清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

日本の国民性に合う?“ハイブリッドなプラントベースフード”

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授 山下智子

2024年08月01日

日本の国民性に合う?“ハイブリッドなプラントベースフード”

 世界の人口増加によりタンパク質の需給バランスが崩れる「プロテインクライシス」の解決策になるとして、国内外で注目されている、代替タンパク質のひとつ「プラントベースフード」。そもそも肉食過多ではなく、欧米と比較すると、ビーガンやベジタリアンが少なく、肉食に関する宗教的な縛りもない日本において、健康や環境に配慮する気持ちはあるものの、やはりおいしさは何よりも大切。日本の生活者が求めるプラントベースフードは、動物性食材と植物性食材を組み合わせた“ハイブリッドなプラントベースフード”なのかもしれません。

 食べ慣れた味や食感を再現している“ハイブリッドなプラントベースフード”は、何事においても曖昧な国民性にとても合っていると同時に、ハードルの低さが、食に保守的な生活者の興味を惹くものと思います。とは言え、「ヘルシー志向」と「食のインクルーシブ化」「インバウンド消費」が高まる中、プラントベースフードの必然性は高まるばかりです。適所適材、プラントベースフードと“ハイブリッドなプラントベースフード”を両立させる食市場が日本らしいのはないでしょうか。

プラントベースフード5つの分類

 日本におけるプラントベースフードは、原料の特性上、植物系、藻類系、昆虫系、微生物発酵系、細胞培養系の5つに分類できます。日本市場では、植物系と藻類系が中心で、大豆やエンドウ豆を素材にする植物系では、フードテックベンチャーのDAIZ(熊本)や不二製油など、さまざまなメーカーによる開発競争が活発です。また藻類系はタンパク源としてだけでなく、CO2を吸収・貯留する働きがあることから、世界中で注目されていて、日本では、スタートアップのシーベジタブル(高知・安芸)が研究開発しています。きのこから発酵によって作られるプラントベースフードもあります。海外ではいち早く研究が進んでいて、日本でも雪国まいたけなどが開発を始めています。一方、細胞培養系は日清食品ホールディングスなどが開発を急いでいますが、コストや制度面から本格的な流通は2030年以降になりそうです。

プラントベースフードの5つの分類図(植物系、藻類系、昆虫系、微生物発酵系、細胞培養系)

コンビニでの活用が広がる

 国内の業務用を含むプラントベースフード市場は、現時点では小さいものの、コンビニのプライベートブランド商品の原料として採用されるなど、用途はますます広がっていて、今後、急拡大する見通しです。とは言え、そのスピードは欧米に比べてかなり鈍く、食料安全保障の強化と新しい産業の創出に向けた取り組みの意味でも、喫緊の課題になっています。
 セブン-イレブン・ジャパンは、昨年7月に始めた環境に配慮した商品シリーズ“みらいデリ”を拡充。商品数を約4倍に増やしました。DAIZが開発した発芽エンドウ豆由来の“ミラクルミート”と挽き肉を合わせたキーマカレーや、具材に“ミラクルミート”とツナを合わせたおにぎりやロールサンドなど、ハイブリッドプラントベースフードを使った商品を発売しています。セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は、「利便性など経済的価値を追求してきたが、今後は社会問題などを解決する社会的価値も欠かせない」と話していて、環境にやさしい取り組みとして“みらいデリ”を強化します。

ブン‐イレブン・ジャパン「みらいデリ」
画像引用元:PR TIMES セブン‐イレブン・ジャパン「みらいデリ」

 ファミリーマートも、プライベートブランド“ファミマル KITCHEN”から、いろは(東京・港)が運営するオランダ生まれのプラントベースミートブランド“ザ・ベジタリアン・ブッチャー”が監修した商品を、東京都と神奈川県の一部店舗で発売しています。“ザ・ベジタリアン・ブッチャー”の大豆ミートは、小麦タンパク質や大豆タンパク質、海藻など多種多様な植物由来原料で作られているのが特徴で、今回は大豆ミートなのに肉々しいソイチキンを採用しています。いずれも動物性由来の食材も使用しているので、ハイブリッドプラントベースフードで、ベジタリアン対応商品ではありません。

