清田ダイアリー KIYOTA DIARY
パンデミック後の食品の傾向
アメリカにおける食品の傾向Ⅰ
2021年08月01日
コロナのパンデミックは世界の食品産業に影響を与えた。もちろんアメリカの食品産業も同じように大きな影響を受けた。家庭内で食事をすることが増え、家庭料理を助けるための製品や、調理が簡単にできるキットがよく売れたり、コロナに罹らないよう免疫性を高める食品がより求められるようになったり、以前よりも新しい製品を試す人が増えた。パンデミックが収まれば、こうした傾向がすべて続くとは限らないが多くはそのまま引き続くと考えられる。
今回はそうした傾向の中でも、健康食品の分野でユニークな製品を例にとってその成分も含め説明してみよう。
健康志向食品の増加
この十数年の間に、身体の健康を維持するには摂取する食品が重要であることがより多くの消費者に認識されるようになった。身体にいい食品を摂取したいと考える人は、体重や、糖尿病、高血圧をコントロールする食品、免疫性、認知力や思考力などの脳機能を維持する食品、ストレスや心配性を抑える食品などを求めている。
また、飲料にも同じような機能性を期待している。こうした機能性がある食品飲料と共に、最近は摂取しすぎると身体に悪い成分を少なくした食品・飲料、特に砂糖と炭水化物の少ないものが求められている。
機能性スナック
パンデミックではコロナに罹らないよう免疫性を維持あるいは高めたいとする人は多く、ビタミンCやエルダベリー、亜鉛、プロバイオティックスが入ったサプリメントがよく売れた。食品でもそうした機能性を表示した製品が店に並び、例えば、Nature's Garden社では免疫性を上げる機能性スナック製品を3種類出している。

”Fruit Balls Immune Booster”は、デーツペースト、ペア・ピューレ、ストロベリーピューレ、アップルジュース、クルミ、アーモンド、ペピタス(かぼちゃの種)、ヒマワリの種、ブルーベリー、クランベリー、亜麻仁を混ぜて丸めたものにココナッツフレークをまぶし、免疫性を維持あるいは高めることができるとする免疫性ミックス(エルダベリーエキス、亜鉛、ビタミンC、ビタミンD、プロバイオティックス(マイクロカプセル化した乳酸菌Rhamunosus 50億CFU))を加えている。
”Probiotic Mega Immune Mix”は、アーモンド、グレーズした生姜、ペピタス、クランベリータート・チェリー、ヘーゼルナッツ、クルミ、カシューナッツのミックスに上記の免疫性ミックスを混ぜたものをMCT油(中鎖脂肪酸トリグリセライド)でコーティングした製品である。

”Probiotic Immune Booster”は、アーモンド、ペピタス、クランベリー、タート・チェリー、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ブルーベリーのミックスに免疫性ミックスを混ぜ、MCT油でコーティングしている。
健康的にダイエットするための冷凍食品
また、健康的な食品を食べて体重をコントロールをすることが大事であるという認識が広まり、最近ではケト(ケトジェニック)ダイエットを実践する人が非常に増えており、ダイエットをしていない人でも炭水化物の摂取を少なくする人が増えている。そのため”Keto”あるいは “Low Carbo”と表示した製品が非常に多く出されている。

ConAgra Foods社は健康的な冷凍ミール食品の”Healthy Choice”ブランドで、ケトダイエットをしている人のために新しく”Zero Bowls”シリーズを販売している。
“Sesame Chicken with Zoodles”、”Came Asada”、”Verde Chicken”、”Tomato Basil Chicken”の4種類で、これらには砂糖は一切添加しておらず、保存料、合成色素、合成フレーバーも使われていない。約300gの容量に対し、炭水化物は8g-10gしか含まれない。ちなみにZoodlesとはズッキーニをスパイラル状に切ったもので、Noodlesをもじっている。
低炭水化物のパン

Aunt Millie's Bakeries社は”Live”ブランドで低炭水化物のパン”Carb Smart”を販売している。このパンは1食分(28g)で炭水化物量が実質1gしか含まれないという。
成分は、水、難消化性タピオカスターチ、小麦グルテン、単離小麦プロテイン、イヌリン、イースト、オーツ麦食物繊維、アルロース、大豆油、グアーガム、塩、塩化カリウム、酢、DATEM(ジアセチル酒石酸モノグリセライド)、プロピオン酸カルシウム(保存料)、セルロース・ガム、アスコルビン酸、マルトデキストリン、ソルビン酸(保存料)、カラギーナン、デキストローズ、大豆油(水素添加)、合成香料、乳酸、還元鉄、サイアミンモノ硝酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、葉酸である。砂糖の代わりにアルロースを使っている。
オーガニック食物性乳飲料

対してMooala社はケトダイエットのための飲料としてオーガニックの植物性乳製品 “Plant-Based Keto Mylk”を出している。この植物性乳製品はココナッツクリームとMCT油、ココナッツ油、エンドウ豆プロテインとその他の成分で作られている。この製品はケトダイエット認証製品で、総炭水化物量は1g、砂糖はゼロで5gのMCT油が入っている。
ケトダイエットにも使えるスナック・バー

