清田ダイアリー KIYOTA DIARY
マッシュルームを使った製品
アメリカにおける食品の傾向
2024年06月07日
数年前からマッシュルームへの関心が高まるという予想を筆者はしていたが、最近の食品産業の動きを見ていると、その動きが加速しているように思われる。
マッシュルームは植物でも動物でもなく菌の一種で、世界で大昔から食べられている食材でもある。マッシュルームにはビタミン、ミネラル、抗酸化剤、プロテイン、食物繊維などの栄養素が含まれており、特に非常に多く含まれている栄養素はないが、全体として栄養価の高い食品でもある。
乾燥したものでは栄養素が濃縮されているので、さらに栄養価が高くなる。日本でも生鮮食品の売り場ではマッシュルームの種類も増えてきている。マッシュルームはもともと自然にできたものを採集して食されていたが、最近では栽培もされるようになり、多くの食用マッシュルームは栽培されたもので、その利用は生鮮食用材料としてだけではなく、食品製品の製造への利用が拡大している。
今年の3月にカリフォルニア州アナハイムで開催された自然有機食品の展示会である Natural Products EXPO Westでも、マッシュルームを使った製品が多く展示されていた。それらを含めたマッシュルームを使った製品を紹介してみよう。
肉代替製品
Quorn社のマイコプロテインを使った肉代替製品
マッシュルームを使った肉代替製品はかなり前から出されている。Quorn社は1983年からマッシュルーム由来のフザリウム菌から作り出されるマイコプロテインを使い肉代替製品を出している。

現在では13ヶ国で販売されており、製品も牛肉、鶏肉、ターキー肉の代替製品を10数種類出している。以前はシーフードでも出していたが、最近は牛肉と鶏肉代替製品に絞って出しているようである。
Shroomeats社の挽肉代替製品
Shroomeats社はシイタケ・マッシュルーム、エンドウ豆プロテイン、ヒマワリ油、塩、コショウ、ポテト粉の6成分だけを使った挽肉代替製品を作り、“Mushroom Patties”、“Mushroom Balls”、“Mushroom Shred-It”の3種類で出している。

Meati Foods社の菌糸体肉代替製品
Meati Foods社は菌糸体で出来る糸状体を“Mushroom Root”と呼んで、これを使った肉代替製品“Crispy Cutlets”、“Classic Steaks”、“Classic Cutlets”、“Carne Asada Steaks”の4種類を出している。

“Classic Cutlets”の成分は、マッシュルーム・ルート(糸状体)、(以下2%未満の成分)塩、天然フレーバー、アカシアガム、オーツ麦繊維、ひよこ豆粉だけで作っている。
50/50Foods社の肉代替製品
50/50Foods社は、アンガス・ビーフとマッシュルームを含む野菜を混ぜたハンバーガー・パテを出して、フレキシタリアンの多い若者層や肉を食べたいがより健康的な食品を食べたい層にアピールしている。

この“BOTH Beef & Vegetable Burgers”は、アンガス・ビーフとローストしたマッシュルーム、カラメル化したオニオン、米のようにしたカリフラワー、ブロッコリ、調理したガーリック、香辛料を混ぜて作ったものである。
My Forest Foods社のベーコン代替製品
ベーコン代替製品でもマッシュルームから作った製品が最近、数社から出されている。例えば、My Forest Foods社は菌糸体を約7~8cmの厚さの板状に育て、それをスライスして味付けをし、半乾燥してベーコン代替製品“My Bacon”を販売している。

これは170gで$7.99~$8.99の小売価格で出されており、実際のベーコンよりも高い。まだまだベーコンとは言えない製品が多く、これが市場で受け入れられるのは難しいと思われる。
ジャーキー製品
植物ベースのジャーキー製品は大豆たんぱくやその他の豆たんぱくで作った製品が出されているが、最近ではマッシュルームをジャーキーにした製品が増えてきている。今回の展示会では、数社が出していた。
Moku Foods社のエリンギを使ったジャーキー製品
Moku Foods社はエリンギ(King Oyster Mushroom)を乾燥してジャーキー製品を“Original”、“Hawaiian Teriyaki”、“Sweet & Spicy”、“Korean BBQ”、“Maui Onion”、“Lemon Pepper”の6種類のフレーバーで出している。

Pan’s Mushroom Jerky社のシイタケ・マッシュルームを使ったジャーキー製品
Pan’s Mushroom Jerky社はシイタケ・マッシュルームを使ってジャーキー製品を、“Original”、“Teriyaki”、“Zesty Thai”の3種類のフレーバーで出している。

これらも食べられるがジャーキー肉に比べると少し違和感がある。むしろマッシュルーム・スナックとして味付けなどを工夫して美味しくすれば、受け入れられるかもしれない。
グラノーラ製品
朝食用のグラノーラ製品は最近では日本でも食べられるようになってきた。アメリカには多くの種類のグラノーラ製品が販売されているが、その中にマッシュルームの成分を加えた製品が出てきた。
Amazing Graze社のヤマブシタケの抽出物を加えた製品
Amazing Graze社は、そのグラノーラ製品の中の2種類“Hazelnut Chocolate Granola with Lion's Mane Mushroom”と“Banana Bread Granola with Lion's Mane Mushroom”にヤマブシタケの抽出物を加えた製品を出している。

インターネットの説明では認識力を上げると言われているヤマブシタケ抽出物を入れていると書いているだけで、製品には時に機能性などは表示していない。
スナック製品
マッシュルームを使ったスナック製品で多いのはマッシュルームを乾燥させてチップスのようにしたものである。
Evil Snacks社のエリンギを乾燥したチップス製品
Evil Snacks社はエリンギを乾燥したチップス製品“Crunchy Mushroom Chips”を“Sour Cream”、”Zesty Thai”、“Shroom Original”の3種類のフレーバーで出している。