「ファミマル  KITCHEN」
画像引用元:PR TIMES ファミリーマート「ファミマル KITCHEN」

ハイブリッドな唐揚げベースと鮭フレーク

 日本アクセスは、大豆ミートと卵白を使用した唐揚げベース“謎唐(なぞから)”を不二製油と共同開発しています。プラントベースフードと改めて言われると生活者は構えてしまい、市場拡大の足かせになると判断。あえてプラントベースフードとは謳わず、ネーミングのわくわく感や驚きから入ってもらい、「食べておいしい、楽しい、ヘルシー」を訴求します。主原料は大豆由来ですが、おいしさを追求するため原料の一部に卵白を使用。ビーガンやベジタリアンに向けた商品ではないため100%植物性を意識せず、大きな枠で開発しています。

 大阪のセイウは、エンドウ豆由来のタンパクをブレンドしたハイブリッド製品“鮭フレーク”を発売しました。セイウが輸入販売するエンドウ豆タンパク製品を、北海道の罐詰会社が鮭フレークに約35%ブレンドして製品化したもので、試行錯誤のうえ辿り着いた35%という比率により、本物の食感を損なうことなくエンドウ豆が持つ豆臭さを効果的にマスキングすることに成功しました。展示会で試食した来場者からは、「言われなければ本物と区別がつかない」「おいしくて、水産資源の保護を謳える。ウチのスーパーの惣菜コーナーで検討したい」などと非常に好評だったといいます。

セイウ「鮭フレーク」
画像引用元:PR TIMES セイウ「鮭フレーク」

ハイブリッド卵液ができる“MIRACLE EGG”

 前出のDAIZは昨年、鶏卵の価格高騰が続く中、鶏卵と混ぜて“ハイブリッド液卵”として使用する植物性タンパク質由来の液卵“MIRACLE EGG(ミラクルエッグ)”の開発に成功。本年中に業務用液卵と混ぜるハイブリッド食品として商品化し、惣菜や製菓・製パンなどの食品メーカー、一般量販店、外食店などへの提供を始めます。“MIRACLE EGG”は、大豆を原料としながらも、鶏卵と同じ温度・加熱時間で固まるうえ、鶏卵と混ぜ合わせても風味に違和感がないのが特徴。そのため、従来の植物性代替卵商品では難しいとされてきた業務用液卵との混ぜ合わせが可能になり、既存の卵加工品と同じ製造インフラ、同じ調理法を用いることができます。DAIZは、鶏卵との共存による“ハイブリッド戦略”の一環として“MIRACLE EGG”を市場に投入することで、鶏卵市場全体の持続可能性への貢献を目指します。

DAIZ「MIRACLE EGG」
画像引用元:PR TIMES DAIZ「MIRACLE EGG」

ハイブリッド食べ比べバーガー

 宅配寿司“銀のさら”などを運営するライドオンエクスプレスは、プラントベースミートと牛肉の使用割合の違いを試すことができるハンバーガーキット“Craft Burger(クラフトバーガー)”が楽しめる新事業、「Craft Eats(クラフト・イーツ)」を始めました。フレンチシェフ監修の下、プラントベースミートと最高品質の和牛をブレンドしたハイブリッドなオリジナルパティを開発。植物肉の配合率がそれぞれ100%、75%、50%、25%、0%の5種類のパティを、ミニバーガーにして食べ比べできるセットにしました。例えば植物肉25%だと、ほぼ和牛の味に近いのですが、食感に植物肉特有の軟らかさが感じられるといいます。

ライドオンエクスプレス“Craft Burger”
画像引用元:PR TIMES ライドオンエクスプレス“Craft Burger”

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清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

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この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役女子栄養大学客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

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