持続可能な開発目標】。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標に向けて、政府、自治体、企業にとっては、事業展開のコンセプトのひとつになっています。海洋資源においても、持続可能な取り組みが進んでいます。魚介類の養殖では、環境を破壊せず、魚介にストレスを与えない方法として陸上養殖に積極的に取り組む企業や自治体が増えていて、サバやサーモンなどの魚類に加え、アワビやウニ、エビなども陸上で育てられています。海洋資源の持続可能な利用を通じて経済発展を実現する ”ブルーエコノミー” の市場規模は、2030年に世界で500兆円に達するとの予測もあります。
そして今、世界的に関心が集まっている海洋資源が、 ”海藻” です。栄養価が高く、環境にもやさしいことが知られるようになり、世界中で評価されています。特に、海藻を養殖し、CO2を吸収させて貯留する ”ブルーカーボン” は、地球温暖化対策のひとつとして注目されています。
海藻×発酵で ”新” 海藻食品
日本の海藻養殖のスタートアップ「シーベジタブル」(高知・安芸)は、 ”養殖法と食べ方の両面から海藻の食文化をアップデートする” ことを目指して陸上で効率的に海藻を養殖する技術を開発。テストキッチンでは有名店出身のシェフがおいしい食べ方を日々模索しています。東京・銀座のイタリアン「FARO」の調理長は、 ”海藻は陸上の食べ物にはない香りと食感があり、料理人にとっては魅力的” と語ります。
さらに「シーベジタブル」は、新たな海藻の食文化を育むため、世界に向けて発信するブランド ”Re-seaweed(リシーウィード)” をリリース。第1弾商品として、海藻を発酵させて造ったノンアルコール飲料 ”海のワイン” を開発しました。海藻そのもののおいしさを活かすため、海藻、水、砂糖のみを使用。コンブチャと同様の原理で、海藻に糖分を加えて発酵させ、まるでワインのような爽やかでフルーティな味わいに仕上げています。試飲した料理業界の人々からは ”こんなにおいしいドリンクが、海藻から生まれたとは信じられない” などの声が続出したといいます。さらに、大豆の代わりに海藻を麹などと発酵させた、しょうゆやみそも製造していて、青海苔で作ったしょうゆはさっぱりとしたうま味があり、トマトにかけるとそれだけでおいしいといいます。
海外は今、海藻に夢中
いままで、シーウィード ”海の雑草” と呼んで見向きもしなかった欧米諸国は、近年、日本以上に海藻に夢中になっています。
デンマークにあるミシュラン3つ星のレストラン「noma(ノーマ)」は、海藻を積極的に使うことで知られていて、 ”海藻入りのアイス” など人気メニューも生まれています。また、フランスの海藻養殖業者への技術指導契約を結んだ「うずしお食品」(徳島・鳴門)は、海藻はフランスにおいて ”新しい食材として需要が伸び、食糧難の解消など新たな活用法の模索も始まっている。海藻養殖は最先端の産業” と話します。
北欧で進化する海藻食品と海藻料理
ノルウェーでは、オーガニック認証を取得したわかめを凝固させ、キャビアやイクラのような粒状に仕立てた注目の食材 ”OceanPearl SEAWEED CAVIAR(オーシャンパールシーウィードキャビア)” が開発され、日本にも上陸しています。プチッとはじける食感とうま味が楽しめる新感覚フードで、海藻なのでグルテンフリーなうえ、ビーガン、ベジタリアンの人も安心して食べられます。海の香りとほのかな塩味で、和洋折衷、どんな料理にも合うとアピールします。
開発したのは、ノルウェー北部にあるロフォーテン諸島で暮らす2人の女性が運営する、海藻の持続可能性と未来に取り組むメーカー。生態系を綿密に守り持続可能な方法で収穫した海藻を使った製品は、国内外でいくつもの賞を受賞しています。