また、Kellogg社ではケトダイエットに使えるスナック・バー製品を“Special K”ブランドで出している。フレーバーは”Chocolate Almond Fudge”と“Peanut Butter Fudge”の2種類あり、総炭水化物量は2g、プロテインが7g入っているのに対し砂糖は1gで、ケトダイエットに限らず、ヘルシーなスナックとしても食べられる。
パンデミックで変わった飲み物
パンデミックは家庭で過ごす時間を増やし、町中でウオーキング、ランニングなどのエクササイズをする人が増えた。そのためスポーツ用ドリンクではエネルギーだけでなく栄養も同時に摂取できるものが増えている。
牛乳の持つ性質を活かしたスポーツドリンク

GoodSport Nutrition社は牛乳を使って作られた新しいスポーツドリンク"Good Sport"を出している。牛乳は自然の電解質を含み、効果的な補水をする炭水化物も入っている。
こちらの製品は普通のスポーツドリンクと比べても3倍の電解質が含まれ、ラクトース・フリーでカルシウムが豊富に含まれ、糖分は33%少ない。成分は、限外ろ過でタンパク質を除いた牛乳、天然フレーバー、モンクフルーツエキス、クエン酸、エリスリトール、ラクターゼ酵素、海塩で、全成分は天然であり、ビタミンB類も入っている。
また、室温保存が可能で、“Lemon Lime”、”Fruit Punch”、”Citrus”、”Wild Berry”の4種類のフレーバーがある。
機能性スポーツドリンク

他にもスポーツ用ドリンクの分野ではCelsius社が機能性飲料を”Fitness Drink”としてスポーツジムなどでも販売しているが、最近、分岐アミノ酸を使った”BCAA + energy”シリーズを3種類出している。
分岐アミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類を混合し、さらに電解質とビタミンD、カフェインを加えており、運動した後の回復を速め、筋肉の疲れ、損傷、痛みを少なくする効果があるとしている。
3種類のフレーバーは”Sparkling Tropical Twist”、”Sparkling Tart Cherry Lime”、”Sparkling Blood Orange Lemonade”。
機能に合わせて選ぶ食品
近ごろは高年齢層の人だけでなく、若い人でも脳機能を維持またはよくしたいと思う人が増えており、そうした人を対象にした製品がよく見かけられるようになっている。
欲しい機能と気分に合わせて選べるバー

例えば、オンラインで販売されている”Good Mood Superfood Bar”は、抗酸化剤、アダプトゲン、ニュートロピックスのスーパーフードを使って、ストレスを下げ、ムードを高め、エネルギーを得ることのできるバー製品である。
”Blueberry Almond”、”Peanut Butter Cup”、” Toasted Coconut”の3種類あり、それぞれの製品に機能性成分として、ムードに効果のあるジンセン、心を落ち着かせるアシュワガンダ、エネルギーのためのノムシタケ、脳の燃料としてのMCTを使っている。またエンドウ豆プロテインを使って1個で10gのプロテインを入れている。
幼児でも食べられる、発達機能性食品

また、Ingenuity Brands社は幼児の脳機能をよくする機能性ヨーグルト・スムージー、” Brainiac”を出している。これらにはDHAとEPAのオメガ3脂肪酸、コリン、オメガ6脂肪酸が含まれている。他に砂糖分が50%少ない製品や、チューブ入り、アップルソース製品などがある。
子どもは生まれて1000日間が最も脳機能が早く発達するとされ、この時期に十分な栄養が必要であるとしている。子どもの発達を助けるためにオメガ3脂肪の摂取が必要であるが、多くの子どもは十分に摂取していないと指摘し、脳の機能の発達を助けるこの会社の自社ブレンド“Brain PackR”(オメガ3脂肪、コリン、オメガ6脂肪)が入っている、これらの製品を摂取するべきであるとしている。
機能性コーヒー

日常的に飲むコーヒーにも機能性を備えた製品が増えている。もともとコーヒーはストレスを解消する飲料であるが、それに気分を落ち着けるアダプトゲンであるアシュワガンダとトゥルシー(ホーリーバジル)が入ったコーヒー”Adaptogen Coffee”がFour Sigmatic社から出されている。

また最近は痛みを和らげる、心配を少なくする、リラックスするあるいは炎症を少なくするという機能性があると言われているCBD(カンナビジオール)を入れたサプリメントや飲料が増えてきている。例えば、Kickback社はCBDが入ったコーヒー豆とボトルに入ったアイスコーヒー製品を出している。
最後に
コロナウイルスの感染拡大は人々の健康意識をさらに高めるきっかけとなった。食品分野においても引き続き「健康」というキーワードは重要視されていくこととなりそうだ。
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この記事を書いた方
この記事を書いた方
JTCインターナショナル社長吉田隆夫
アメリカのフロリダ大学の分子進化研究所で2年間研究、さらにシラキュース大学で後にノーベル賞受賞された根岸英一先生の教室で2年間有機金属化学を研究し、IFF社の研究所で約11年間香料の研究。その後、カーリンフード社(後にブンゲ社)に5年勤務、独立して食品産業のコンサルタントを30年以上続けている。アメリカ食品産業研究会、e-食安全研究会、クリエイティブ食品開発技術者協会を設立し、その活動をしている。
http://www.e-syoku-anzen.com/