清田ダイアリー KIYOTA DIARY
時短ニーズの反動?「日本風スローフード」ブーム
食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気
2016年02月01日
忙しい生活者たちの根強い “時短” ニーズ。料理には簡便性が求められ、手早く作れて失敗しない調理加工品やカット野菜が相変わらず人気です。その反動でしょうか。昔の豊かで穏やかなスローライフに憧れるかのように、乾物や干物、発酵食品といった日本古来の食や食文化を “日本風スローフード” として楽しむ生活者が増えています。
脱・和風の乾物料理
例えば、乾物。「水戻しが面倒」「和食にしか向かない」などのイメージがあり、これまで何となく地味な存在だった乾物ですが、東日本大震災をきっかけに、その保存性や栄養価の高さに注目が集まり、再評価されました。そして今、生活者の心をとらえているのは、乾物を自由な発想でアレンジした、ニュースタイルの乾物料理です。
乾物料理ユニット「DRY and PEACE」が紹介して注目を集めたのが、乾物を何と、水ではなくヨーグルトで戻すという方法。干ししいたけやかんぴょうなど普段和食以外にあまり使わない乾物が、ヨーグルトで戻すだけで洋風に変身し、しかも栄養分もうま味もアップします。さらに、スパイスを加えてエスニック風にするなど、アレンジも自在です。一方、カルボナーラやブルスケッタといったイタリア料理に乾物を取り込んだ “乾物イタリアン” も登場。人気シェフによるレシピ本も刊行され、話題を呼びました。加えて、インターネットの料理検索サイトでは、グラタンやフレンチトーストなど、脱・和風の乾物料理レシピが続々と投稿され、家庭で試す生活者が増えています。
市販品でも、ヘルシーでバラエティ豊かな新・乾物加工食品が人気です。 “切り干し大根の焼きそば風” は、乾燥させた大根や人参などの具材にソースをセットした商品で、通常の焼きそばと比べ食物繊維は約3倍、カロリーは3分の1と、食べ応えもヘルシー感もたっぷり。そのほか、 “かんぴょう練り込みうどん” や “ひじきジャム” 、 “わかめ入りロールケーキ” など、さまざまに形を変え、食べやすく工夫された乾物加工食品が発売されています。

おしゃれに変身した干物
かつて日本の朝食の定番だったものの、魚離れの中で影が薄くなっていた干物。これも最近、従来の「干物観」を覆すような新スタイルが提供され、これまで干物にあまり馴染みのなかった世代をも惹き付けています。
例えば、ある干物専門店が販売するのは、ウルメイワシの丸干しを焼いてオイルに漬け込んだ干物のマリネ。ドライトマトやフライドガーリック入りの “南イタリア風” など、洋風の味付けが若い層に好評だといいます。またある会社では、柑橘類などと共に真空パックした干物に、ソースやオイルを添えた商品を開発。干物と思えない高級感やワインにも合う味わいが人気です。
一方家庭においても、味もうま味もしっかりしている干物の良さを生かしたアレンジ料理に挑戦する動きが広がっています。 “干物のガーリック焼き” や “干物のラタトゥイユ” など、おしゃれに変身した干物に、もはや「魚を日持ちさせるための保存食」といったイメージはありません。

子育てのように楽しむ発酵食品
若い女性の中には、味噌やぬか漬けといった伝統的な発酵食品づくりに挑む “仕込み女子” が増えています。日夜素手でかき混ぜて慈しむ発酵食品をペットに例える人もいるほどで、漬け込み、育て、変化していくさまが女性たちの心をとらえているようです。事実、味噌作りの講習会は、定員オーバーになることもあるという盛況ぶりです。
果物や野菜を漬け込む酵素シロップ、レモンを塩に漬け込むレモン塩、その前は、塩麹。近年、さまざまな漬け込み食品がブームになりました。女性たちにとって、常に目をかけ、手をかけながら成長させる過程は子育てのようで、母性本能をくすぐられるのかもしれません。

米国で高まる発酵食品人気
ちなみに、発酵食品人気は、米国でも高まっています。発酵乳飲料や味噌のほか、麹も知る人ぞ知る発酵アイテムとか。エスニック食材のひとつにすぎなかった韓国のキムチも、ニューヨーク名物ホットドッグのフィリングとしてメジャーなドイツのザワークラウトも、発酵食品として再定義され、いろいろな作り方が紹介されています。さらに発酵野菜の料理本も次々と出版され、人気です。背景としては、健康への関心の高まりと共に、和食ブームによる「UMAMI」という概念の流行。さらには、料理を科学的に解明することが好きなミレニアル世代(米国で1980年代から2000年代初めに生まれた10代、20代の若者の総称)の興味にマッチしていることが挙げられます。

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この記事を書いた方
この記事を書いた方
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子
加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。
http://himeko.co.jp/