日本においても、「Dr.Foods」(東京・新宿)が「マーマフーズ」(岩手・花巻)と協業。約1年をかけて ”植物性キャビア” を開発しています。海藻をもとに新しい特産品を作りたいとの思いから代替魚卵に着目。キャビアの希少価値や持続可能の観点などから同品の開発に至ったと言います。高級感のあるなめらかな口当たりと深い味わいを兼ね備えていて、その再現性の高さからすぐに海外への進出が決定。英国・ロンドンのフードコート施設で採用される予定です。
同じく北欧のスウェーデンでは、以前は海藻を食する文化はなかったのですが、野菜の数倍のミネラルとビタミンを含んでいることから、今では ”スーパーベジタブル” とも呼ばれ、注目度が高まっています。
乾燥させた海藻や燻製にした海藻のふりかけ、昆布オイルなどがWebサイトで販売されているほか、海藻を使った料理教室や小島を訪れて海藻について学ぶ ”海藻サファリ” なども行われています。レストランでは、日本人が持つ昆布のイメージを一新するような、自由な発想から生まれた海藻料理が人気なのだそうです。
米国では海藻飲料
一方、米国では、食物繊維を豊富に含むと世界で注目されている寒天を使用。フルーツとハーブをたっぷり加えて飲みやすく仕上げた機能性飲料ブランド ”OoMee(ウーミー)” が展開されています。ビーガン、グルテンフリー、無添加、無着色にこだわり、腸内環境を整えるだけでなく、自然環境と調和のとれた持続可能な未来を提供すると謳います。商品名は、環境にやさしいサステナブルな生活を送る自分に誇りを持ってほしいとの願いを込めた ”Oo, Mee!(私、最高!)” と ”海” の2つの意味を掛け合わせたとのこと。
ほかにも、多くのヘルシー系ブランドが、昆布を含んだ製品を積極的に開発。昆布入りホットソースや昆布バーガー、生昆布入りキムチなども登場しています。 海藻は大気中のCO2を吸収するため、地球温暖化の問題解決にも繋がると、ニューヨーク州では昆布の養殖が2021年6月から合法になり、有機肥料の材料としても注目され、土壌改良目的で利用され始めています。米国において、昆布が未来の食と環境に果たす役割はより大きくなりそうです。
コンポスト可能な海藻パッケージ
海藻の新しい利用法も研究されています。ノルウェーのスタートアップ「B'ZEOS(ビーゼオス)」は、「ネスレ」をはじめとする飲食業界との共同で、海藻で作ったコンポスト可能な食品パッケージを開発。2019年からを広めています。この海藻パッケージ1トンから排出されるCO2は、非バイオパッケージが排出する量より5トン削減可能なうえ、100%バイオベースなので60日以内に自宅で堆肥化できます。加えてフィルムの透湿性が高いため、水分を放出して腐敗を防ぎ、特定の食品の貯蔵寿命を延ばすことも可能です。同社のCEO、グイ・マウリス氏は海藻の未来について、 ”私たちは海藻をあまりにも長い間放置してきた。適切に管理されていれば、海藻は明らかにCO2排出などの多くの環境問題に対する解決策であり、すばらしい可能性を秘めている” と話します。
インドネシアでも同様の商品が開発され、日本での販売が始まっています。海藻が原料なので食べることができ、熱い湯に入れると約1分で溶けるため、ティーバッグやカップラーメンの添付スープのパッケージとして利用すれば、そのまま溶かして食べることができます。海藻で作られたインクで印刷もでき、サステナブル・オリジナルグッズやノベルティの制作も受け付けています。
世界には約2万種の海藻が生息しているそうですが、一般的に食べられているのはそのごく一部。限られた地域でしか知られていないもの、生態や栄養価が解明されていないものなどがたくさんあります。海藻食には環境問題や食糧危機を解決する一助となる力があり、古くから海藻に親しんできた日本には、その進化をリードする役割が期待されています。
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この記事を書いた方
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株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/