清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

2020年に向けて広がるエシカルという視点

「食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気」

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2017年10月01日

2020年に向けて広がるエシカルという視点

 2020年の東京オリンピックに向けて、日本の食業界においても欧米同様、”エシカル”という視点が求められるようになるでしょう。
 ”エシカル”とは、直訳すると“倫理的””道徳上の”といった意味で、それが食に特化された場合、”エシカルフード”と呼ばれます。端的に表現すると“良識ある食生活”ということになり、それは、減(無)農薬や資源の保護・養殖といった「持続可能な食料調達」、地産地消やフェアトレードなどの「流通・加工時の配慮」、ベジタリアンやビーガンといった「健康的な食事法(思想・宗教など含む)」、フードバンクなどの「フードロスの削減」という要素で構成されます。

東京オリンピックの食材調達はエシカルフードで

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 持続可能性に配慮した運営計画 第一版」を策定、1月公表しました。
 食材調達については、「品質やコストなども加味し、できる限り近隣の産地や季節の食材を選択することにより、物流に係るCO2の排出削減を図る」などとしています。さらに、生鮮食品については、「持続可能性の観点から定めた基準を満たすもの」を、加工食品については、「主要な原材料が同基準を満たすものを可能な限り優先的に調達しなければならない」などとしています。

TOKYOオリンピック2020

小売りはエシカル視点で高付加価値PBを開発

 イオンは、素材・環境配慮型のPB「トップバリュグリーンアイ」を刷新するのを機にサブブランドを再構築し、「オーガニック」「ナチュラル」「フリーフロム」の3つを新設しました。2020年までに「オーガニック」を中心に100品目の食品を揃え、全国のイオングループ店舗で販売する計画です。
 「オーガニック」では、国際的なオーガニック認証を取得した商品を展開。通常商品の1.25倍以内の手頃な価格の食品を多く取り揃え、子育て世代を中心とした、価格に敏感な生活者の需要を掘り起こします。「ナチュラル」では、抗生物質や成長ホルモンを使用せずに育てた家畜の肉や平飼い鶏の卵など、オーガニック認証取得を目指す生鮮食品を展開します。「フリーフロム」では、合成着色料や合成保存料、合成甘味料などを使用しない加工食品を扱います。
 一方、日本生活協同組合連合会も、2017年度中に、環境に配慮したことを証明する国際認証を得た食品や飲料などの品揃えを8割増の125品程度に増やします。環境意識の高い生活者が増えていることに対応し、価格競争とは一線を画した付加価値を訴えます。

オーガニック認証を受けたミニトマトと抗生物質や成長ホルモンを使用せず育てられた鶏の卵

食品メーカーは原料調達と商品開発にエシカルを

 日本コカ・コーラは、2020年までに、飲料の原材料となる主要な農産物を持続可能な供給源から100%調達することを目指し、国内の生産者農家と協業して「持続可能な農業」を目指す取り組みを進めています。具体的には、茶系飲料の茶葉の産地で農業の持続性を高める取り組みを行っていて、生産者からは、99%に近い回答でこの取り組みを「導入してよかった」との声が挙がっているそうで、コカ・コーラと生産者が理解し合える状況になり始めていることを、お互いに実感しているといいます。
 また味の素ゼネラルフーヅは、主力のボトルコーヒー全商品に資源循環型の再生耐熱PET樹脂を100%使用したペットボトルを導入。ペットボトルからペットボトルを再生する技術を活用し、石油由来の原料資源を使用しない「完全循環型リサイクル」を世界の飲料メーカーで初めて実現しました。

ペットボトル

外食市場にもエシカル的発想の店が登場

 5月、東京都世田谷区にオープンしたシーフードレストラン「BLUE」。こちらで提供するメニューには、海のエコラベルと呼ばれる「MSC認証」や、養殖版海のエコラベルと呼ばれる「ASC認証」の水産物や、産直で仕入れる日本各地の未利用魚など、サスティナブルなシーフードが使われています。
 以前、福井県で同様の店をやっていた時は、認証を取った魚介類の安定供給が課題でしたが、東京進出に当たりマルハニチロとタッグを組むことで、認証水産物の安定的な確保が可能になったと言います。

産直市場で販売されている海産物

海外で積極的に取り組まれている”アニマルウェルフェア”

 エシカルへの対応の中でも、特にこれから話題になりそうなのが、”アニマルウェルフェア(動物福祉)”です。家畜などの動物も倫理的に飼育すべきという考え方で、ヨーロッパを中心に、米国、カナダ、オーストラリアなどにも広がっています。
 EU圏のスーパーの卵売り場には、フリーレンジ(放し飼い)やエンリッチ・ケージ(快適性を付加したケージ)と表示された卵製品が並びますし、米国では「ホールフーズマーケット」が販売する精肉に関し、”ケージ飼いした家畜は扱わない””鼻輪や耳標を付けない””動物中心に考えられた農場で全生涯を過ごせること”といった自社基準を設けていて、価格は高めながら、生活者に受け入れられているといいます。さらに「ウォルマート」は、販売しているすべての卵を2025年までに平飼い卵(ケージフリー)にすると発表しました。前後して、大手スーパーマーケット各社が同様の宣言をしています。
 外食市場でも同様の動きが加速しています。昨年9月、マクドナルドは、平飼い卵への切り替えを発表。それが契機となって、この取り組みは外食企業や食品卸、小売業界と食品業界全体に広がりました。
 これまで平飼い卵は、通常のケージ飼い卵に対する高価な代替アイテムとして取り扱われてきました。価格は、高いものになるとケージ飼いの2.5倍以上。それがここ数年で売れ筋となり、とうとう業界全体が10年ほどかけてこのニッチ商品をマス商品へ転換することに成功したのです。
 この動きの背景にあるのが、生活者のヘルシー志向やウェルネス志向の高まりです。カロリーや塩分といった自身の健康から、自らが食べる食品がどう扱われているのかというところへ興味が広がり、「人間的に扱われた鶏による元気な卵」というイメージの平飼い卵を買うようになっています。これと同じようなことが牛肉でも起きつつあり、高価な牧草牛が売れ始めていて、米国では、売り場が拡大しているのがひと目で分かるほどになってきています。

鼻輪や耳標をつけず、放し飼いでのびのびと暮らしている牛たち

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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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