これにはビタミン、ミネラルが入っており、自然のうまみがあり、抗酸化剤が豊富に含まれており、エコ・フレンドリーとしている。
Wise Bars社のマッシュルームとアシュワガンダを使ったバー製品
Wise Bars社はマッシュルームとアシュワガンダを使った“Wise Bars”を“Intentional Snacking”として6種類のバー製品を免疫性、フォーカス、エネルギーの維持の機能性バーとして出している。

マッシュルームにはヤマブシタケ、冬虫夏草、霊芝、チャガ(カバノアナタケ)を単独あるいは混合で他の機能性成分と組み合わせて使っている。
コーヒー代替製品
マッシュルームを乾燥して粉末にし、それにコーヒーを混ぜた製品が出されている。
Om Mushrooms社のマッシュルームの粉末を使ったコーヒー代替製品
例えば、Om Mushrooms社は、“Om Superfood Mushroom Blend Coffee”を出している。

これはオーガニックのオーツ麦を使って作られたマッシュルーム(ヤマブシタケと冬虫夏草の2種類)の粉末とオーガニックのアラビカ・コーヒー、コーヒーベリー抽出物を混ぜたもので、“Helps Support Energy、 Focus、Immune Health”と表示している。これはサプリメントとして販売されている。
Joey社のマッシュルームとアダプトーゲンの入ったコーヒー代替製品
Joey社はマッシュルームとアダプトーゲンの入ったコーヒー代替製品“Joey”を出している。

これにはオーガニックのマッシュルーム・アダプトゲン・ブレンド(オーガニック冬虫夏草、オーガニック・霊芝マッシュルーム、オーガニック・ヤマブシタケ、オーガニック・アシュワガンダ根抽出物、L-テアニン)、ローストしたチコリの根、オーガニックのカカオ、オーガニックのタンポポ根、グルテンフリーのバーレイ麦抽出物、ガラーナ抽出物、オーガニック・シナモン、ヒマラヤ塩が入っている。
この粉末の小匙一杯に熱湯をいれて飲むとエネルギー、フォーカス、メンタルなどのパーフォーマンスを上げることができるとしている。この製品には食品の栄養表示があり、食品飲料として販売されているが、食品成分でないものも入っており、サプリメントになるのではないかと考えられる。
飲料製品
Melting Forest社のマッシュルーム成分を加えた機能性飲料
マッシュルーム成分を加えた機能性飲料がMelting Forest社から出されている。砂糖を使わずステビアなどの甘味料を使った炭酸飲料製品で、ヤマブシタケと冬虫夏草の抽出物(主にベータグルカン)を使い、コーヒー豆からのカフェイン、L-スレオニン、イザヨイバラ、ジンセンを加えたエネルギードリンクの“Mushroom Energy”(“Black Cherry”、“Mango Guava”、“Orange Cream”、“Strawberry Lemonade”の4種類)と、ヤマブシタケと霊芝の抽出物(主にベータグルカン)、L-スレオニン、イワベンケイの抽出物、レモンバーム抽出物、ビタミンB6を使ったストレスに対応する“D Stress”(“Coconut Pineapple”、“Strawberry Lavender”、“Watermelon Elder Flower”、“Yuzu Lime”の4種類)を出している。

Emotional Utility Beverage社の気分を落ち着かせる“Euphoric”
Emotional Utility Beverage社は気分を落ち着かせるGABA、抗炎作用と鬱症やストレスを予防すると言われているヤマブシタケのマッシュルーム抽出物、脳と神経機能に重要なマグネシウム、精神を落ち着かせるL-テアニン、ムード、エネルギーに関係するビタミンB類、気分を高揚させる緑茶カフェインを入れた“Euphoric”を出している。

他に、記憶力や集中力を高めたり、鎮静効果や気分が良くなる“Focused”も出しているが、これにはマッシュルーム抽出物は使われていない。
サプリメント製品
マッシュルームのサプリメントはずいぶん前から多く出されている。サプリメント業界で最近ホットな話題はグミ製品の拡大である。最初は食べやすいように子供用の複合ビタミン剤でグミ製品が出されたが、最近では大人用のサプリメント製品でグミ製品が非常に増えてきている。
Fungies社が出したマッシュルームの抽出物を加えたグミ製品
マッシュルームのサプリメントでもグミ製品が出てきており、その例としては、Fungies社が出した霊芝、ヤマブシタケ、冬虫夏草のマッシュルームの抽出物をグミ製品にしたものがある。

まとめ
このようにマッシュルームやその抽出物を加えた製品が増えてきているが、マッシュルームについての健康効能はまだ確実に証明されておらず、食品の機能性の表示は認可されていないので、特に機能性を表示したものはない。機能性についてはこれからの研究に期待されるが、アメリカでは許されている身体の機能や構造についての表示、例えば「心臓の健康」とか「免疫性の維持」、「脳の機能に関係する」などで、マッシュルームの摂取が健康によいことを消費者に分かるように表示している。
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この記事を書いた方
この記事を書いた方
JTCインターナショナル社長吉田隆夫
アメリカのフロリダ大学の分子進化研究所で2年間研究、さらにシラキュース大学で後にノーベル賞受賞された根岸英一先生の教室で2年間有機金属化学を研究し、IFF社の研究所で約11年間香料の研究。その後、カーリンフード社(後にブンゲ社)に5年勤務、独立して食品産業のコンサルタントを30年以上続けている。アメリカ食品産業研究会、e-食安全研究会、クリエイティブ食品開発技術者協会を設立し、その活動をしている。
http://www.e-syoku-anzen.com/