清田産業株式会社

清田ダイアリー KIYOTA DIARY

考えたくない!!料理の「思考キャンセル界隈」

食のトレンドが映し出す生活者マインドと時代の空気

山下智子
株式会社ひめこカンパニー代表取締役日本栄養大学(旧女子栄養大学)客員教授 山下智子

2026年08月01日

考えたくない!!料理の「思考キャンセル界隈」

 自分で考える、考えて工夫することをキャンセルできるのがSNS時代のいいところ。何が欲しいのか、何が自分にとってベストなのかを、考える前にAIが提案してくれる時代です。流れは “ググる” から、ChatGPTで調べる “チャッピー” “ジピる” へ移行。特に若い世代は、SNSを通して正解、最適解を求める傾向が強くなっています。
 食事の支度も同様。献立はどうしよう、何をどのように作ろうか―。考えることをキャンセルしたい生活者の食行動は、考えなくていい方向に加速しています。

AIは “令和のご用聞き”

 好みを聞いたり、過去のやりとりを覚えて気を利かせたり。生成AIの “おもてなし” を受けながら買い物ができる時代が到来しつつあります。既に若年層では、AIを活用した買い物が浸透し始めていて20代の17.3%が欲しい商品を探す際にChatGPTなどのAIを活用。AI経由でAmazonに流れたユーザー数は1年間で13倍に増加しているといいます。
 こうした中、LINEヤフーは昨秋、「お買い物AIアシスタント」の提供を始めました。例えば “炊飯器” を検索すると、AIが家族の人数など最大で3つの質問を掲示。回答すると商品検証サイトのデータなどを基に、商品が複数提案されます。
 またGoogleは、Web上の服のイラストとユーザーの写真をAIで合成するバーチャル試着機能を導入。いずれも複数のECサイトを横断できるため、検索や比較の時間を激減できます。
 一方、Amazonは米国で、タスクを自律的に行うエージェント機能を追加したAIサービス「Alexa+」をスタートさせました。自然な会話で商品を注文できるだけでなく、欲しいものがあやふやでもAIが意図を理解して商品を提案。足りない日用品なども先回りして注文してくれます。
 AIに “相談” した人が購入を決断する割合は、利用していない人に比べて6割高かったという調査結果もあります。日本経済新聞がα世代に実施した調査では、7割が買い物の選択などにAIを使っている一方、AIの回答を別のAIに検証させるなど、α世代はAIの誤りを見抜くすべを磨いていて、結局、AIが提示した最適解を “納得する” ために時間を要しているという現実もあります。
 とはいえ、高度なパーソナライゼーションとエージェント機能を備えた “令和のご用聞き” が誕生していることは確かなようです。

AIを表す画像

選ばなくていい食事宅配サービス

  “選ばなくていい思考キャンセル” のサービスで好評なのが、オイシックス・ラ・大地の「デリOisix」です。電子レンジで温めるだけで食べられる主菜と副菜が冷蔵で届くサービスで、開始から約1年で累計販売食数が300万食を突破しました。
 徹底的に選択の負荷を省いているのが特徴で、顧客がECサイト上で注文したい商品と配送の頻度を登録すると、その頻度に合わせて[買い物かご]の中に「デリOisix」のセットが自動的に入ります。そのままの注文でよければ、何を選ぼうか考える必要はありません。もちろん、変更も可能です。

デリOisix
画像引用元:PR TIMES オイシックス・ラ・大地「デリOisix」

“献立” という表現には要注意

 昨年、「じゃあ、あんたが作ってみろよ」や「ひらやすみ」など料理を扱ったドラマが注目されました。等身大の主人公が料理に取り組むドラマや、インフルエンサーによる “時短・コスパレシピ” が料理の刺激になっているようで、特に関心が高いのが30代女性。「料理に関する調査」で、 “レパートリーを増やしたい” と回答した割合は全体平均が33.8%に対し、30代女性は53.1%とトップ。 “献立をあれこれ考えずにすませたい” は38.8%でした。ChatGPTに1週間分の “献立” を考えさせている女性もいて、若年層ではTikTokの利用も多いといいます。
 ここでは “献立” と表現していますが、 “料理” “メニュー” “レシピ” など、そのときどきで求めているカタチはさまざまだと推測します。何が食べたいのか、何を作っていいのかが分からないというのが現実のようで、決して栄養満点、味のバランスもいい “献立” を常に求めているわけではないことに、注意が必要です。 “何も考えたくないから鍋にしよう!” という生活者に対して “鍋の日の献立” などを提案したら “大きなお世話!” と返ってくるかも。

レシピに悩む女性

AIレシピ検索サービス

 そんな生活者に向けて提供が始まったのが、キッコーマンの会話型AIエージェントを活用したレシピ提案サービス「みつかる♪きょうのごはん」です。公式コーポレートキャラクター[なあにちゃん]との自然な会話を通じて、友達に相談するような気軽さで、 “きょうのごはん” を決められるようにしています。
 LINE上で “今日は何を作ろう?” “冷蔵庫にピーマンと豚バラがあるんだけど…” “子どもが喜ぶ時短レシピを教えて” などと入力すると、AIが食材や調理時間、味の好みといった条件を解析し、キッコーマンのWebサイト「ホームクッキング」に掲載されている9000以上のレシピから最適なメニューを提案してくれます。
 自分で入力するという点においてはレシピ検索サイトと同じですが、求めるレシピに的確に辿り着くためには、どう表現すべきか頭を使わなくてはいけません。それに慣れていない人には、会話で入力できる点は楽なのかもしれません。
 ただ、保持するレシピの中から質問に合いそうなサンプルを探してくるのは得意でも、イレギュラーな質問には応えられないようで、レシピ提案に関しての “最適解” はまだ先のようです。

