清田ダイアリー KIYOTA DIARY
乳の健康機能に魅せられて(タンパク質)
食品の健康機能に魅せられて
2026年01月01日
はじめに
食品の健康機能に魅せられての第2回は、乳タンパクである。乳には、牛乳、母乳から発酵乳などいろいろなジャンルがあり、また、乳に含まれる成分も多種多様であり、身近な素材である。『乳の健康機能に魅せられて(ペプチド)』でも紹介したが、「乳は食べるために生まれてきた唯一の食物である」ことを裏付けるように、乳には、さまざまな機能性成分が含まれていることがわかってきている。元来、機能性成分が合目的に乳に含まれていると考えると、まさに乳は神の造った食物のように神秘的でさえある。そこで、今回は乳に含まれるタンパク質と健康について紹介する。タンパク質はアミノ酸がペプチド結合で連なった構造であり、アミノ酸が50個以上ペプチド結合したものをタンパク質と呼ぶ場合がある。
[1] 牛乳タンパク質の特徴
(1) 高い栄養価と優れた消化吸収
・栄養価の高さ
必須アミノ酸をバランス良く含み、1日に必要な必須アミノ酸を牛乳約2杯分で満たすことができる。
・消化吸収の良さ
特にDIAAS(消化・吸収・利用効率)という新基準では、乳タンパクの栄養価が高いと評価されている。DIAASとはDigestible Indispensable Amino Acid Score(消化性必須アミノ酸スコア)の略で、食品のタンパク質の質を評価する国際的な指標である。必須アミノ酸の含有率に、消化吸収率を考慮して算出され、従来のスコアよりも正確に評価できる。
(2)2つの主要なタンパク質

(2)-①カゼイン (約80%)
・特製
水に溶けにくく酸に触れると固まる性質がある。
・消化吸収
胃で固まることで消化がゆっくりになり、長時間にわたって血中アミノ酸濃度を維持する。
・機能
腸の炎症を抑制する。カルシウムの吸収を助ける働きがある。また、様々な健康機能性ペプチドの原料である。
(2)-②乳清タンパク質 (ホエイプロテイン、約20%)
・特製
水に溶けやすく、胃酸で固まらず素早く小腸で消化吸収される。
・消化吸収
吸収が速いため、運動後の筋肉合成に有利とされる。
・機能
腸の炎症を抑制する。骨を強くする働きや、貧血の予防・改善など様々な機能性がある。また、 様々な健康機能性ペプチドの原料である。
(3)機能性と利用

・体づくり
筋肉合成を促す必須アミノ酸で分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン、ロイシン、イソロイシン)が豊富である。
・健康維持
腸の炎症を抑制する。カゼインやラクトフェリンは免疫力向上、乳清タンパク質は骨の強化や腸内環境の改善などに役立っている。
・多様な加工食品
これらの特性から、育児用ミルク、流動食、ヨーグルトやチーズなど様々な食品に利用されている。
乳タンパク質とは、牛乳に含まれるタンパク質の総称で、「カゼイン」と「乳清タンパク質」の大きく2種類に分けることができる。いずれも良質なタンパク質であるが、構成するアミノ酸やその吸収速度などで異なる特徴を持っている。
カゼインは、乳タンパク質の主要な成分として約80%を占めている。牛乳に含まれるカゼインは比較的ゆっくりと吸収されることが特徴である。摂取後、長い時間にわたって血中のアミノ酸濃度を維持でき、体内のタンパク質の分解を持続的に抑制することから、例えば睡眠前に摂取して睡眠中の筋肉分解を抑制する効果が期待される。
乳清タンパク質は、乳タンパク質の約20%を占め、吸収速度が速いことで知られている。アミノ酸構成にも特徴があり「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」が豊富である。身近なところで言うと、アスリートが摂取する「プロテイン」の原料として知られている。私たちの筋肉を構成するアミノ酸にも分岐鎖アミノ酸(BCAA)が多く含まれるので、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の多い乳清タンパク質は筋肉合成に有利である。この乳清タンパク質は、主にチーズの副産物として得られる乳清から製造される。
[2] 牛乳タンパク質を活用した保健機能食品
(1)MBP(乳塩基性タンパク質)
・許可表示
本品は、骨密度を高める働きのあるMBP(乳塩基性タンパク質)を含んでおり、骨の健康が気になる方に適した飲料である(機能性表示食品)。牛乳にはたんぱく質が豊富に含まれているが、そのうち乳清タンパク質は牛乳全体のわずか0.6%である。この成分は詳しく解明されていなかったが、研究の結果、乳清タンパク質の中からMBPの抽出に成功した。まさにMBPは希少な機能性タンパク質である。
MBPとは、乳清タンパク質のうち塩基性のタンパク質の総称である。培養細胞の試験では、MBPは骨を作る骨芽細胞の増殖と分化を促進し、骨を壊す破骨細胞による骨吸収を抑制することが明らかにされている。
ヒト試験では、成人男性30人にMBP(300mg /日)飲料を摂取させたところ、摂取前後で、骨形成マーカーである血清オステオカルシン濃度は有意に増加し、骨吸収マーカーである尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチドは有意に減少した。この結果から、ヒトにおいてもMBPは骨のリモデリングのバランス保ちつつ、骨形成を促進し骨吸収を抑制することが示唆されている。MBPの6ヶ月間摂取により、プラセボ群と比較して、骨密度上昇率が有意に高くなることが報告されている。
(2)ラクトフェリン