キッコーマンの「みつかる♪きょうのごはん」の画像
画像引用元:PR TIMES キッコーマン「みつかる♪きょうのごはん」

求めるレシピは “給食関連” と “外食店メニュー”

 クックパッドによると、2025年、給食関連のレシピ検索が前年比1.4倍に増加し、過去10年で最高になったそうです。ベストスリーは、中華風春雨サラダの「バンサンスー」が安定の1位。炊飯器だけで作れる栄養価が高い「わかめご飯」が2位、3位は植物性タンパク質と手頃なひき肉で作れる「チリコンカン」や「麻婆豆腐」です。
 食費高騰の中でも子どもの栄養だけはしっかり整えたいと思う生活者。給食担当の管理栄養士が、限られた予算内で必要な栄養素を確保すべく知恵を絞り出した “やりくりレシピ” を手軽に取り入れられるのですから当然です。加えて、 “今日の給食おいしかった” の声や、 “保育園では食べているのに家では…” といった子どもの反応もきっかけになるようで、子どもが喜ぶ料理を自分で考えるより、給食をマネたほうが確実だし、手っ取り早いということでしょうか。

クックパッド「家庭で再現できる人気給食レシピ」
画像引用元:PR TIMES クックパッド「家庭で再現できる人気給食レシピ」

 一方、外食チェーン店のメニューの再現レシピ検索数も増加しています。こちらは、外食価格の値上げで、飲食店での食事を控えるようになった生活者が、外食気分を楽しむのが目的のようです。
 人気のメニューは、ファミリーレストラン「サイゼリヤ」の代名詞とも言える “ミラノ風ドリア” を真似た “ミラノドリア” や、ステーキハウスチェーン「ペッパーランチ」の看板メニュー “ビーフペッパーライス” に似せた “ペッパーランチ風ライス” といったメニュー。手に入りやすい食材、シンプルな調理工程、子どもも楽しめる分かりやすい味が支持される理由のようです。
 あれこれ悩むより、SNSで人気のメニューのほうが安心感があり、家族のニーズが高い料理がマネできればそれが一番。食は、時代を正確に、しかも端的に映し出す鏡です。

クックパッド「家庭で再現できるファミレスレシピ」
画像引用元:PR TIMES クックパッド「家庭で再現できるファミレスレシピ」

増える “一皿完結型”

 思考キャンセルの流れは、おかずの品数に確実に連動しています。物価高による節約志向の高まりを追い風に、食卓のおかずの品数減少が続いていて、献立を考えることを放棄しているかのような現状が浮かび上がります。
 「インテージ・キッチンダイアリー」によると、肉や魚を使った主菜の登場回数の減少率は2024年に15年比11%。すべての食事場面で減り、特に朝食では大幅に減少。パンやシリアルで済ませる生活者が増えているようです。全食事での登場回数については、特に魚系の主菜の減少が目立ち、 “焼き魚+副菜” に取って代わり、 “ホイル焼き” や “ちゃんちゃん焼き” など野菜も一緒に摂れる “一皿完結型” の料理の登場回数が多くなっています。
 肉系も同様で、 “肉野菜炒め” などが伸びていて、 肉と野菜をまとめてひと皿に盛りつけられるタイパとコスパの良さが支持されているようです。加えて、やはり “一皿完結型” の典型とも言える “丼” の登場率も増えているといいます。
 一皿にタンパク源と野菜を合わせることで、コストと手間をかけずに栄養のバランスを取ろうとしている生活者。魚や肉を主菜に、野菜を副菜にという[一汁三菜の献立]は、生活者の「思考キャンセル」と「タイパ志向」「節約志向」を一身に受け、減少の一途を辿っているようです。

ホイル焼きとちゃんちゃん焼きの画像

付加価値の高い
食品・製品を開発します

清田産業では、メニュー、レシピ、調理方法、試作など、ご提案から開発までワンストップで対応します。豊富な経験と研究開発実績から、付加価値の高い製品開発を実現します。

  • 付加価値の高い食品・製品を開発します

    全国屈指の取扱原材料
    10,000種類以上

  • 付加価値の高い食品・製品を開発します

    多角的な視点からの
    課題解決

  • 付加価値の高い食品・製品を開発します

    掛け算のアイデアと
    開発力

ご相談やご質問など、
お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた方

山下智子

この記事を書いた方

株式会社ひめこカンパニー代表取締役日本栄養大学(旧女子栄養大学)客員教授山下智子

加工食品や飲料の商品開発、コンビニやデパ地下の惣菜開発、飲食店のトータルプロデュース、スーパーマーケットの戦略作り等、食業界および流通業界全般に渡り幅広く活動。外食、中食、内食、そのすべてを網羅する広いビジネス範囲は業界屈指です。1アカウント3,300円で購読できる「食のトレンド情報Web」を配信。毎春、その年の食市場のトレンドをまとめた相関図を公表、講演をしています。

http://himeko.co.jp/

当サイトでは、利便性向上を目的にCookie等によりアクセスデータを取得し利用しています。
詳しくは、プライバシーポリシーをご覧ください。