牛の乳清タンパク質に含まれる「ラクトフェリン」は、鉄分の吸収を促す働きがあることが報告されている。ラクトフェリンは母乳や牛乳に多く含まれる成分で、鉄を結合して体内に取り込まれやすくする働きがある。
ラクトフェリン200とは、日本初のどを乾燥からケアする免疫サポート飲料(機能性表示食品)である。ラクトフェリンが健康な人の免疫機能を維持し、空気の乾燥に伴う一時的なのどの乾燥感を軽減する。ラクトフェリン含有食品を4週間摂取すると、ラクトフェリンを含まないプラセボに対して、免疫細胞のリーダーpDC (プラズマサイトイド樹状細胞)の働きを助け、免疫機能を健康な状態に維持した。
ラクトフェリンはもともと人の体に備わっているタンパク質の一種のため、pDCにはラクトフェリンを取り込む仕組みが備わっている。ラクトフェリンがpDCの働きを助け、免疫細胞全体の活性を高めると考えられている。
[3]保健機能食品に許可された牛乳タンパク質の健康機能以外の牛乳タンパク質の健康機能性
(1)乳清タンパク質及びその構成タンパク質の脂質代謝改善機能

高コレステロール食を摂取したラットでは乳清タンパク質やその構成タンパク質であるβ-ラクトグロブリンやα-ラクトアルブミン摂取により、血清や肝臓コレステロールが低下することが報告されている。
マウスの高脂肪・高Ca食摂取時において、乳清タンパク質やその構成タンパク質(β-ラクトグロブリンやα-ラクトアルブミン、ラクトフェリン)の摂取は抗肥満作用を発揮することが報告されている。
ヒト試験でも、ラクトフェリン100mgタブレットを56日間摂取すると内臓脂肪が有意に減少することが明らかにされている。乳児では牛乳カゼインと牛乳乳清タンパク質の比率を変えて摂取させた結果、乳清タンパク質が血清コレステロールを正常化することが報告されている。
ところで、母乳には血清コレステロールを正常化させる作用があることが報告されており、母乳中の乳清タンパク質が有効であると推定されている。また成人においても、乳清タンパク質摂取が高コレステロール血症を改善することが報告されている。
(2)牛乳タンパク質の抗腸炎症作用

乳タンパク質(カゼインや乳清タンパク質)は、腸の炎症を抑える複数の作用があることが研究で示唆されている。例えばラクトフェリンは免疫調節作用や抗炎症作用を持つタンパク質で、小腸など全身の細胞に受容体が見つかっている。
α-ラクトアルブミンは消化されずに小腸から吸収される経路や、消化された後に生じるペプチドが抗炎症作用を発揮する可能性が示唆されている。酵素によって分解された乳清タンパク質分解物に炎症反応下でのサイトカイン(IL-8)分泌を抑える作用が見出されている。
(3)牛乳α-ラクトアルブミンの肝炎に対する影響
ラットによる動物実験では、D-ガラクトサミン及びリポ多糖(LPS)を投与することで発症した急性肝炎をα-ラクトアルブミンは抑制することが明らかにされている。また、ラットにジメチルニトロソアミンを投与することより発症した慢性肝炎及び肝繊維化を、α-ラクトアルブミンは抑制することが明らかにされている。
(4)牛乳タンパク質及びビタミン強化食品の介入による暑熱馴化に対する影響
近年、地球温暖化やヒートアイランド現象などの影響で猛暑日や熱帯夜が増加しており、日常生活においても暑熱対策は重要になっている。動物実験で、乳清タンパク質強化乳飲料は水や市販のスポーツドリンクよりも体水分保持効果が高いことが明らかにされている。
また、運動負荷を加えずにタンパク質及びビタミンB群を強化した介入食を大学生に7日間摂取させ、赤外線サウナによる暑熱環境下における身体の順応性を検討した結果、介入食により暑熱環境への順応性が高まることが報告されている。
(5)牛乳タンパク質強化乳飲料のアスリートのコンディションに対する影響

アスリートの食事管理は競技パフォーマンスの維持向上に重要である。陸上長距離選手において、その食事内容にまで介入せずに、1日のトレーニング前後に乳タンパク質強化乳飲料を16週間継続摂取した時の選手への影響が評価されている。その結果、乳タンパク質強化乳飲料の摂取前後では筋損傷の抑制や疲労感の改善、競技パフォーマンスの向上につながったことが明らかにされている。さらに、乳タンパク質強化乳飲料と微量元素及びビタミン補給飲料を介入すると、筋損傷抑制や貧血予防に効果的であることが示唆されている。
(6)高齢者のフレイルに対する影響
フレイルとは、加齢に伴って筋力や心身の活力が低下し、日常生活に支障をきたす手前の状態のことである。必要なエネルギーとタンパク質を摂取しなければ、より深刻な状態になる場合がある。乳タンパク質は、手軽に摂取できる良質なタンパク質源としてフレイル予防にも効果的であることが報告されている。
おわりに
今回は牛乳タンパク質の特性や利用方法、健康機能などの内容をご紹介した。人類は古代から乳を巧妙に活用してきている。これからも良質なタンパク質として牛乳タンパク質の高度有効活用が、多様な側面から、これまで以上に図られることになるだろう。今後の新しい展開にも期待したい。
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この記事を書いた方
この記事を書いた方
岐阜大学高等研究院 先制食未来研究センター特任教授岐阜大学応用生物科学部名誉教授長岡 利
ペプチド、ポリフェノール、核酸が拓く健康科学の新しい世界の開拓を目指しています。
脂質代謝を改善するペプチドやポリフェノール等に関する研究で論文多数。現在、日本栄養・食糧学会理事、日本ポリフェノール学会理事・編集委員長。
主な受賞歴:文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)、安藤百福賞優秀賞、日本栄養食糧学会・学会賞、日本農芸化学会功績賞。
